E-MAIL 大阪教育大学 国語教育講座 野浪研究室 ←戻る counter

のなみの俳句 2005

電子俳句 より

2005/01/01初日の出目覚めの部屋を明るくし
2005/01/02教え子の貌を子に見る年賀状
2005/01/03三が日十時半睡読み続け
2005/01/04蹴る玉の滞空時間冬の原
2005/01/05冬山にをとことをんな響きけり
2005/01/06山眠り仙人空で懐手
2005/01/07谷底は十四五尺の雪ならん
2005/01/08校門に手を触れている老紳士
2005/01/09羊羹の切り口白く堅くなれ
2005/01/10地下鉄のドアからのぞく吉兆笹
2005/01/11初恋は馬引く橇に乗せて行き
2005/01/12風止んでぽたりと落ちる紅椿
2005/01/13冬の浜佇む人に黄昏れて
2005/01/14参道に老婆紛れて消えゆけり
2005/01/15地下二尺ほぼ球体に蛇眠る
2005/01/16老齢の女教師の手にゆきうさぎ
2005/01/17一対で日本に住みて初詣
2005/01/18あやまたずひとつ淫祠に棄ててある
2005/01/19暮るるまで殺生界に春の雷
2005/01/20水ぐるまわが身の業も休みをり
2005/01/21算術に数個の我が立ち上り
2005/01/22鷲老いて冷えゆく愛の生毛かな
2005/01/23冬の雲無数の過去と僧を乗せ
2005/01/24稲光女の背中の暖かさ
2005/01/25天からの年玉ひとつ落としけり
2005/01/26灯が照らす男の懐手
2005/01/27外套の雨粒に街一つずつ
2005/01/28金剛の一つにはかに発火する
2005/01/29西行の雨にいちまい女人の手
2005/01/30冬の江に色を見つけて立ち上がる
2005/01/31体内に水の音する一月尽
2005/02/01如月の水洗便所の流れかな
2005/02/02バスを待つ背後に冬が来て触る
2005/02/03寒空をヘリコプターが意志の如
2005/02/04静けさや幼稚園児の甥がいて
2005/02/05猫の恋短尾の一族優勢に
2005/02/06塾の子を待つ足踏みの五六人
2005/02/07玉の緒のおとことおんなかいつぶり
2005/02/08受験子の寝顔に少し笑みありて
2005/02/09丈低き臘梅の枝花三つ
2005/02/10抜き取りし奥歯の穴の自己主張
2005/02/11その内に少し雪おく大椿
2005/02/12ひんやりとした尻拭う雪の朝
2005/02/13六甲に生後三日の狂い凧
2005/02/14おでん屋の暖簾に顔の力抜く
2005/02/15少年や霜を楯とし夜を愛す
2005/02/16唐辛子容器に足して暖かし
2005/02/17春雨の命そのまま小魚へ
2005/02/18海上に日輪ころがし老いんとす
2005/02/19落椿酒の器につづきをり
2005/02/20春雨や龍の鼻毛ののびる頃
2005/02/21先生を擲つ闇に遊ばんと
2005/02/22春曇り夢で出来た句出てこない
2005/02/23図書館のソファーで眠るペルシャ猫
2005/02/24粉寒天棚に残りし二パック
2005/02/25夕映えや一途といふは要りませぬ
2005/02/26合鍵を二つ減らして卒業す
2005/02/27写真からは届かぬ音の修二会かな
2005/02/28受験の日顔を洗ひて水温む
2005/03/01潮騒に旅への心駆け上がる
2005/03/02ゆらゆら病む生なりきやじろべゑ
2005/03/03静けさや真つ暗闇の雛の家
2005/03/04防災日雲に曳かれた迷路かな
2005/03/05居眠りの女の道は充実す
2005/03/06夜の闇に齢隠すとがらんどう
2005/03/07喜怒哀楽一樹に集ふ空つ風
2005/03/08緋のコート一喜一憂うごきおり
2005/03/09毛布剥ぎ飛び込んでいく春の夢
2005/03/10冬コート微かに臭う我油
2005/03/11倖せが焼かれるために加わりぬ
2005/03/12春風や子猫の睫毛揺れており
2005/03/13階段を降りる途中の沈丁花
2005/03/14夕焼けはその夜の熱さ空襲忌
2005/03/15草萌と一緒に目覚む昼寝かな
2005/03/16死後のこと万年筆は相識らず
2005/03/17無人島を巨きな雲が揺らしゐて
2005/03/18よく笑ふ少年が足失くしけり
2005/03/19合格発表悲鳴のごとき日本晴れ
2005/03/20冬の浜指で書く文字皆哀し
2005/03/21環状線遅刻の癖は遺伝かも
2005/03/22桜花肌赤くしてきばりおり
2005/03/23ちちははの決断ありし招き猫
2005/03/24合格後校歌をさらう姉妹
2005/03/25山車が倉庫から出て洗われる
2005/03/26鈍行の老爺の大きな喉仏
2005/03/27一斉に怒り抑えて穴に入る
2005/03/28落椿闇に蓋する赤さかな
2005/03/29鴨去りし川辺の土の暖かさ
2005/03/30わが内に咲かせぬうちに沈丁花
2005/03/31女傘失せたるままの女の子
2005/04/01新しき並木の先が作れない
2005/04/02美しき数式があり新年度
2005/04/03帰りには知らない癖に好きな花
2005/04/04空中にありて蜜柑は老いにけり
2005/04/05初めてのセーラー服は皺がない
2005/04/06西日さし牛の貫禄増してをり
2005/04/07大蟻が歌ちらと見る春の山
2005/04/08栞して平らになりし土筆かな
2005/04/09くろがねを信じ男は行きにけり
2005/04/10地下街の暗きへ卵が埋めてあり
2005/04/11遠雷を見る高層の春の夜
2005/04/12天の川ゴッホの耳で拭いておく
2005/04/13拳骨が転ぶ翁の身から出て
2005/04/14雪残る女生きいき影法師
2005/04/15大空の雲燃えをはる春の朝
2005/04/16黒板を背負いてバラの静かなる
2005/04/17菜の花の黄に旅立ちは微笑んで
2005/04/18花輪在る日が暮れていくシャボン玉
2005/04/19人が来て女児立ち上がる春の海
2005/04/20囀りがそれぞれの場でくるくると
2005/04/21春盛り真白きシャツの脇の汗
2005/04/22春蝶のおのれを運ぶ重さかな
2005/04/23病床に廻されてゐる日焼顔
2005/04/24社交辞令重なる先の熱帯魚
2005/04/25今生の御堂に残る天邪鬼
2005/04/26病床に少女ら白く微笑める
2005/04/27春愁や英字びっしり翻り
2005/04/28をんな子は石に戻りて佇ってをり
2005/04/29教室の窓より春の岬かな
2005/04/30ヒキガエル客として見る授業かな
2005/05/01葉桜が引っ越し荷物に影落とし
2005/05/02友情と二人ときどきおでん酒
2005/05/03剃刀の橋のたもとの荒筵
2005/05/04指輪跡聞けば津軽の訛にて
2005/05/05初夏の風とまらんとする黒揚羽
2005/05/06ふと覚めし我が吐くものは白牡丹
2005/05/07ふるさとの三人の老婆生きてをり
2005/05/08小説の子を産む場面苺食ふ
2005/05/09こどもの日水のやうなる金魚の死
2005/05/10照り返す大河左に法師蝉
2005/05/11落花舞ひわが額にある疲れかな
2005/05/12らあめんの降る夜何に絶倒す
2005/05/13夜の色にすこし雲燃ゆあはれなり
2005/05/14妻と行く時間の束の参観日
2005/05/15五月の夜押して倒れし旅カバン
2005/05/16老人と光堂あり月の中
2005/05/17我れが行く街へ向いたる梨の花
2005/05/18若鴨が真面目な顔で橋を越え
2005/05/19葉の陰で黒ずんでいく桜んぼ
2005/05/20光堂つかみて離すいなびかり
2005/05/21ラグビーの試合終わりて揚げ雲雀
2005/05/22雲梯の棒の間に風光る
2005/05/23風光る河内の国を驀進す
2005/05/24部屋にいる一匹の蚊と我輩と
2005/05/25夏瀧の緑走りて垂れている
2005/05/26葉と葉とがもみ合う夜の香りかな
2005/05/27地球儀を蹴り上げている五月かな
2005/05/28日本語の壁も柱も米の飯
2005/05/29物いはぬものが過ぎ行く草苺
2005/05/30不精にて横隔膜が鳴りにけり
2005/05/31高高と甲府の街路樹茂りおり
2005/06/01昼顔はビヤガーテンでふるへをり
2005/06/02青鷺が植え終わりたる田に映る
2005/06/03夕焼けが西に縮みて濃くなりぬ
2005/06/04吊革と聞いてる曲がシンクロす
2005/06/05水を待つ耕土一面黒々と
2005/06/066月の6日の6時人を待つ
2005/06/07あんぱんと午後の紅茶が渦を巻き
2005/06/08堤防に逆立一人みなみかぜ
2005/06/09天然の快楽か大樹夜も寝ねず
2005/06/10石垣についと飛び込む親雀
2005/06/11一桶はさらに遠くに売られけり
2005/06/12地下室に視界を覆う黄泉の闇
2005/06/13階上より僅かに届く咳止まず
2005/06/14鴨の子を突き放している強さかな
2005/06/15鴨の子が一羽減りたる通勤路
2005/06/16鼻くそをほじって急に草いきれ
2005/06/17そもそものまこと顔なる金魚売り
2005/06/18ある本の愛憎すこしきつね雨
2005/06/19ホッピーとガラナを我への中元に
2005/06/20残月や生きる力の咳ありて
2005/06/21かたつむり喜びだけを持ちて行く
2005/06/22摘果せぬ林檎の枝のしなりかな
2005/06/23梅雨晴れの吹口にある歯形かな
2005/06/24百円の地球儀軽く天井へ
2005/06/25夏の空上野に似たる天王寺
2005/06/26夏祭り魚眼レンズを通り抜け
2005/06/27紫陽花や妻の言葉が華やげる
2005/06/28一瞬の輝きが飛ぶ梅雨の道
2005/06/29薔薇一枝撃ち砕かんとして不発なり
2005/06/30泳ぎ女にわりこむ婆やソーダ水
2005/07/01突つ立つて女いよいよ沈み行く
2005/07/02骨模型明るき部屋で口開けて
2005/07/03首のべて紫陽花拝す朝の辻
2005/07/04雨の野の小さき墓の蝉曳かれ
2005/07/05クーラーが寝ても良いよと呟いて
2005/07/06夕空をへの字つの字に飛ぶ燕
2005/07/07白雲を見上げる白き髑髏
2005/07/08垂れ髪やここ大阪の木々に雨
2005/07/09小鼠は壁に腹付け昼寝中
2005/07/10曇天に羽根ひろげたる蟇
2005/07/11雷落ちて水清ければ人ひとり
2005/07/12悲しみの犬捕り低く消えゆけり
2005/07/13東京に出てふらここ漕いで死ぬ
2005/07/14祇園会のさなかに知命の誕生日
2005/07/15あたたかいうた懐に星祭
2005/07/16蝉の声寝坊の耳を埋め尽くす
2005/07/17炎天に息を合わせて土を盛る
2005/07/18ため池に一帆生みたる落葉かな
2005/07/19座についた夏の夜汽車はほしいまゝ
2005/07/20手花火が瞳の中で爆ぜており
2005/07/21歯磨きの半ばの笑い蝉時雨
2005/07/22小鼠と言えど老嬢召されたる
2005/07/23地下駅に突き出される風トコロテン
2005/07/24滴りて富士山現る冷コップ
2005/07/25大阪へ汽艇の波を見送りて
2005/07/26避暑の朝明るき声が遥かから
2005/07/27愛されず八十八日闘へり
2005/07/28生きるのが好きな女の夕かな
2005/07/29ヒマワリの畑に時折風の道
2005/07/30燭の灯にのしかかる山どきたまえ
2005/07/31ゆつくりと迷へるものにドアがある
2005/08/01丑三つの街灯に沸く蝉の声
2005/08/02たまねぎの憂鬱すこしうすみどり
2005/08/03乳母車に子供を置けば人が寄り
2005/08/04八方の小さき墓にも団子置き
2005/08/05かぶと虫十五万石の樹液持つ
2005/08/06日陰ればすぐに鳴きやむ八ヶ嶽
2005/08/07意志受けて白球強く跳ねていく
2005/08/08有耶無耶を看とり続けり夏の宵
2005/08/09山霧にわりこむ婆や土こたふ
2005/08/10幸いは何処にありや蟻の列
2005/08/11その場所を占めた小鼠土の中
2005/08/12小さき鯛手応えがなく釣り上がり
2005/08/13提灯が赤き墓前の盆踊り
2005/08/14家々に話し声あり盆の村
2005/08/15ささやかな成功感や自由席
2005/08/16さまざまな田舎の匂い網戸から
2005/08/17手花火で手花火を燃す姉妹
2005/08/18少年に見える案山子や法師蝉
2005/08/19引き上げて一本の糸水中花
2005/08/20大空はボートとともに下り行く
2005/08/21いんぎんに喧嘩も果てゝ髑髏(ひとがしら)
2005/08/22焼酎のグラスのキュウリ発光す
2005/08/23喪の家の水兵ひとり生きてをり
2005/08/24大学生世に出たがらぬ滑走路
2005/08/25心中にとまらんとする夜は還る
2005/08/26跳ぶ時の五指を分かちて撫でてをり
2005/08/27愛知博トトロの家のアッパッパ
2005/08/28夏終わる出来たて寡婦のアハハハハ
2005/08/29白々と爪うつくしくよこたはる
2005/08/30あるときにきまりし壺の命かな
2005/08/31缶詰のゼミ合宿や八月尽
2005/09/01台風がキュウリの上を進み来る
2005/09/02見ぬままに終わりし今年の地蔵盆
2005/09/03朝早き芦屋図書館秋の風
2005/09/04両眼に念珠つめたくよこたはる
2005/09/05我もまた死に行く蝉やジジと鳴く
2005/09/06耳清まし台風警報待っており
2005/09/07晴天の市営プールは人疎ら
2005/09/08秋の風それぞれの窓の明るさ
2005/09/09秋風が撫でる昼寝の土不蹈
2005/09/10突き抜ける碧空の下通夜帰り
2005/09/11帽子振る客は緑の浪の上
2005/09/12本当かね小林桂樹の老けぶりは
2005/09/13秋風がゆるりと回す観覧車
2005/09/14夕暮れを女子中生等の歌の声
2005/09/15秋風に掛布団を出す夜中かな
2005/09/16秋の日の風の瞬き蜆蝶
2005/09/17爺様は口をアにして眠りおり
2005/09/18噴水はもともと脱力した水だ
2005/09/19日本語も銀蝿も来よ骨の上
2005/09/20炎天を歩く喪服の五六人
2005/09/21宮川の底に魚卵が降りしきる
2005/09/22森の中巨大な髑髏の上におり
2005/09/23高層から歩く人見る川柳忌
2005/09/24がうがうと老婆ちぢまり灯なく寝む
2005/09/25放課後の机の下に夕日差す
2005/09/26紅葉を雨粒に見る軒端かな
2005/09/27とぢし眼の病者ばかりの石の上
2005/09/28秋風や神の算盤四捨五入
2005/09/29白雲を障子の穴より見ゆるもの
2005/09/30旅装にてうろつく秋の繁華街
2005/10/01喉の筋立てて大綱引いており
2005/10/02匂い立つ檸檬は本屋のゴミ箱に
2005/10/03噴水を貫く棒は倒れけり
2005/10/04深まっていく秋や雨輝けよ
2005/10/05曼珠沙華爪うつくしくねむらんか
2005/10/06銀杏をタイヤが潰す帰り道
2005/10/07蝸牛男を舐めて瑠璃とする
2005/10/08秋雨を飲み干して木々赤くなり
2005/10/09長き夜をゆさぶりやまず天の川
2005/10/10玉の如くねるくせつきし秋は来ぬ
2005/10/11東京の雨の切尖盲犬
2005/10/12枯薄はだけし胸に虎がおり
2005/10/13しづかなる画にはなりさう芋畑
2005/10/14荒海の顔にはりつく曼珠沙華
2005/10/15灯赤々三条木屋町秋の雨
2005/10/16天高く少女鼓隊はピンク色
2005/10/17秋天にわれも善女が集いおり
2005/10/18帰路電車いつもの席で文庫読む
2005/10/19草引きの土産はビールとイノコヅチ
2005/10/20コウモリの回転軸や秋の暮れ
2005/10/21風吹いて光りが走る花薄
2005/10/22鴨の存在水尾のあるかぎり
2005/10/23ことことと病者ばかりを煮ています
2005/10/24秋の水に蟹死にをるや脚曲げて
2005/10/25なつかしの飴の中から出て歩く
2005/10/26鬱然と平凡赦す清水かな
2005/10/27同志社の槙の寄生木緑にて
2005/10/28首のべて一すぢよぎる秋の風
2005/10/29湯豆腐やつまらぬ男明らかに
2005/10/30自転車で落葉の道をダッシュする
2005/10/31蟷螂へみるみるわれは漂へり
2005/11/01蟻が行くここは青空娯楽室
2005/11/02秋愁が写してくれろ好きなもの
2005/11/03幽霊が古き街より出勤す
2005/11/04もの言はぬくにへと鉄路光りおり
2005/11/05幸せは綺麗に張れた蜘蛛の糸
2005/11/06校庭の清少納言幸せか
2005/11/07白鷺が等間隔で北を向き 
2005/11/08発想の無辺の光溜めている
2005/11/09ワイシャツとトレーナとコート冬立つ日
2005/11/10深更に湯気さかんなる一人鍋
2005/11/11人間で死ぬことを思う月夜かな
2005/11/12夕陽うけ京都タワーが白さ増し
2005/11/13ブランド品買う気を外す秋の雨
2005/11/14歳暮決めシャンティのカレーで舌を焼く
2005/11/15秋の風ズボンの裾から這い上がる
2005/11/16沈みゆく街に故郷響きおり
2005/11/17百代の命継ぐ如二人発ち
2005/11/18寺田町三角公園午前9時
2005/11/19音楽会にいて涙腺故障中
2005/11/20西行の隠れ心や一位の実
2005/11/21いづかたも雲燃えをはり波静か
2005/11/22男にて長いすすきを進むなり
2005/11/23ハリポ見て迷って教室に行けぬ夢
2005/11/24しょぼしょぼの我が目と目が合う帰路電車
2005/11/25なんとまぁ後一月で生誕夜
2005/11/26冬蜘蛛の命小さく燃えており
2005/11/27道端に少女の命隠れけり
2005/11/28都では独り寝がままあるそうな
2005/11/29宮川に真鴨白鷺鳩鴎
2005/11/30父親を娘の風邪が走らせる
2005/12/01星占いシンポの用意済みにけり
2005/12/02ドア開いて七番線の寒さなり
2005/12/03若鹿が覗く魔界の水たまり
2005/12/04握力が三臼を搗いた手に残り
2005/12/05女高生人差し指の影の中
2005/12/06日向ぼこ脳が輪切りになるひとり
2005/12/07底冷の厨の隅の炊飯器
2005/12/08黒き雲ぶ厚き頑固流れゆく
2005/12/09四世代味噌汁付きの冬の朝
2005/12/10青空に柿の木柿を差し上げる
2005/12/11三十年前の声聞く研究会
2005/12/12感情の奴隷の知性力なく
2005/12/13冬空や授業の準備終わりたり
2005/12/14翅わつてをんなのすはるしんのやみ
2005/12/15石枕新聞全紙昼餉時
2005/12/16さみしさの奇麗な風がぶちきらる
2005/12/17六甲は雪を被りて朝寝かな
2005/12/18もの言はず密かに死んで人だかり
2005/12/19若き日をいかに殺すか冬暖か
2005/12/20かくれんぼ寺山修司買ひにけり
2005/12/21夜の闇にはなやいでゐる寒さかな
2005/12/22古書店がと見かう見する師走かな
2005/12/23街道を遠くまで行き快眠す
2005/12/24満月を望む岬で鵜に変わる
2005/12/25小さき葉のたまたまくすくす笑ふ時
2005/12/26老婦人レンズの奥に冬眠す
2005/12/27しやぼん玉冬の獣を嬲りおり
2005/12/28暮れの部屋マイペットの香満ちており
2005/12/29年の暮れATMに並ぶ数
2005/12/30たいがいの事は済ませて晦日暮れ
2005/12/31六甲に除夜の汽笛が谺する
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