野浪正隆研究室

子ども向けの文章表現の特性

〜 ゲーム攻略本・料理本・小学生新聞を資料にして 〜

pika!

国語表現ゼミナール
ゼミ参加者 :石井順也 武田美幸 田谷倫之 長渡遊美 水田有香 宮本佳奈 森山直美 山上孝治
指導教官 :野浪正隆

目次

  1. はじめに
  2. ゲームの攻略本
  3. 料理の本
  4. 新聞
  5. 終わりに

はじめに

 「子供用」「子供向け」「子どものための」などと謳われた本や雑誌、新聞などがある。どういった点で「子ども向け」なのだろうか。
 ひと目見て分かるのは、絵や写真の多さ、文字の大きさなどの視覚的な工夫である。また、内容についても「子ども向け」であろう。文や文章の書き方にも何か工夫があるかも知れない。どうような工夫があるのだろう。そのような疑問からこの研究は始まった。
 なお、この研究ではテレビゲームの攻略本、料理の本および新聞を研究資料として用いた。理由は以下のとおりである。

 なお、この研究において、資料を「子ども向け」と判断した理由は

の、いずれかである。


資料

ゲームの攻略本

料理の本

新聞


ゲーム攻略本

 わたしたちは、ゲーム攻略本における子ども向けの文章の特性として次の仮説を立てた。

 なお、子ども向けの本には、明確に文といえないもの(例えば、句点がないもの等)も多数あったが、それも子ども向けの特徴であるとおもわれたので文として扱うことにした。

 では、それぞれについて検証していくことにする。

文字レベル

  1. 文字数について

     私たちは大人向けの本と子ども向けの本の文字数について、ゲームのすすめ方が書かれた文章の、1文あたりの文字数を比較した。

    子供向けの本 大人向けの本
    文数 総文字数 平均/文 文数 総文字数 平均/文
    121 3236 26.7 164 5612 34.22

     この結果から、子ども向けの文の方が大人向けの文よりね文字数が少ないことがわかる。
     子ども向けの本は、文よりも絵やレイアウトで内容を伝えるような構成になっているということ、まち、大人向けのもので紹介するほどの高いテクニックを伝える必要のないこと、などが理由として考えられる。

語彙レベル

  1. オノマトペについて
    子ども向けの文と大人向けの文との比較
      子ども向け
    『ポケットモンスター大百科』
    大人向け
    『任天堂公式ガイドブックポケットモンスター』
     
    ぐーんと
    (例)こうそくいどう
    みかたのポケモンのすばやさがぐーんと上がる 素早さを2段階上げる 5回
    がくっと
    (例)いやなおと
    てきのポケモンの防御力をがくっと下げる 相手の防御力を2段階下げる 1回
    たまに
    (例)いわなだれ
    てきのポケモンにダメージをあたえる。たまにひるませることができる 追加効果として3割の確率で相手に攻撃させない 10回

     大人向けの文が具体的な数字を挙げているのに対して、子ども向けの文では「たまに」という副詞と「ぐーんと」というオノマトペとが使われている。
     これは低学年の子どもなら「一割」という割合の概念を学習していないためだと思われる。また、「ぐーんと」や「がくっと」は、ゲーム中でも使われている語であり、こちらのほうが子どもにとっては分かりやすいと思われる。

文レベル

  1. 文末表現について

     大人向けの文と子ども向けの文との文末表現を比較した。これをグラフ・表にすると次のようになる。

    グラフ1

      子ども向け 大人向け
    否定・禁止表現 景品として手に入れるしかない(大) 0 14
    語りかけ 図鑑の完成は、みんなのアコガレだよね(子) 48 12
    語意を強める 覚える技のタイプも大切!(子) 12 0
    その他   104 141

     これを見ると、子ども向けの文では語りかけの表現が多く、大人向けの文とは逆に否定や禁止の表現は使われていないことが分かる。
     語りかけ文は子どもに親しみを持たせるために使用される。否定・禁止表現はゲームをスムースに進めるための注意として書かれている。大人 にはこの注意が必要だが、子どもはゲームを楽しむことを目的としているので、ゲームをスムースに攻略するための細かい注意は必要ない。

  2. 文数について

     大人向けの本と子ども向けの本との1ページあたりの文の数を比較した。結果は次の通り。

      子ども向け 大人向け
    1ページあたりの文数 3 25
    14 20
    5 20
    7 23
    12 4
    13 3
    14 26
    13 23
    8 15
    10 19
    合計 99 178
    平均 9.9 17.8

     子ども向けの本の1ページあたりの平均文数が9.9文、大人向けの本の平均文数は17.8文である。子ども向けの本のほうが1ページあたりの文数が少ない。
     理由として、子ども向けのほうは、絵が多いということ、および文字自体が大きいということが挙げられる。それから、ふきだしようなものも多く見られることも、理由のひとつとして挙げられる。子ども向けの本では、文字以外にもさまざまな工夫をして情報を伝える。

  3. 対象について

     大人向けの本と子ども向けの本とでの技データの文を比較すると、次のような違いが見られた。

      子ども向け 大人向け
    自者
    みかたのぼうぎょりょくをあげる
    8
    防御力を上げる
    0
    他者
    てきのポケモンのすばやさをさげることができる
    57
    相手の素早さを下げる
    35

     この表によると、子ども向けの文では「てきのポケモンに」「てきのポケモンを」というように、技のかかる具体的な対象が明示されているのに対して、大人向けの文では省略されているか、もしくは「相手の」という言葉で表されている。
     子どもにとって「相手」と書かれるよりも「てき」「みかた」に分けて表記されるほうが対象がはっきりとし、ゲームを楽しみやすくなるからだと思われる。
     大人は同じ「相手」という語でも、文脈からそれが敵であるが味方であるかを判断できるが、子どもには文脈からの判断は難しいのではないかと思われる。

まとめ

 子ども向けのゲーム攻略本における文章表現の特性としては次のものが挙げられる。


料理本

 料理本については以下のような仮説を立てた。

以上の仮説を検証していく。

文字レベル

  1. 文字数について

     作り方が書かれた文章中の、一文当たりの文字数をメニューごとに、大人向けのものと子ども向けのものとで比較した。結果は表の通りである。

    料理
    料理 大人向け 子ども向け
    メニュー 文数 文字数 平均文字数/文 文数 文字数 平均文字数/文
    コロッケ 13 422 32.46 10 364 36.40
    グラタン 10 322 32.20 14 453 32.36
    ハンバーグ 15 490 32.67 16 514 32.13
    カレーライス 18 548 30.44 8 232 29.00
    カルボナーラ 11 297 27.00 9 252 28.00
    麻婆豆腐 11 338 30.73 10 307 30.70
    チキンライス 6 169 28.17 10 264 26.40
    フライドチキン 10 300 30.00 10 376 37.60
    お菓子
    お菓子 大人向け 子ども向け
    メニュー 文数 文字数 平均文字数/文 文数 文字数 平均文字数/文
    ブラウニー 9 300 33.33 14 311 22.21
    チーズケーキ 33 982 29.76 12 355 29.58
    クレープ 10 358 35.80 10 265 26.50
    スイートポテト 11 370 33.64 10 225 22.50
    おはぎ 15 530 35.33 9 230 25.56
    みたらしだんご 10 341 34.10 9 209 23.22
    アイスクリーム 20 667 33.35 10 234 23.40
    ドーナツ 11 438 39.82 10 261 26.10
    パンケーキ 11 335 30.45 9 240 26.67
    シャーベット 9 258 28.67 5 133 26.60
    合計
      大人向け 子ども向け
    メニュー 文数 文字数 平均文字数/文 文数 文字数 平均文字数/文
    合計 270 8468 31.36 214 5997 28.02

     この結果から、子ども向けの本と大人向けの本とでは、一文当たりの文字数にはあまり差が無いことが分かる。
     これは、大人向けのものと子ども向けのものとでは、含まれている漢字の割合が違い、また、子ども向けの方が易しい表現が使われているためではないかと考えられる。
    *漢字の割合については、次の(2)で、易しい表現については語彙レベルの(1)で詳しく触れることにする。

  2. 漢字について

     (1)で資料に用いた文章中の、同じメニューについて総文字数に対する漢字の割合を調べた。
     結果は次の通り。

      大人向け 子ども向け
      文字数 漢字数 割合 文字数 漢字数 割合
    料理 3342 674 20% 3122 420 13%
    お菓子 5127 1115 22% 2875 251 9%
    合計 8469 1789 21% 5997 671 11%

     この結果から、大人向けの方が漢字の使われる割合が高いことが分かる。
     これは、大人の方が漢字の知識が多いためであると考えられる。子どもは自分の知らない漢字が多用されていると、その文章を敬遠しがちである。よって、子ども向けの方が文字数に対する漢字の割合が低いと考えられる。
     また、(1)で触れた文字数については、文字数自体は大人向けと子ども向けとであまり差がないものの、含まれる漢字の割合が大人向けのものの方が高いことから、同じ文字数であっても、大人向けの方が伝えられる情報は多いと考えられる。

語彙レベル

  1. 同じものについて

     大人向けのものと子ども向けのものとで、同じものについて説明してある部分をピックアップし、比較してみた。

    物の説明
    素材名 大人向け 子ども向け
    上新粉 ・うるち米(普通の米)
    ・製粉したもの
    ・精白、乾燥
    ・米
    ・粉にしたもの
    ゼラチン ・動物の骨や皮のにかわ質を精製して
    タンパク質
    ・どうぶつの皮やほねからとった「にかわ」から
    薄力粉 ・粒度の細かい軟質小麦の粉/粘りが弱く ・粘りの弱い小麦粉
    無塩バター ・牛乳から分離したクリームで作る乳製品 ・牛乳からつくられます
    マーガリン ・植物性油脂を原料に、バターに似せて作ったもの ・植物の油からつくられます
    コーンスターチ ・とうもろこしが原料 ・とうもろこしからつくられます
    メープルシロップ ・北アメリカ原産のサトウカエデの大木の樹液 ・かえでの木からとったみつ
    オリーブオイル ・サラダ油や油漬け用として利用されたり、薬用品・化粧品にも利用されます。
    (原料・性質・用途)
    ・パスタなどのイタリア料理をつくるときに使います。
    (用途)
    ショートニング ・クッキーを軽く仕上げたいときに向きます。
    (性質・用途)
    フライドチキンやおかしなどに使います。
    (用途)
    ナツメグ ・ケーキやクッキー、ドーナツやパイ、プティングに粉末をふりかけて使います。
    (原料・性質・用途)
    ・ハンバーグの香りづけに使います。
    (用途)
    動作の説明
    料理名 大人向け 子ども向け
    ハンバーグ ・ボールに牛乳、卵を混ぜ合わせ、パン粉を入れ、しとらせておく。
    ・手から手へパタッパタッとたたきつけ、両手の間を何度か行き来させて空気抜きをし、
    ・ボウルに牛乳とパン粉をいれふやかしておく。
    ・好きな形にして、両手でキャッチボールのようにして空気をぬく。
    コロッケ ・ひたひたの水 ・じゃがいもがかぶるくらいの水
    カレーライス ・弱火にかけ、ときどきなべ底からまぜながら50〜60分必ず蓋を少しずらして煮込む。 ・じゃがいも、にんじんを入れ、ふたをして小さい火でコトコトにこむ。とろっとするまでグツグツによう。
    炊き込み御飯 ・ごぼうはよく洗って半月切りにして水にさらしておく。
    ・米は洗って普通の水かげんにし、加える調味料の水分と同量の大さじ2の水をとってから10分ほどひたしておく。
    ・ごぼうは皮をタワシなどで洗い、ささがきにする。
    ・炊飯器のうちがまにお米を入れ、たき汁を3の目もりまでくわえてまぜ、
    カルボナーラ ・ベーコンをいれ、焦がさないようにいためる。 ・中火でカリカリになるまでいためる。
    チーズケーキ ・卵黄を加えて/別のボールに卵白を入れ
    角が立つくらいまでしっかりと堅く泡立てたメレンゲ
    ・泡をつぶさないようにサックリと混ぜる。
    ・たまごを黄身と白身にわけ、白身はきれいなボウル、黄身はミキサーに入れる。
    ・白身をあわだてきであわだてる。つのがたつくらいあわだてよう。
    ・あわをつぶさないよう、そっとまぜよう。
    マドレーヌ ・無塩バターは湯せんで溶かし、
    ・熱い溶かしバターを少しずつ加えて混ぜ、よくなじませる。
    ・ケーキ用のバターをなべにいれる
    ・とかしたバターを加え、ぜんぶをよくまぜあわせる。
    きなこあめ ・中火にかけ、完全に溶かす。
    沸騰後1〜2分煮詰める。
    ・周りからきな粉をからませながら、細い棒状に延ばして長さ4〜5センチに切る。
    ・中火であたためる。
    ・ブクブクたくさんあわがでてきたら火をとめ、
    ・とり粉をまぶして、ながくのばす。ほうちょうでチョンチョンときる。
    くず(かたくり)もち ・なべにくず粉を入れ、水を徐々に加えて溶かす。
    ・弱火にかけ、かき混ぜながら40くらいに暖める。
    ・なべにかたくり粉と黒ざとうと水をいれて、まぜあわせる。
    ・1のなべを弱火にかける。しゃもじでまぜながらにる。

     この表を見ると、大人向けの方が情報量が多く、また、専門語が多用されている。一方、子ども向けの方は、必要最小限の情報しか書かれておらず、漢字は使われていても「訓読み」で用いられることが多い。
     この結果から、大人向けのものは、今までの経験などから得た知識があるという前提で書かれており、既得の知識にプラスアルファされるような内容が書かれている。それに対して、子どもは既得の知識かせ少なく、また、一度に大量の新知識を身に付けることが難しいので、必要最小限の情報しか書かれていないと考えられる。

  2. オノマトペについて

     大人向け、子ども向けのそれぞれで使われているオノマトペを、「物の状態を表すもの」と「動作の状態を表すもの」との二つに分類した。

    「物の状態を表すもの」ふんわりする、コトコト、とろりと、さっくり、こってり、ジュッと、トロトロ、など
    「動作の状態を表すもの」サッサと、クルクルと、まぜまぜ、ペタペタ、ぎゅっと、パラパラと、など

    大人向け子ども向け
    語数割合語数割合
    物の状態を表す46166%5050%
    動作の状態を表す23734%5150%

     この表から、子ども向けの方が「動作の状態を表す」オノマトペの割合が高いことがわかる。また、「物の状態を表す」ものに関しては、大人向けの本での使用率が高い。
     これは、子どもの方が大人よりも経験が少ないからだと考えられる。
     「物の状態を表す」「フツフツ」や「ひたひた」などは、調理経験のある大人であれば容易にイメージできる表現であるが、経験の浅い子どもにとっては分かりにくいと考えられる。
     それに対して「動作の状態を表す」ものは、あまり調理の経験がない子どもが、動きをイメージしやすいように、日常生活にも用いられるようなオノマトペを使用するのであろう。
     よって、必ずしも子ども向けの方がオノマトペの種類や使用される回数が多いとは言えない。

文レベル

  1. 文末表現

     大人向けのほんと子ども向けの本とでの文末の表現を、「言い切り」「省略」「体言止め」「話し掛け」の四つに分類し、比較してみた。結果は以下の通りである。

    グラフ2 グラフ3 グラフ4

     この結果から、子ども向けの本の特徴として、話し掛けの表現が多いことが挙げられる。
     これは、子どもに親しみを持たせるためだと考えられる。それによって、子どもが積極的に取り組むようになり、理解しやすい状況を作り出すのである。
     また、省略と体言止めについては、明らかに子ども向けのものよりも大人向けのものの方で多用されていることがわかる。これは、動詞などを省略することによって子どもが理解しにくくなることを避けるためだと考えられる。

  2. 動作について

     大人向けの本と子ども向けの本とで、1ステップ中に含まれる動作の数を比較した。結果は以下の通りである。

    大人向け子ども向け
    動作ステップ平均動作ステップ平均
    料理215484.48193832.39
    お菓子259962.70176832.12
    合計4741443.293741662.25

     この結果から、大人向けの方が1ステップ中に含まれる動作の数が多いことがわかる。
     これは、子どもは経験が少なく、一度に多量の新情報を記憶し、動作にうつすことが難しいからだと考えられる。また、大人は経験からすでに得ている知識があるため、書かれている全ての情報を記憶する必要がないためだとも考えられる。

まとめ

 料理本における子ども向け表現の特性としては、以下の4点が挙げられる。


新聞

 ゲーム本・料理本の分析から得た仮説を朝日小学生新聞と一般紙とにあてはめてみた。

文字レベル

  1. 文字数について

     朝日小学生新聞と一般紙の一面記事のT文当たりの平均文字数を比較した。

    朝日小学生新聞37.92字/文
    一般紙58.13字/文

     この結果から、ゲーム攻略本・料理本と比べると、大人向け・子ども向けともに新聞の方が一文当たりの文字数が多いことがわかる。また、一文当たりの文字数は小学生新聞と一般紙とでは、かなりの違いがあることがわかる。
     これは、限られた紙面にできるだけ多くの情報を詰め込もうとする新聞の性質よるものだと言えよう。また、新聞では大人向けと子ども向けとで一文あたりの文字数にかなりの差が出たが、これは、子どもにはやり一度に身に付けることのできる情報量に限界があるためではないかと考えられる。

  2. 漢字について

     小学生新聞・大人向け新聞それぞれ10の記事について、総文字数に対する漢字の割合を比較した。

    文字数漢字数割合
    朝日小学生新聞12252325426.6%
    一般紙9722485249.9%

     小学生新聞・一般紙ともに、料理本よりも漢字の含まれる割合は高いものの、小学生新聞には一般紙の半分程度しか漢字が含まれていないことがわかる。
     この結果から、やはり子ども向けの文章は漢字の含まれている割合が低いということが言える。

語彙レベル

  1. 同じ物・動作に対する説明について

     朝日小学生新聞と一般紙とで同一の内容の記事をつき合わせ、使われている言葉を比較した結果、以下のような傾向が見られた。

    1. 漢語をできるだけ避ける
      一般紙朝日小学生新聞
      「検出」「みつかった」
      「捕獲」「つかまえた」
      「鉛中毒死」「鉛の中毒で死んだ」
    2. 語の本来の意味から離れた慣用的な表現を避ける
      一般紙朝日小学生新聞
      「花を添える」「力を合わせてもりあげる」
      「料理熱」「料理への興味」

       小学生新聞に使われている言葉は、一般紙に比べて意味の取り違えが起こりにくいものや、子ども自身が日常使っている言葉に近いものが多くなっている。
       これは、子どもが理解しやすいようにするためだと考えられる。

  2. オノマトペについて

     ゲーム本からの仮説については、新聞は具体的な数字を用いて正確な情報を掲載しているため、検証を取りやめた、
     また、料理本からの仮説については、朝日小学生新聞を調べた結果、18日分の中にわずか23語しか見つからず、この中で特徴づけることは困難であると判断し、検証を取りやめた。

文レベル

  1. 文末表現について

     朝日小学生新聞と一般紙とで、文末が語り掛けになっている文の割合を調べ、比較した。
     結果は以下の通りである。

    文数語り掛け文の数語り掛け文の割合
    朝日小学生新聞863718.2%
    一般紙52300%

     この表から、ゲーム本・料理本から出た仮説と同様、新聞においても、子ども向けの方が文末が語り掛けになっているものが多いことがわかる。
     この結果から、子ども向けの文は、親しみを感じさせるような表現を用いることによって読者をひきつけているのではないかと考えられる。

まとめ

 以上の結果から考えられる子ども向けの文章表現の特性として、

 以上のことが挙げられる。
 これらの特性が表れた理由として、まず、大人と子どもとの情報量の違いがあると考えられる。大人の方が、既得の知識が多いため、より正確で詳細な情報を求める傾向がある。一方、子どもは、既得の知識が少ないため、必要最小限の情報でも、その中で得る新情報は多い。
 また、子どもの知らない漢字や言葉を多用すると、子どもはその文章を敬遠指してしまう恐れがある。よって、子ども向けの文章表現は、大人向けのものと比べて漢字の使用率が低く、文末には語り掛けの表現を多用する。これらは、子どもを文章に親しみやすくする効果があると考えられる。


おわりに

 今回の研究を通じて、今までただ漠然としか意識していなかった「わかりやすい」「易しい」表現について見つめなおすことができた。その点はよかったと思う。「わかりやすい」「易しい」表現というのは、ただ「文字数が少ない」「漢字が少ない」などの表記に関することだけではなく、「語り掛け」などを使うことによって、読み手(子ども)の心情にも配慮するという方法があることに気づくことができた。
 今回は触れなかったが、タイトル(見出し)の表記の違いなどにも目を向けることができれば良かったと思う。
 今後は大人向けの文章においての「わかりやすい」「易しい」表現といったものにも目を向けていきたい。

またね!

1998.12.06.
第34回大阪教育大学国語教育学会にて発表