歴史的な話です



物理だけだけではなく,全てのものの考え方の中には,そこに到達するまでの過程がある。
つまり「突然その事が生まれた」ということはなかなか有り得ない。
そこで!じゃ,その過程を振り返えることは,その理論をよりしっかりとした理解を可能にするのではないか?そんな思いを込めて,このページを作りました 。
歴史を振り返ることにより,表面張力という物理現象のさらなる理解へとつなげて下さい。

次から,表面張力にまつわる歴史的なことを紹介します。では・・・

表面張力はどのようにして発見されたのか?

それでは,昔話です・・・

 昔々,イタリアにガリレオ・ガリレイというそれはたいそう賢い御人がおったそうなぁ。彼は,アルキメデスという人以来ほとんど発展していなかった 流体力学 という分野にも注目をしたそうなぁ。それによって,アリストテレスという人の誤った主張を指摘したとな。その誤った主張というのは,『物体の浮揚は,とりわけその形に依存する』というものだったそうじゃ。アリストテレスは薄い金属板が水面に浮くという 現象から,このような結論にたどり着いてしまったのじゃったぁ。
 これに対して,ガリレオは,「薄い金属板のような板は水面に浮くが,一度 水に浸すと沈んでしまい二度と浮き上がらないじゃないか!」と指摘したそうな 。そして,『物体の浮揚は比重に依存すること,また物体はその押しのけられた流体の比重よりも小さいときに浮く』と正しく主張したのじゃったぁ。

※『比重』に関しては, ここ をクリックして見れば解るよ!

薄い金属板が水面に浮く原因が,正確に表面張力として認識されるのは,遥か後の18世紀になる。しかし,この時のガリレオの指摘が実質表面張力の発見と言えるのではないだろうか。事実,木の葉の上の水玉が球形を保って,流れ散らないという現象をガリレオは自分が説明できない現象として上げている。その事からも,表面張力と言えないまでも表面張力の現象を異質なものとして考え,表面張力の存在を浮き彫りにしたと言える。


人物紹介

ガリレオ・ガリレイ Galileo Galilei (1564〜1642年)
イタリアの物理学者,天文学者。観測と実験の結果を説明する法則を演繹するという近代の科学的方法の基礎を築いた。ガリレオは流体力学 におけるアルキメデスの業績を拡張して,比重を測るための改良型の流体静力学的天秤を発明しただけではなく
  • 振り子の諸性質の発見
  • 温度計の発明
  • 落体の運動を支配する法則の定式化
  • 月,太陽,惑星,恒星の最初の観測者
という偉業を成し遂げ,他にもまだ多数の貢献をした。「重さの異なる二つの砲弾をピサの斜塔から落下させ,それらが同時に着地することを示し,重さの異なる物体でも同じ速さで落下することを証明した」という話はあまりにも有名である。また,ガリレオは論争好きで皮肉屋であっ た。特に,自分の観測や議論の正当性を認めることができなかったり,認めようとしなかった人々に対してその傾向が強かった。これは,逆に言うと科学史における地位を象徴しているとも言える。
アルキメデス Archimedes (前287頃〜前212年)
古代ギリシャにおける最も天才的な数理学者・機械学者。ヒエロン王の王冠の金の純度を見分けた逸話と関係がある「アルキメデスの原理」の発見は有名。また,上記の話よりアルキメデスの研究は後にガリレオの力学研究の出発点になったと言える。他に
  • 最初に多くの平面図形や立体の求績問題に重心という概念を用いた
  • ギリシャ数学独得の「取り尽くし方法」 により,それまで実験で得ていた多くの結果を証明した
    (「球と円柱について」「円錐状体と球状体について」など)
  • 円周率の数値による近似計算大数の呼び名の体系化
などがある。こうして,近代の西欧の学者に大きな影響を与えた
アリストテレス Aristoteles (前384〜前322年)
ギリシャの哲学者。アリストテレスは人間の活動を理論的,実践的,制作的の3つに分けそれぞれの領域について優れた業績を残した。その中の理論的研究は ,第一哲学としての形而上学,自然学,数学に分かれる。自然学の中で彼の本領は生物であったが,物理学的方面でも次の事を説いた。
  • 重いものの落下の速さはその重さに比例し,媒質の密度に反比例する
  • 空虚(真空)を認めない
  • 天動説
物事を知るとはその原理,原因を知ることであり,自然学とは他ではありえない(必然な)ことの研究であるとしたり,万物の運動は可能性と現実性との統一であるとしたことなどは注目に値する。

以上が主な登場人物なのですが,これまでに度々出てきていた『流体力学』について次に説明しています。
またこれは, 流体力学 をクリックしても見ることができます。

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参考文献

  • 安田徳太郎 訳・編:新訳ダンネマン 大自然科学史,三省堂
  • 大森実 著:物理学のあゆみ(理科教育のための科学史1),第一法規出版
  • 皆川義男 訳:科学技術 人名事典,共立出版
  • D・アボット 編,渡辺正雄 監訳:世界科学者事典 4物理学者,原書房
  • 伊東俊太郎 坂本賢三 山田慶児 村上陽一郎 編:科学技術史事典,弘文堂