『表面張力』を詳しく知ろう!!

〜理論の話〜


ここでは,今まで見てきた様々な現象を引き起こしてる「表面張力」をできるだけ詳しく紹介する。即ち,「表面張力」の本質や原理についての話になる。
 今まで,日常当たり前だった現象,またこのホームページで知ったり,観察した現象がどうして起こるのか?そんな思いを胸に読んでもらえれば,と思っています。
では,行きましょう!!

まず始めに,表面張力を簡単に表現すると・・・

表面張力とは・・・
   ⇒液体の表面が縮まろうとするために表面にそって働く張力のこと

言える。これは,棒の実験を思い出せば解り易いのではないだろうか?

このことは液体の性質が原因であり,その性質を次に説明する。その性質とは ・・・

液体の性質
  1. 凝集力
  2. 非圧縮性

の2つである。この2つの性質をまとめて簡単に説明すると・・・

液体はすべてその表面をできるだけ小さくしようとする傾向を持っていて外力の作用がほとんど除外される時に,ほぼ球形をとる

ということになる。これは,葉の上の水滴を思い出せば理解できる。この現象は液体分子間の引力に基づくもので,それが液体表面に沿った張力となって表れることを上記のように表現しているのである。

そこで,その液体の性質を一つずつ見ていくことにする。

凝集力とは・・・
物体を構成する分子,あるいは原子の間に働く引力のことであり,別名 「凝集エネルギー」 とも呼ばれている。固体では分子または原子が規則正しく配列し,それらの間の距離が小さく,この引力が最も強く働いている。このような状態を 「凝集状態」 という。

分子は必ず隣り合った分子との間に引力が働いていて,液体の内部ではこの引力は互いに打ち消される。ところが,液体の表面にある分子についてはその分子より外側には分子が無い。よって表面での引力は内向きにしか働かない。(左図参照)その時,表面張力は水滴を球に保とうとするのである。


このことを別の表現を用いると・・・

分子によって完全に囲まれていない分子』の数をできるだけ少なくしようとする=水滴が球でいようとする

と表現することもできるのです。

ここでの『分子によって完全に囲まれていない分子とは右図の点滅している分子のことである。そこで「なぜその分子をできるだけ少なくしようとしているの?」という疑問が出てくるのでそれを次に説明します。

この事は,『エネルギー』のことを考えると簡単に理解できる。

そこで,まず『エネルギー』の基本的な考え方として『力学現象』を振り返ってみる。


力学的に言って高い所にある物体は,低い所にある物体よりも不安定と言える。なぜなら,高い所にある物体は支えがなくなると安定な位置である低い所に向かって自発的に落下しはじめるからである。これを「エネルギー」的に表現すると,エネルギー的に高い物はエネルギー的に低い所へ自発的に運動する傾向があると言える。さらに,ここで言う「エネルギー」とは当然「位置エネルギー」のことである。したがって・・・

「不安定」「位置エネルギーが高い」 ところから・・・

「安定」 ⇒「位置エネルギーが低い」 ところへ運動する

という,傾向があると言える。
このことを水滴の話に当てはめて考えると,次のことが言える。

水滴の表面積が大きい状態というのは
水滴の表面にある分子,つまり『分子によって完全に囲まれていない分子』の数が表面積に比例して多い状態である。この分子は,内向きにしか引力が働かず,すなわち『不安定』な状態の分子であり,その分子の数が多いと言うことはその水滴そのものが『エネ ルギー的に高い』状態にあるということ。
水滴の表面積が小さい状態というのは
『分子によって完全に囲まれていない分子』の数が少なく,上記の逆の理由により水滴そのものが『エネルギー的に低い』状態である。

つまり水滴は・・・

水滴の表面積の大きい状態」=「不安定,エネルギーが高い所」
から・・・

「水滴の表面積の小さい状態」=「安定,エネルギーが低い所」
へ運動する。

これが液体の一つの性質になる。

(※ここで言う「エネルギー」とは 『凝集エネルギー』 のこと。)


次に,非圧縮性について述べることにするが,それを述べるにあたって「圧縮 ・非圧縮」一対にして説明することにする。

圧縮性とは・・・
圧力を加えることによって体積が減少する(=密度が増加する)という性質である。流体(液体・気体)のつりあいや運動を考えるとき,また各部分の密度変化を考慮しなければならないときにその流体を 『圧縮性流体』 と言う。また別名 『縮む流体』 とも言う。
非圧縮性とは・・・
逆に,各部分の密度変化を無視することができるとき,その流体を 『非圧縮性流体』 と言いその性質のことである。またこの流体のことを 『縮まない流体』 とも言う。
ここで『流体』とは・・・
液体や気体は変形しやすいという共通点をもっている。そのため運動の仕方も良く似ている。つまり一定の形をもたず,外力をかけると容易に変形する物質のこと。

結論からいうと,液体は非圧縮性流体として取り扱われることが多い。それは次のように考えることができるからである。

液体は

一定の体積をもっている(圧力があまり大きくないとき)
これは液体分子が互いの分子間力によって引き合っていることを意味している 。
流れることができる
分子の自由度が固体の格子に閉じ込められているときよりも大きいことを示している。

つまり液体を分子のレベルで考えたときに,水の場合,左図のような『小さな空洞』が存在し,それによって液体そのものの体積を変えることはできないが,形を変えることはできる。

一般的に,ほとんどの物質は固体から液体に変化すると(5〜15%)体積が膨張する。これは液体分子間の平均距離が固体の場合より大きいことから,固体が融解するとより大きな場所を占める,つまり膨張する。しかし,液体ではそれ以上分子をつめることはできないのである。

ここで水の場合,分子間での引力として「水素結合」が重要である。基本的に非圧縮性には関係ないが,融解して体積が減少するという水の特異な性質に関係がある。


以上が液体の性質の説明です。これらの性質により

まとめ
液体はすべてその表面をできるだけ小さくしようとする傾向を持っていて外力の作用がほとんど除外される時に,ほぼ球形をとる

これが『表面張力』の原理なのです。

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参考文献

  • 物理学辞典編集委員会 編:物理学辞典,培風館
  • 井上敏 小谷正雄 玉虫文一 富山小太郎 編:理化学辞典 増訂版,岩波書店
  • 下中邦彦 編:世界大百科事典,平凡社
  • 大百科編集委員会 編:(丸善エンサイクロペディア)大百科,丸善株式会社
  • 池本義夫 編:概説物理学,建帛社
  • 小暮陽三 著:身近な教養物理,森北出版
  • 原島鮮 著:改稿 物理学(上),学術図書出版社
  • 廣川友雄 小倉ー 編:物理学実験,学術図書出版社