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小説の一場面の評価集計結果

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学籍番号順
作者 作品 得点
41136 「今日もあの人おるかなぁ」
一週間ほど前、通学電車の中で初めてあの人を見た。
いつもは人ごみを避けて一番前の車両に乗る俺は、その日遅刻しそうになって、駅の階段に一番近い、一番人が込み合うドアに走りこんだ。
乗れたことに安心して、息を整えてふと顔を上げると、目の前にその人がいた。
俺が通う高校の、すぐ隣の高校のブレザーを着て、気だるそうに携帯をいじっていた。
もう一度しっかりと息を整えた。
ちょっとハジけてる感じの髪型と化粧。
年上っぽい大人びた雰囲気。
「こんな綺麗な人がこの電車乗ってたんや…」
見とれていた自分に気が付いて、慌てて俺も携帯を取り出した。特に用はないけど。
「明日からはこの車両やな」
即決だった。
その日から一週間、朝の通学電車の20分間が楽しみだった。
あの人はいつものドア付近で携帯をいじってる。その向かいで俺は携帯をいじるフリしてチラ見する。
話し掛けようかと、もやもや考えているうちに、20分が過ぎる。あの人は改札を出て、逆の方へと歩いていく。
そんな朝の時間が一週間続いた。
「今日もあの人おるかなぁ」
今日こそ話しかけようと決めた。
「やっぱおった」
安心と緊張が同時に押し寄せた。いや、ほとんど緊張。
今日は携帯をいじらずに、ひたすらタイミングを探す。
目の前の人は相変わらず携帯ばっかいじってる。そんなに携帯に用なんてあるんやろか。
「おっ携帯なおした!今や!いけ俺ー!」
といっても、ビビッてなかなか話しかけられへん。
下向いたまんまの俺の中で、ビビりの俺と、行ったれ的な俺が戦ってる。
とその時、俺の肩を誰かが「トントン」
「ん?うわっ!あの人や!何でや!」
「ねぇ、君いつもこの車両乗ってへん?」
「あっはい」
「よかったらアドレス教えてくれへん?」
「ありえへーん!!」
総得点= 135
エピソード得点= 62
場面化叙述得点= 63
イチオシ得点= 10

74202

43404 今日から私は教育実習だ。
不安と期待がまじった中、小学校へと足を運んだ。
教室につくと、担当の先生が視聴覚室にいくように言われた。
実習をはじめるにあたっての説明会があるようだ。
説明会の席はクラスごとで指定されていて、私が担当するクラスには私以外に二人の実習生がいた。
二人の男と女は楽しそうに会話をしている。
知り合いらしい。
人みしりの私は「おはよう」とだけいって席に座り、担当教官の先生の話を聞いていた。
すると隣に座っていた女の子が「これから一か月よろしく」といったので、私は横を見た。
まじで!!!!!
めっちゃ好みやし。
総得点= 105
エピソード得点= 52
場面化叙述得点= 53
43492 今日はなんていい空なんだろうか。
なにかいいことでもおきそうなそんな気持ちのいい青。
川原に寝そべりゆったりと雲が流れて行くのを見ると、時の流れを忘れてしまう。
心地よい風が吹いている。その風によいしれ、うとうとしていると、ふと何か花香りのようないいにおいが香ってきた。
その方向に顔をむけると、真っ白なワンピースに麦わら帽子を目深にかぶった女の人が立っていた。
少し口元を微笑ますと、その人は僕とは反対方向に離れて行く。
とっさに追いかけようと立ち上がった瞬間、草に足をとられ、転んでしまった。
急いで立ち上がったがもうそこに彼女の姿はなく、心地よい風だけがふいていた。
総得点= 155
エピソード得点= 63
場面化叙述得点= 82
イチオシ得点= 10

72470
短いのにエピソードがしっかりしていて、本当の小説を読んでるみたいでした。

62437 そろそろ家を出ようと、テレビのリモコンに手を伸ばす。ちょうど星占いが終わるところで、私の星座は12位だった。ラッキーアイテムはクロスのペンダントだという。
あ、と自分の胸元に光るそれを見た。くだらない。
最下位の人間がラッキーアイテムをつけたら、いったいどうなるというのだ。いいことが起こるというのか。それともやはり、12位なのだから悪いことが起こるのか。
くだらない、と口にしてからテレビを消した。
――今になって思う。あの日、いいことがあったのだとしたら、それはあいつに出会ったことだろう。そして、悪いことがあったのだとしたら、やはり、あいつに出会ったことだろう。
バスに揺られながら、もたれかかった窓ガラスに映った自分が、自分でおかしくて笑ってみた。ここにいる私は誰なのだろう‥‥。
ある事に踏ん切りをつけたくて、私は私でなくなった。身に付ける全てのものを変え、化粧を濃くして、世に言うイメチェンというやつを図ったのだ。
似合う似合わないは別にして、イメージを変えたという点では、大成功だと自分でも思う。流行りの形のワンピース、右耳に付けたピアス、一目でブランド物だとわかる鞄、驚くほどヒールの高いパンプス‥‥。学校に着くときっとみんな目を丸くするだろう。そしてきゃぁきゃぁと騒ぐのだ。前よりいいよ、今の方があなたらしいよ、などとわかったようなことを言って。
ただ私は、そんな言葉のどれ一つも望んでいるわけではなかった。似合うよ、と笑いかけてほしい相手は、そこにはいない。そして、そうしてほしいと望むたった一人の人には、私の望みはもう届かないのだ。どんなに願っても。
それならどうしてこんなことをしているのか。
全く、自分が自分でわからない。見返したいという衝動にしては、あまりに自虐的だった。
学校について、トイレでマスカラを塗り直す。
「悲しくない。虚しくない。」全て上手くいくはずだ、と作り笑顔を張り付けて、教室のドアを開けようとしたその時だった。
「きれいな――」
ふいに後ろから声をかけられて、聞き慣れないその響きの元へ振り返る。真っ黒な瞳がこちらを見ていた。
「きれいな髪ですね」
「きれいな髪だね」
どれくらい前だろう。いつか彼もそう言った。
彼と過ごしたいくつもの日々と、交わした何万、何十万の言葉を、全て忘れるために一つずつ消していったとき、最後の最後に残ったのが、なぜかそんなどうともない一言だった。
思い付く全てを変えた私が、唯一捨てられなかったのが髪だった。切れなかったそれに彼への想い――愛も、憎しみも、失望も、期待も、未練の全てを詰め込んだのだった。
忘れないように。そして、もう溢れることのないように。
誰だか知らないが、痛いところをつく男だ。どうしていきなり、どうしてよりによって‥‥とそんなことがぼんやり頭に浮かぶ。
どれくらいの沈黙があったろう。
どうして、とその男は優しく笑った。言いながら私の頬に手を伸ばした。
一瞬、私の心の声が聞こえたのだろうか、と思った。名前も知らないその男に触れられるまで、さっき塗ったばかりのマスカラが黒い滴になって伝っているということに、私は気付きもしなかったのだ。
総得点= 208
エピソード得点= 85
場面化叙述得点= 93
イチオシ得点= 30

72454
共感出来る話だったので、すごく心に響きました。

72484
場面全体がすごく切なくて、うまいなぁとただ単純に思いました。

72487
見返すためにイメチェンをしてはみたが、他の誰に何かを言われたい訳ではなく…。そんな心情もよくわかるし、感情移入が非常にしやすい作品でした。私が主人公の立場であってもそうしただろうなぁと思えるほど、共感できる話でとてもよかったです。

62457 それは、暗闇の中で見つけた。目と目が合った瞬間にお互いが意識した。そこに会話などは必要なく、本能のまま向き合った。お互いがお互いを欲し、そして受け入れた。日常とはかけ離れたこの空間に自分のすべてを預けた。
程よく回ったアルコールと低音の心地よさに、だんだん意識が遠のいてきた。このまま時がとまれば良いのに…
だが願う気持ちとは裏腹に、時計は五時を指していた。
人もまばらになったフロアー、はっと我に返る。また日常に戻るのか。いや…
来週も来ないかと誘い聞いた携帯番号、悪くない反応だ。真夜中の大阪で新しい恋の誕生か。
総得点= 110
エピソード得点= 50
場面化叙述得点= 60
72101 あの人の手。思えば手に惚れたのかもしれない。
今、私は大好きな手に抱かれている。
大好きなあの人の手に・・・
第一印象は手。
私は人の手を見るのが好きだ。
手にはその人の人柄が表れると思っている。
その人が、どんな人なのか興味を持ったらまず手を見る。
それが、私の癖だ。
きれいな手だな。
そう思った。
男の人なのに、白くて、長い指。
繊細そうな、筋の浮いた手の甲。
爪はきれいに切りそろえられていて、傷は一つ。
いかにもクラリネット奏者だと思った。
素早い指使い、美しい音色。
ピアノをしていたのかな。
傷はひっかき傷だろうか。
私より大きな手。素敵。
「お疲れ様です!」
「・・・おつかれさまです」
手と同じ、物静かな反応。やっぱり。
なんだか嬉しくなった。
「これからよろしくお願いします!」
総得点= 125
エピソード得点= 59
場面化叙述得点= 66
72102 プールにつけていた濡れた足は、夏の風があたって少し涼しかったけれど、私の顔は、体は、心は、ほてっていた。
靴をぬいで 素足になって 冷たい水 足をつけて 空を見上げ 光る太陽
なんて即興のうたを、5限が始まるチャイムを伴奏にして口ずさみながら誰もいない屋上のプールに足を踏み入れる。
太陽は南に昇り、肌は焼けつくように熱い。
午前中に体育の授業があったのか、プールサイドは水びたしになっていた。
私は靴をぬぎ、学校指定の白いハイソックスをぬぎ、つま先で歩きながらプールへと近づいた。
スカートが濡れるのも気にしないでプールサイドに腰をかけ、ゆらめく水の中へと足を入れる。
少しぬるいけれど気持ちがいい。
足を上下させ水しぶきをつくる。
それが太陽の光にあたるのを見ていると、
ああ 私は甘えて現実から逃げているんだなぁと感じた。
アメンボが足もとをすーっとよこぎっていく。
そのアメンボを見つめうつむくと、次の瞬間、水が弾ける大きな音と共に水しぶきがとんできた。
心臓がはねあがり顔を上げると、水の中へ飛び込んだ人が水面へとあがってきた。
きれいな波紋が広がる。
髪は太陽に照らされて金色だ。
つり目がちな瞳と目があった。
足をつかまれ水の中に引きずり込まれたわけじゃないのに息がつまる。
呼吸をするのを一瞬忘れた。
総得点= 180
エピソード得点= 71
場面化叙述得点= 89
イチオシ得点= 20

72108
ゆったりと流れている時間が描かれていて、好きです。穏やかで、淡い気持ちを思い出させてくれる作品だと思います。続きが読みたくなります。

72464
場面表現がとても上手でした。

72103 聞きたくなかった...。そんな言葉聞きたくなかったのに...。
そう思ってあたしは唇を噛み締める。何度も何度も噛み締められて、赤く腫れ上がってしまった唇。あたしの今の心もきっとこんなんだとふと思った。
「俺と別れて欲しい...」辛そうにそう呟いたアイツの横顔。思い出したくなくても、鮮明に浮かんでくる。いろんな思い出が走馬燈のように駆け巡って来る。泣きたいのに涙が出ない絶望感で何となく家に帰る気になれず、あたしは独り、どこへいくともなく彷徨っていた。
 気が付くとあたしは公園の前にいた。アイツと初めてキスしたあの公園。思い出の波が押し寄せる。「こんな所にいたら辛くなるだけじゃない...。」そう思って足早に立ち去ろうとしたその時だった。少し離れた所からギターの音色。それは公園の中から聞こえてくる。「綺麗な音...」どんな人が弾いているのか気になって、思わず公園のなかへと足を踏み入れた。
 公園の一番奥の白いベンチ。ギターの主はそこを陣取って無心にギターを弾いていた。長い手足に白いシャツとジーンズがよく似合う男の子だ。誰かに見られているとも知らずにただただギターに熱中している。驚く程美しいその音色。まるで心が洗われるようだ。あまりの素晴らしさに思わず聞き惚れてしまった。しかしいくら何でも全然知らない人に勝手に聴かれていることに気づいたらいい気はしないだろう。そう思って振り返り、歩き出そうとしたその時、思いもかけない出来事があたしの歩みを止めた。 彼が自分のギターに合わせて唄を口ずさみだしたのだ。そして彼が歌い出したその曲が一層あたしの足をその場に縛り付けた。
Mr.Childrenの「Over」...あたしの大好きな曲。何度も何度も聴いた曲...。その曲の歌詞があまりにも今のあたしと重なって、気づけば涙が頬を伝っていた。涙と一緒にいろんな感情が後から後から止め処なく溢れ出た。そして彼が歌い終わった時、あたしは思わずこう叫んでいた。「もう一度唄ってもらえませんかっ!?」
驚いたように顔を上げた彼は、あたしを見るとすぐに照れくさそうに笑ってもう一度唄い始めた。
ボロボロのあたしと彼は、そんな風に出逢った。
総得点= 197
エピソード得点= 82
場面化叙述得点= 85
イチオシ得点= 30

72401
切ない心情がまるで自分のことのように想像できて、ほんとに切なくなったから。

72468
一番心にジーンとくる作品でした。自分の状況にぴったり合う歌詞ってたまにありますね。

74215
別れてしまっても、新たな出会いに希望が持てる内容だったのでよかったです。

72105 「ピピッピピッ 7時です」
いつも通り携帯の目覚ましの音に起こされてベッドを出た。そのままリビングに向かう。テーブルにはすでに朝食が用意されていた。それを10分でかたずけて洗面台に向かう。歯を磨き,寝癖を直し,コンタクトをはめた。
いつも通りの朝の支度を済ませ,家を出た。
いつも通り自転車に乗って駅に向かった。毎日見ている景色が横を通り過ぎていく。12分で駅について,そこの駐輪場に自転車を止めた。定期を出し,改札を通る。
いつも通り7時55分発難波行準急に乗る。最後の車両の一番後ろ,そこはいつも乗っていたところだ。この駅はそんなに大きくない。だから,そんなに混まないので,周りを見渡しても週刊誌を読んでいるサラリーマンや音楽を聴きながら携帯をいじっている大学生ぐらいの人が数人乗っているだけで朝の通勤ラッシュ時とは思えないほどだ。だいたい乗っている人は決まっていた。いつもなら見たことのある顔ばかりが並んでいた。しかし,その日は少し違っていた。見たことのない女の子が乗っていた。いつも自分が乗っている場所のすぐ隣に。彼女は少しうつむきながら音楽を聴いていた。自分は窓の外を流れるいつも通りの景色を眺めていた。電車がトンネルに入ったとき窓に反射して彼女の顔が見えた。自分を見ていた。少し驚いたが,なんとなく自分も彼女のほうを見てみた。すると彼女は一瞬驚いた顔をしてすぐにうつむいてしまった。しかし,その時は特に深く考えなかった。まさかこれがあんな悲しい恋になるなんて・・・
総得点= 122
エピソード得点= 60
場面化叙述得点= 62
72107 ある夏の昼下がり。
そよ風に乗っていい香りが漂ってくる。
その方向に目をやってみる。そこには、
風になびく長い髪、白い肌。理想そのものだった。
ふと見とれてしまう。そんな彼女が突然こちらを向いてこっちに向かってくる。
緊張と興奮。
そして彼女は目の前に立ち止まり、こう僕に言った。
「ねえ、君。名前は?」
…これが僕と彼女の出会いである。
総得点= 92
エピソード得点= 41
場面化叙述得点= 51
72108 4月って苦手。
新しい学年、新しい教室、新しい担任、新しい友だち。
新しいことが一気に押し寄せてきて、頭がいっぱいいいっぱいになってしまう。
クラス替えしたのは10日前なのに、まだみんなの顔と名前が一致しない。席が近い子はわかるんだけど…。
席に着いて周りを見ると、もう仲良さそうに話している子があちこちにいて、自分だけが新しい環境に馴染めてないような気持ちになる。
やっぱり私、4月は苦手。
『そろそろ学校にも慣れてきただろうし、みんなの性格とか進路の希望も知りたいから今日から5人ずつ個人面談します。』
ホームルームで担任が言う。私の出席番号が呼ばれた。
放課後、担任の先生がいる教室に行かないといけないらしい。環境準備室…っていう所。場所を黒板に書いて説明している。
…ややこしい…でも覚えた。…多分。
やっと今日1日の授業が終わって、放課後。自分が指定された時間に環境準備室に向かう。
渡り廊下を渡って、階段を登って、迷いながらもなんとか『環境準備室』と書いたプレートを見つけた。近づいていくと、そのドアの向かいの壁にテニスのラケットが立てかけられている。私の前の時間に面談してる子の、かな。その人が終わるまで廊下で待っていることにした。
廊下と私とラケット。…変な組み合わせ。
何分ぐらい経ったのだろう。『失礼しましたー』という声と共に一人の男の子が出てきた。テニスウエアを着てる。やっぱりこの子のだ。
ラケットの隣にいた私と目が合った。―まつげ長い…きれいな顔。こんな子同じクラスにいたんだ。
そんなこと考えてたら、長い間目が合っていたらしい。急に恥ずかしくなって照れ笑いする。男の子も笑顔になる。優しそうな目元。
新しい出会い。
4月がほんの少し、好きになる。
総得点= 180
エピソード得点= 75
場面化叙述得点= 75
イチオシ得点= 30

72102
廊下と私とラケット という響きが好き。その場面が頭に浮かんだ。

72423
他の作品に比べて出会いに不自然さがなく、誰もが一度は体験する経験を基に構成されているので読みやすく違和感を感じませんでした。

72425
その場面がリアルに頭の中に浮かんできました。爽やかですてきな出会いだと思います。

72109  「大学入ってもいいことないよな〜。もう五月っていうのにいい出会いもないし。彼女がいる友達が羨ましい・・。まあ俺は部活をやるために大学入ったもんだし,部活に大学生活を捧げるか。」こんな言い訳じみた考えで頭がいっぱいだった。
 恋がしたい。燃えるような恋がしたい。心のどっかでずっと思ってた。けど人を好きになるのがコワい。前の彼女にフラれたことをまだ引きずってるのだろうか?一年以上も前の話なのに。男って過去を引きずるタチなのかな。ただ可愛いって思う子はいる。同じ学科の元気で明るいあの子。その子が授業中にときどき見せる悲しげな顔が俺は好きだ。だが同じ学科であるにもかかわらずほとんどしゃべったことがない。一歩前に踏み出せない。これ以上好きになったら一年前と同じように悲しむことになるかもしれない・・。
 こんな感じで足踏みしていたある日,たまたまあの子の隣に座ることができた。嬉しくてたまらなかったのだが,話しかける勇気も出ず,たまにあの子の横顔を眺めながらぼんやり授業を聞いていた。授業なんかそっちのけで彼女のことばかり考えていた。その時不意に彼女が「その絵かわいいね。」と笑ってくれた。俺は最初何のことかわからなかったが,ぼんやりとノートに書いた落書きが気に入ったらしい。俺は微笑むことしかできなかったけど内心はたまらなくうれしかった。
 授業が終わっても立ち上がれない。「あの子が笑ってくれた。あの子が笑ってくれた。」と心の中で繰り返す。好きな人が笑ってくれた。それだけで恋をする理由になるだろう?もう傷つきたくはないけど,そのリスクを負ってでも俺はもっとあの子のことを好きになりたい。前の彼女のことは忘れられないかもしれないけど,未練はなくなった・・。やっと立ち上がって外に出ると,もう日は傾いていた。夕日が俺の胸を焦がした。
総得点= 167
エピソード得点= 70
場面化叙述得点= 77
イチオシ得点= 20

72437
まっすぐな熱い気持ちがうまく表されていて共感できた

72439
主人公の未練があるけれど、それ以上に好きになったという素直な気持ちがはっきり表れていて、読んでいて胸に響いたから。

72110 「・・・やっぱり今日も歌ってるし。」
週末の夕暮れ時、部活帰りの私が必ずと言っていいほど目撃する男がいる。そいつはいつも駅前の噴水の正面にある、よく手入れされた植え込みの傍で、古い感じのギターを轢きながら歌っている。
顔はそこそこいいけれど、ギターや歌は決して上手いわけじゃない。むしろ、心はここにあらず、やけに必死に歌っている姿には、見ているこっちが恥ずかしくなってしまう。黙っていれば格好いいのに。
そんな男の前では、侮蔑の眼差しを送る人や横目で見て見ぬふりをする人が静かに通って行き、もちろん立ち止まって聞く人なんかはいなかった。暇な私を除いては。
 ――あの日交したことのはを 君は今も覚えているかい
   あの日生まれた思い出を 君は殺してしまったのかい――
何度かこの歌を聞いているうちに、都会の雑踏の中でかすかに聞こえる男の心の叫びが私の心の中へとても地味に伝わってきたよう、なんとなくこの男に興味を持ってしまい、とりあえず退屈しのぎに毎週観察することにしたのだ。
16時過ぎにこの場所にやってきて、18時前には交差点の中へと消えていく。
歌のレパートリーはたったのひとつ。しかもその曲をひたすらリピートするという傍迷惑さ。この人間観察を3カ月間続けてまとめ上げたレポートを今年の夏休みの自由研究にでもしようかと、馬鹿げた案をじっくり吟味する。これがまたいい暇つぶしになるのよね。
もう1ヶ月間――数にしたら4回――も遠巻きから観察しているし、次は挨拶ぐらいしてみるかと思った矢先、そいつは急にぱったりと現れなくなってしまった。
・・・どうやらいいレポートが書けそうな気がしてきた。  (続く?)
総得点= 127
エピソード得点= 64
場面化叙述得点= 63
72401 あれは、夏の暑い日の出来事だった
・・ピロロロローーー・・
ヤバい!閉まってしまう!
・・ピーっ・・ガッシャン・・
間一髪で電車に乗り込むぼく
結構本気で家から走ってきたから
息があがってしまい
顔をあげることができなかった
・・よかった間に合って
  これに乗れなきゃ遅刻だった・・
息がだいぶ落ち着いてきた
ぼくはそっと顔をあげてみる
ばちっっと目が合った
そう、ばちっっと・・
落ち着いた感じのかわいい女の子
その子はぼくにそっとほほ笑む
暑さと恥ずかしさで
汗が滝のように流れ出る
ぼくは苦笑いして
鞄の中のタオルを探す
・・見つからない
またはずかしくなって
下を向き、苦笑い
・・・これよかったら・・
目の前には青いハンカチがあった
顔をあげ、僕はその子を見る
・・いいの?
・・うん
そこから先の電車内は
ずっとその子と喋っていた
久し振りに胸がときめいた
降りるとき
洗って返したいからと言い
また会う約束をした
今、ちょうど
その子を待っている・・
総得点= 149
エピソード得点= 66
場面化叙述得点= 73
イチオシ得点= 10

72474
情景を思い浮かべると、青春のほほえましい光景だなと思い、いい作品だと思いました。きれいな出会いだなぁ。

72402 今日はT大学とバスケットの練習試合。
真夏の太陽がさんさんと照っている。
ウォーミングアップを終えた僕は顔を洗いに水道へ行く。するとそこには一人の女の子がいる。
近づいて行くと、どうやら相手の大学のマネさんのようだ。
顔を洗いながら彼女のほうを見るととてもかわいい。
再び顔を洗ってタオルを拾おうと手探りで探していると拾い損ねた。
拾い損ねたタオルはふわっと舞い彼女と僕の間に落ちた。
慌てて拾おうとした僕と彼女。
ふいに手が触れ合う。綺麗な手だった。
とっさに手をっひこめる2人。
そこにはなんともいえない異様な空気が流れる。
何時間たっただろうか。(実際は数分であろう)
僕には長い時間に思えた。
その異様な空気に耐えられなくなった彼女はさっとタオルを拾う。
絵にかいたような真夏の太陽が照る下で笑顔で「タオル落ちたよ、はい」と渡してくれた。
さっきの手の感触が蘇りおそるおそる手を出す。
「ありがとう」
「どういたしまして」
これ以上なにもいえず僕はすぐさま水道を後にする。
体育館に行くとさっきの彼女がいる。
これから試合。
プレーにでききるだろうか。
総得点= 128
エピソード得点= 64
場面化叙述得点= 64
72403 ある放課後の話である。
ちょうどぼくは文化祭の店長でやることがあったので、
一番最後まで教室に一人でこもっていた。
でももう日は暮れそろそろ帰ろうとして
ぼくは外をふと見た。
・・そしたら外は雨が降っていた。
「そういえば昨日の夜テレビで午後雨やったな・・」
とここで後悔が襲ってくる。
「何で傘忘れたんやろ・・」
と思いながらも時すでに遅し。
さすがにもう周りに人の気配はない。
どうしようか迷ったがさすがにどうしようもなかったので
鞄を頭にやって今まさに走り出そうとしたとき
鞄のさらに上に傘の端と思われる部分が目に入った・・。
「・・・んっ!??」
ぼくは何が起きてるか分からず一歩ふみだしたまま動けなかった。
もう誰も校舎には残ってないはず・・。
そう考えているとあることに気づく。
ぼくがなんともいえなく好きな香水の香りが
ほのかに風に交じって辺りを包みこむ。
ぼくはドキッとした。
明らかにこの香りは忘れることのできない
つまり、ぼくがいつも気になっている子がふっている
香水に間違いがなかった。
間違えるはずなどなかった・・。
あの子である!
しかし彼女はぼくより2時間ほど前に帰ったはずである。
まさかここにいるはずなどないと思った。
しかし、この香りは・・・・・
ぼくは固まった体をどう動かしたらいいか分からず
このたった5秒という短い時間で必死で考えていた。
ぼくはそんなことあるわけない
そうだ!
あの子がぼくのためにわざわざ戻ってきてくれることなど・・
あるわけないと思いながらも
少し期待をして
ゆっくり後ろを振り返った・・。
・・・ぼくは目を疑った・・・
(彼女は満面の笑みでこちらを見ていた・・)
総得点= 140
エピソード得点= 66
場面化叙述得点= 64
イチオシ得点= 10

72442
状況説明の文と会話文がうまく両方使われていて読みやすかったです。また文の書き方が興味をそそる書き方で良かったと思います。

72404  
 高校に入学して彼女もできないまま私は卒業を迎えた。中学2年のころから好きだった宮原のことをよく考える。彼女は年上。仲は良かったが、告白する勇気はなかった。高校は別で、どこの高校に行ったかも分からない。ただあの、私の名前を呼ぶときの澄んだ声と、笑顔だけを覚えてる。
 大学生活が始まり、校内で宮原に似た人を見掛ける度、自分の鼓動が鼓膜に伝わった。その人は宮原よりも背が低い。顔は良く似ていた。似ている人と付き合いたいと思うのは、本音でもあり、未練がましいというか、やっぱりためらいがあった。
 
 朝からすっきり晴れた夏の日、大学の駐輪所に自転車をとめる。心地よい風が私の横を吹き抜けた。宮原似の彼女が私の横に自転車をとめた。偶然かと思った、彼女が私に話しかけるまでは。
 私の身長は中学のときよりずっと伸びていた。宮原が小さく見えたのはそのせいだった。きみにまた逢えてよかったよ。
 
 
総得点= 141
エピソード得点= 72
場面化叙述得点= 59
イチオシ得点= 10

72444
読み返してみて意味がわかった。少し深い感じがした。

72405 確かにその時、時間が止まったのだ。
いつもの昼下がり。
ホームの向こう側。
変わらない町並み。
階段の側をふと見たそのとき、
僕の時間は 確かに止まったのだ。
間違うはずはない。
少し髪が伸びていても、服装が大人びていても、
寒くない時にも両手をポケットに入れる癖は変わらない君。
僕に気付いた君が控えめに手を振る。
やっとわかった。
僕はきっと 何度でも君を好きになる。
総得点= 143
エピソード得点= 62
場面化叙述得点= 71
イチオシ得点= 10

72420
歯切れのよい文体で、散文詩のような印象を受けた。短い文章なのに再会する男女の姿がありありと目に浮かんだ。

72406 雨の日は憂鬱だ。
ズボンの裾は濡れるし、鞄に入れた本もぐちゃぐちゃ。
特に通り雨はタチが悪い。
計画性のない俺には、折り畳み傘なんて代物を持ち歩く習慣などない。
しかたなく、しばらく空が機嫌を直すまで付き合ってやる。
不機嫌な空よりも、俺のほうが不機嫌な顔をしているだろうな、今は。
この間入学したてで、知り合いもほとんどいない。
傘に入れてもらおうにも、入れてくれ、と頼める相手がいなかった。
仕方なく、やむことを知らない雨空をシャッターの降りた商店の屋根の下からゆっく
りと見上げる。
「はぁ…」
ついても意味のないため息ばかりが積もっていく。
幸せが逃げていくと知りながらも、こぼれ落ちる。
降り続ける雨は、暫くやみそうにない。
スッ…。
不意に目の前に傘が近づいた。
突然のことにたじろぐ。
「…入る?」
少しだけ聞き覚えのある声。
紺色っぽい、女の子にはあまり似合わない、男物のような傘。
差し出してくれた彼女の微笑みは、今も脳裏に焼きついたまま。
「…かわいくねぇ傘だなぁ」
照れ隠しに悪態をついた。少し怒って、少し頬が紅く染まる。
傘はかわいくなかったけど、この顔はなんかかわいい。
「傘なんて雨を防ぐためのものなんだからいいの。それより、ひどくならないうちに
帰ろうよ」
腕を引っ張られて、促された。
一緒の傘に入るって恥ずかしい。
でもまぁ、好意は受け取ることにする。
「…サンキュ」
なんとなく小声になってしまう。
「え、なんて?」
あらためて顔を見て尋ねられると、言葉に詰まる。
「な、なんでもない。あ、傘ぐらい俺が持つ」
半ば強引に傘を持って、少し早足で歩く。
彼女も、少し早足で隣についてくる。
ただのクラスメートだったのに、段々距離が縮む気がした。
俺は彼女と本当に"出逢った"。
物語ははじまりを告げた。
そして、雨の日がちょっぴり好きになった、春の日。
総得点= 158
エピソード得点= 76
場面化叙述得点= 82
72407 高校三年の春、僕は一人の女の子と知り合った。
当時、部活で左足を痛めていた僕は、松葉杖をついていた。
人混みを歩くのは辛かったけど、もう三年だから、という思いから、毎日塾に通っていた。
塾の近くにはファーストフード店があった。
僕は毎日塾へ行く前にそこへ足を運んでいた。
そんな生活を続けていたある日、一人の店員さんから声をかけられた。
「足、まだ治らないんですねぇ。」
不意をつかれた僕は
「あ、はい。」
としか答えられなかった。
それから数日して、左足が治り、またいつものようにファーストフード店へ行った時、またあの店員さんから
「足、治ったんですね!」
と声をかけられた。
「はい、治りました!」
今度はちゃんと答えられた。
そして店を出ようとした時、後ろから足音が聞こえる。
振り返ると、あの店員さんだ。
「あの、友達になってもらえませんか?」
僕は答えた。
「こちらこそよろしく。」
こうして僕と彼女は出会った。
総得点= 109
エピソード得点= 56
場面化叙述得点= 53
72408 今日は友達とプールに遊びに来た。この日のためにダイエットにはげみ5キロ落としたのだ。晩御飯を抜いたりとかなり無理なダイエットをしてしまった。だが流行の水着を着るためならどうってことない。
日差しも強くて気温も30度近くまで上がっている。本当にプール日和だ。
だがなんだか体調がよくないようだ。
頭がくらくらする。
おなかが出ないようにと朝ごはんを抜いてきたためだろうか。
しかし暑さのせいだ。と自分に言い聞かせ泳いでいた。
「○実〜!こっちこっち!」友達が呼んでいる。
急いで友達の方に行こうとするがなかなかいけない。
そのとき私は溺れた。
周りで助けを呼んでくれている声がかすかに聞こえる。
友達の叫ぶ声も聞こえる。
そこへ誰かが飛び込み私を抱えてプールサイドに上げてくれた。
決して軽くはない私を軽々と持ち上げてくれた。
ゆっくり目を開けると目の前には真っ黒に焼けたプールの監視員さんがいた。
気は確かではなかったが確かに私の心は揺れ動いた。
総得点= 120
エピソード得点= 65
場面化叙述得点= 55
72409  突然の激しい雨。
私は屋根のある場所に駆け込み、雨が通りすぎるのを待った。
しかし一向に止む気配はない。
家まで走れば3分ほど。
どうしようかと悩んでいると、向こうから紺色の傘をさした若い男の人が歩いてきた。
すると
「これ使いー」
と自分の傘を差しだした。
私は驚き、
「え!?いいです。そんな、家も近いんで走って帰ります。」
と答えた。すると
「俺も家近いねん。女の子やねんしこの雨やったら大変やで。」
と行って傘を私に手渡し、走り去った。
私は呆然と彼の後ろ姿を見つめた。
その日は彼のことで頭がいっぱいだった。
私はまた会えることを期待していた。
 次の日、私はバイトの面接を受けに駅前のお洒落な料理屋に向かった。
そこで思いもよらないことが起こったのである。
面接が終わり、帰ろうとした瞬間、ドアから昨日の彼が入って来たのだ…
 
総得点= 121
エピソード得点= 59
場面化叙述得点= 62
72410 その瞬間、地球が停止したように思えた。
凄まじい音とともに目の前で宙に舞ったのは、、、紛れもなく人間。
私は焦りながらも現状を把握しようとする。
が、どうにも上手くいかない。
ただ一つ言えることは、目の前で起こったのは交通事故であり、
目の前で吹き飛んだのは私の身内であり、
その目撃者は私と、もう一人。。。
今まさに携帯電話を取り出して救急車を呼び、
重傷を負って動けなくなっている人に応急処置を施そうとしているその人だけ。
呆けている間に時間は過ぎ、気がつけば私は病院の前にいて、
身内の命を救ってくれたその人と、たった二人きりになっていた。
それが、事の始まりだった。
総得点= 122
エピソード得点= 64
場面化叙述得点= 58
72413 虫なんて大嫌い。
見ただけで心臓が早くなるし痛くなる。
蚊だって殺したことはない。
なのに・・・
山の上にある私の大学はまさかの虫のオンパレード。
この前なんて教室にいたのにバッタが足首に・・・恐怖でただただ逃げるだけ。
登下校は特に要注意。
中でも一人の時は、恥ずかしいから叫べないし、
助けを求める人もいないから、必死に下を向いて用心し続ける。
今日はたまたま1人きり。
梅雨時・・・虫の季節・・・
ドキドキしながら慎重に、でも少し早めに歩いてく。
のぼりのエスカレーターには私と知らないスーツの人が2,3段後ろにいるだけ。
だけどわたしには虫のことしか頭にない。
足元に集中集中。
エスカレーターとエスカレーターの間にある階段のところにいる虫たちを不自然な動きで避け続け、やっと校舎に入ろうとしたそのとき
「動かないでください!!
 落ち着いてくださいね。背中に虫がいますから。」
・・・??!!
「ムリ-----------!!!!」と思っても動くなって言われたし・・・
『お願い・・・早くっ』という私の心の声が聞こえたのか
「すいません。ぼくも虫が苦手で・・・あ、あ!とれた!!もう大丈夫ですよ。」
涙が出そうになった。
虫の恐怖からの解放のせいもあるけれど、
苦手であるにも関わらず、他人の私を助けてくれたことにとても感動した。
たくさんのお礼を言って、話を聞いてみると、
私の行動が、虫嫌いな自分の普段の姿にとても似ていたようで、
虫嫌いだと気づいたらしい。
だから虫の存在に気付いた時『とってあげなくては』と思ってくれたそうだ。
「それじゃあ」という彼の声が聞こえた瞬間
「あの!・・・お名前は??」
と思わず聞いてしまっている自分がいた。
総得点= 162
エピソード得点= 72
場面化叙述得点= 70
イチオシ得点= 20

72101

72451
なんか読んでいて突飛すぎず、自然に読めたところが良くて、場面設定もわかりやすい。

72414 高校1年の春。高校生活の初日。緊張しつつ自分のクラスに入り、名簿順の席に座る。
中学からの同級生は少なく、当然となりになったのは知らない子。っていうか知りたくなかった。なんかうるさくて苦手な子だった。
そんな子はさておき、翌日席替えがあった。隣になったのはまた知らない子。でも、すごくきれいな子だった。やったぁ。僕の高校生活が始まった。
これが僕と彼女との出会い。
総得点= 76
エピソード得点= 37
場面化叙述得点= 39
72415 大好きな歌手のライブ。チケットをとってくれたあいつに感謝。
あいつとは駅前のカフェで待ち合わせ。楓,一番好きな曲。
「もしもし,もう着いてるよ。え!!来れない!?チケット自分が持ってるのに。代役立てたって,知らん人と行っても楽しないよ。ま,待ってや!!」
あいつは一方的に電話を切った。今度なんかおごらしてやる。カフェをでて,駅のモニュメントの前にいるらしいチケットの運び手を探す。
この後,ライブに来なかったあいつに感謝することになる。
総得点= 86
エピソード得点= 46
場面化叙述得点= 40
72418 文化祭の日。人ごみが嫌で、ひとりになりたくて、私の足は自然と美術部の展示場へ向かっていた。展示場が近づくにつれて人気がなくなっていく。ただそれだけのことに喜びを感じた。
人の中にいるのが嫌だった。
仲の冷え切った両親。
ひとりきりの食事。
あの子さえ生まれてなければ、結婚なんてしなかったのに。
―私さえ生まれてなければ―
自分の存在を他人の中に見いだせない。私は、何のために生まれてきたんだろう。
展示場のドアを開けた瞬間、私は正面にある絵に釘付けになった。
絵のタイトルは『帰り道』。
全体が淡いオレンジで塗られていて、キャンパスの真ん中にぽつんとブルーの丸が描かれている。動いたら、壊してしまうかもしれない。そう思わせるような繊細な絵だった。帰り道。仲良しの友だち。仲良しの親子。仲良しの老夫婦。そんな中に、ひとりでいる私。そんないつもの情景がふ、と浮かんできた。
私みたい。
心がゆれた。この絵を描いた人はどんな人なんだろう。絵を描いたのは、一つ上の学年の男の人だった。この人に会いたい、会って話がしたい。次の日、私は美術部に入部した。
入部してから2週間が過ぎても、先輩は現れなかった。あんな絵を描く人なんだから、毎日きて絵を描いているに違いない。そう思っていたのに。
「部長、あの人本当に美術部なんですか?」
「あいつは気分が乗らないと来ないからね。」
ははは、と毎日のように繰り返される質問に、笑って答えてくれる部長は本当にいい人だと思う。先輩と部長は中学校からの友だちなんだそうだ。
「でも。」
「なんですか?」
「もうすぐコンクールがあるからさ、そろそろ来ると思うよ。」
言い終わるかどうかのタイミングでドアが開いて、先輩が入ってきた。
「ほらねー。」
お約束のタイミングだね、と部長は笑い転げている。先輩は、見た目は全く美術部っぽくなかった。どちらかというと運動部といったほうがしっくりくるような、がっしりとした体つきだった。
「なに笑ってんの。ていうかそいつ誰?」
「お前のファンだって。」
「はぁ?」
「文化祭でお前の絵見て、ファンになったんだって。」
オロオロして何も喋れない私と、明らかに訝しがっている先輩の反応を見て、部長は明らかに楽しんでいる。前言撤回。やっぱり部長は意地悪な人だ。
「…あっそう。」
さも興味なさそうに言うと、先輩は黙々と作業を始めた。
「どうだった?会ってみて。」
「なんか…思ったより。」
「うん。」
「背が高いなと思いました。」
「そこなんだ。」
また笑いだした部長は放っておいて、私は先輩を見た。
ひょろっとしていて、いかにも美術部なイメージだったんだけど。とか、ファンとか言われたのに何にも思わなかったのかな。とか考えた。なんか、不思議な雰囲気を持ってる人だなというのが、先輩の第一印象だった。
総得点= 153
エピソード得点= 77
場面化叙述得点= 76
72419 私は15歳の春、高校に入学した。
入学して初めてのホームルーム。。。
クラスみんなが一人一人自己紹介することになった。
一人の男の子の順番が来た。
その子の顔の感じ、話し方、雰囲気に、初対面でないように、どこか懐かしいように感じた。
中学校のクラブ活動で交流があったのか、どこか道であったことがあるのか、いろいろな事が頭をめぐった。
しかし、何も思いつかない。名前も記憶にない。
この不思議な感じを抱いたまま、1ヶ月がすぎた。
出来上がったクラス写真を見て母が言った。
その子は3歳まで私と同じ団地に住んでいた。
3歳の時にそれぞれ違うところに引越しをしていたのだ。
3歳という年齢のせいか私は何も覚えていない。
彼も何も覚えていないだろう、と思った。
自己紹介の時の不思議な感情がやっと消えた。
あの時、初めて出会ったのではなく、再会であった。
しかし、私には、別の不思議な感情がめばえていた。
総得点= 128
エピソード得点= 61
場面化叙述得点= 57
イチオシ得点= 10

72488
自分にも似たような経験がありイメージしやすかった!出会ったときではなく、その後で幼馴染だったことに気付くというエピソードが気に入りました。

72420 悪い友人に騙された俺は、借金を背負うこととなった。額は三千万。今日は書類の確認をするために、奴と待ち合わせをしている。日が沈み、夜の帳が俺を包んでゆく。俺は怒りで激昂する気持ちを抑えながら、夜道を急いだ。
奴は小さな工場を持っている。だが、この不景気で経営がうまく行かない。そこで、俺をカモにした訳である。今頃、奴は工場で俺を待ちながら、ほくそ笑んでいることだろう。
工場に着いた。奴は書類の入った茶封筒を大事そうに抱えながらこちらに近づいてきた。
突然、床がぐらつき、足の裏に衝撃を受けた。俺は、バランスを崩し四つん這いになった。「地震や!」奴が叫んだ。轟音と共に周囲が波打っている。俺は転がるように外へ出た。破裂音や地響きが聞こえる。さっきまで存在していた世界が跡形もなく崩れていく・・・。
どれぐらい揺れが続いたであろうか、辺りが静けさに包まれた。眼前の工場は形をとどめることなく倒壊していた。奴は生きているのだろうか・・・。
背後に「火事や!」という声を聞いた。見ると、工場の真向かいの家が燃えていた。その炎はこちらに燃え移るかの如く勢いがすさまじかった。
俺は工場の周りを歩いた。奴が梁の下敷きになって倒れていた。
俺はおそるおそる奴に被さっている瓦礫を除けた。茶封筒が見えた。それを瓦礫の下から抜き取った。
「これで、借金はチャラや」
そう思って奴を見た。驚いたことに奴は目を見開き、俺に何かを訴えるように口を動かしていたのだ。俺は咄嗟に側にあった瓦を拾い上げ、奴の頭部めがけて振り下ろした。今度こそ奴は目を閉じ、ぐったりとなった。額からは血が流れていた。
俺は茶封筒を手に取り、その場を立ち去ろうとした。何かつかえていたものが取れたような清々しい気分になっていた。
その時、視線を感じた。振り返り目が合った。俺は悪寒を感じた。そこには、俺のしたことの一部始終を見ていたと思われる、若い女が立っていた。
総得点= 165
エピソード得点= 74
場面化叙述得点= 71
イチオシ得点= 20

72430
何というか・・・深い、普通じゃない。他の作品とは一味二味違った雰囲気を出しているように感じた。

72481
火曜サスペンスのようなドラマ性に惹かれました。『男女の出会い』をあえて恋愛に絡めないところがおもしろかったです。

72421 「気持ち悪い・・・」
ポケットに入れた携帯を取り出し、今の時刻を確かめる。
表示された時間は1時。予想もしなかった時間に思わず思考が停止する。しばらくして、車のクラクションの音で我にかえった。道路の脇に移動しつつ、明日のことを考える。
「明日は・・・と」
再び携帯を開く・・・
「木曜日……やばい!一限からだ!!」
焦りからか自然と足が速まる。
「こんなことになるなら断るんだった!」
そう自己嫌悪をしながら、さらに歩を速める。
酒とタバコは絶対にしない。そう誓ってたはずだったのに…
今日はサークルの新歓だった。行く前は酒を勧められても断るつもりでいた。けど、いざその時になると断れなかった。そのまま酔い潰れるまで飲まされ、気付けば終電ギリギリ…友人の肩を借りて何とか電車に乗ることができた。そして現在にいたるわけだ。
「あのサークルにはもう行くのやめよう」
酒のこともあるが、あのノリにはどうもついていけない。
その時、急に横から犬が飛び出してきて吠えかかってきた。正直この声は頭にひびく。しばらくして飼い主と思われる女の子が駆けてきた。
「すいません!!」
そう叫びながら目の前までくると彼女は持ってた綱を急いで犬にくくりつけた。僕は「大丈夫です」と言うと再び歩き出した。
「あ、あの・・・」
そう言いながら彼女はついてきた。それに気付きながらも何も反応を示さず、僕は駆け足気味にその場を去った。
それが、僕と彼女の出会い。
総得点= 117
エピソード得点= 59
場面化叙述得点= 58
72422 僕がそのメールを受け取ったのは、今から5ヶ月ほど前のことだ。
高校2年の11月でそれはちょうど17歳の誕生日だった。知らないアドレスでメールが届いた。
件名は「海はありすか?」だった。
海を見たいのですが、わたしの住んでいるところには海がありません。
あなたの町に、海はありますか?
いきなりのメールでごめんなさい。
だが、僕は律儀に返事をしてしまった。
誰へのメールですか?相手を間違えてませんか?
そこまで打ったところで、ふと、イタズラ心が芽生えた。
最後に、こう付け足した。
僕の町には海があるよ。
このやりとりをきっかけに僕達はメル友になった。
相手が唯という自分と同い年の女の子であること、そして来月には僕の高校に転向してくることなどを知った。
そして、唯が転校してくる日になった。約束は、昼休みの屋上だった。
昼食後、ダッシュで屋上に向かった。
彼女よりも先に着いていたかったからだ。
大きく息を吐きつつ鉄製のドアを開ける。
風がビュウと吹きつけてきてきた。
人の姿はない。
時間だけが過ぎ、彼女は現れなかった。休み時間がまもなく終わる頃、ドアが開いた。
唯だった。
柔らかな頬のライン、きれいな二重まぶた、そのまぶたの奥の黒く澄んだ瞳。
とびきりの美人ではないかもしれない。でも、可愛い顔だった。
総得点= 144
エピソード得点= 76
場面化叙述得点= 68
72423 「くっそ,今日はホントにツイてねえな」
いましがたトラックに水をかけられてびしょぬれになったズボンを見て俺は呟いた。
そう今日の俺はホントについてない。ここまで不幸だと逆に気持ちがいいというか,なんというか……。あっ,俺がMだとかそういう話じゃないからな!念のため…
すべての始まりはテレビの星座占いだった。メッチャありきたりだけど。
一位はおとめ座でドベは蟹座。七月生まれの俺はもちろん蟹座。しかも総合運・金銭運・仕事運・恋愛運のぜーんぶがダメダメ。アナウンサーのコメントも散々だった。何が「ラッキーアイテムは茶色のマフラー」だ。そんなもんあるわけねぇじゃねえか!だって今六月だぜ?
でも,俺はあんまり占いとか気にするたちじゃないからね,深刻には思ってなかった。でもその認識が甘かったんだよ。通学途中に生活費が入った財布を落とし,今日が提出期限のレポートを家に忘れ,何もないところで躓いて階段を転げ落ちた俺は昼にはボロボロだった。(精神的な意味でも肉体的な意味でも)
なんかこのまま学校にいても悪いことばっかり起こりそうな気がしてさ。俺は午後からの講義をサボって家に帰ることにしたんだ。だって三限って体育だぜ?この流れでいったら大怪我して下半身不随とかなりかねないだろ。だから俺は友達に金を借りて食堂で飯食って,みんなの「サボり!サボり!」っていうコールをBGMにして帰路についたわけよ。そんで地元の駅まで無事に(電車とホームの間に片足落ちたことを除いて)たどり着いた俺は自転車に乗って家まで走ってた。ここで話は冒頭に戻るんだが…
「くっそ〜あのくそトラックめ。このジーンズこの前買ったばっかだぞ」
ブツブツ言いながらまたペダルを漕ぎだしてちょっと経ったその時だった。突然俺の視界が真っ暗になったんだ。
「うわっ!なんだこれ,前が見えねぇ!」
ガッシャーン!!俺は自転車ごと水路に落ちた。またビショビショだ。
「くそ,痛ってぇな……ん?,なんだこりゃ?」
そういった俺の手が握り締めていたものは茶色のマフラーだった。どうやら風で飛んできたこいつが俺の視界を遮った張本人らしい。
「このくそマフラーめ!!」
そう言ってマフラーをちぎってやろうとしたときだった。
「すいません!ベランダで干してたマフラーが飛んじゃって…大丈夫ですか?あがれます?」
それがその女の人との出会いだった。今日の俺はツイてない。総合運も金銭運も仕事運もダメダメだ。だけどざまあみろ,恋愛運はゼロじゃなかったようだぜ?
総得点= 132
エピソード得点= 66
場面化叙述得点= 66
72424 とある青年は考えていた。
朧げな、どんよりとした不安…。
辛い?悲しい?そんな単純で安直な感情じゃあない。
目に見える世界は灰色。耳に聞こえる音はまるでギターノイズ。
誰かに…逃げ込みたい…。
何一つとして僕の心は動かされず、怠惰で静かな心持。
嗚呼…。なんてつまらない、なんてくだらない…。
こんなホストとも、ロマン主義者とも言い得る心内を誰に言えよう…。
彼は必死だった。彼は恥じていた。こんな自分を誰よりも。
そんな彼の唯一の好きなものは海だった。月並みだがその美しさと雄大さが彼にはたまらなかった。自分との比較ができない程のその大きな存在が彼を安心させた。彼はそんな海をずっと眺めていた。周りの音やモノは次第に遠のき、彼の世界は今、海しかなくなっていた。だんだん、だんだん…海と彼との境界線が分からなくなってしまっていたその時だった。彼の意識はグイイっと明るくなった。
「ごめんなさい…!」
彼はまだボーっとしていた。ただ柔らかく、温かな感触に意識が向いていた。そして漸く、一人の女性が自分の身体と触れ合っているのに気付いたのである。
総得点= 112
エピソード得点= 52
場面化叙述得点= 60
72425 高3になってクラスが一緒になって顔と名前を覚えた。
第一印象は背が高くてスタイルいいなぁって思った。
性格は控えめでおとなしそうな感じ。
クラスでも目立つ存在ではないの男の子だった。
席が近くになっても彼としゃべることなんてなかった。
でも私は知ってる。
仲のいい男友達と話しているときの彼の笑顔。嬉しそうに話す姿。楽しそうな笑い声。
そしてその笑顔は決して彼と仲のいい人数人の男子以外には見せられはしないものであること。
笑うとちょっと目尻がたれて犬みたいな優しい顔になることも。
あの笑顔が私に向けられたものだったらどれだけ幸せだろう。
いつからか私は彼のことを目で追うようになっていた。
ちょっとでもいいから彼と話してみたい。
もちろん彼に話しかける勇気もなく卒業。
ささやかな私の願いは叶わなかった。
4月からは私も大学生だ。
彼はどこの大学にいったんだろう。。。
そんなことをぼんやり考えながら私は大学の入学式の会場に向かっていた。
決められた席に着いたとき私は自分の目を疑った。
何と目の前の席に彼が座っていたのだ!
背が高いために頭が一個分飛び出していてすぐに彼だとわかった。
嬉しさと驚きが頭の中でぐちゃぐちゃになった私は興奮気味にためらうことなく彼の肩をたたき、話しかけていた。
「久しぶり!!!私のこと覚えてる!?」
彼は一瞬目を大きくし驚いた表情になったあと、すぐにあの優しい目尻のたれた犬みたいな笑顔になった。
「覚えてる覚えてる!一緒の大学やってんなぁ!これからよろしくな!!」
総得点= 126
エピソード得点= 66
場面化叙述得点= 60
72427 午前6時50分、それが僕らの待ち合わせ時刻。
たいてい彼女が2分くらい前に到着して、僕は2分くらい遅刻する。
B型の僕は遅刻してきたのにも関わらず彼女にこう言い放つ。
「はよいかな間に合わんで!」
彼女は文句も言わず小走りでついてくる。
後ろからそ〜っと僕の手をつかむ。
なんともかわいい。
こんな、どこか抜けていて、でも実は芯のとても強い彼女との出会いは実は僕自身覚えていない。
聞いた話と僕の不確かな記憶を合わせるとこうなる。
それは小学校2年生のとき。
彼女は転校生としてクラスにやってきた。
今でもほとんどの小学校の友達の名前をフルネームで言える僕が覚えていないんだから相当影の薄い子だったんだろう。
でも、始末の悪いことに彼女は小学2年生のころの僕をはっきりと覚えているらしい。
なんでも僕は、体育のドッチボールで思いっきり彼女を当てて泣かしたらしい。
覚えていないものは覚えていない。
僕の記憶に彼女が登場するのは小学5年生のとき。
ちょっと女の子にも興味がでてきたころだ。
んじゃそのときなんか思ったかというとそんなことはない。
呼び捨てにするか、さん付けで呼ぶか迷ってたくらいだしとにかく彼女は影が薄かった。
では、こんな彼女とどこでどう結びついたのか。
小学校を卒業して、僕は私立へ、彼女は地元の公立へすすんだ。
仲が良かった友達ですら会わないのに彼女と会うわけもなく月日は流れた。
そして、今思えば運命の再会の場である中学3年のときの地元の夏祭り。
そこに彼女はいた。
特に変わっていない、ぽっちゃりとしたかわいらしい顔、おっとりとした性格。
まあ一目惚れかと言われるとそうではないが、不思議と彼女を好きになった。
彼女も僕を好きになってくれた。
中3の夏祭り、これが僕らの本当の出会い。
総得点= 158
エピソード得点= 69
場面化叙述得点= 69
イチオシ得点= 20

72422
現実的で、文章を読んでいるだけで場面が頭の中に浮かんできました

72472

72429 数学 教科書P38〜43
   問題集P48〜62
英語 LESSON3〜7
 
これが、高2の一学期中間テストの範囲だ。
そう、明日は僕の苦手な英語のテストなのだ。
というわけで今僕は学校の図書館で勉強している。
前の席では、テスト前になるとひょっこりと姿をあらわす悪友が、今日もしきりにノートを写している。
一方、後ろの席では女バスの連中がこれまた勉強している。
僕らとは違い至極マジメだ。
「おい、今日もあいつらマジメに勉強なんかしやがってるぞ」
「いや、あれが普通やろ」
こちとらマジメに勉強がしたいのだ。
悪友もそれを感じ取ったのかおとなしくノートを写しはじめた。
僕も苦手な英語にとりかかった。
すると、いつもではありえないことがおこった。
僕の背中になにかが飛んできた。
しかも方向は、あの女バス軍団の方だ。
普段は、あまりしゃべったこともなかった僕にとっては、本当に驚きだった。
平静を装いながらおそるおそる背中に当たったものを見てみると、紙ヒコーキだった。
テスト用紙で作られた紙ヒコーキには女の子の文字で、こう書いてあった。
「よかったら今度、花火にいかへん?」
総得点= 145
エピソード得点= 68
場面化叙述得点= 67
イチオシ得点= 10

72104
テスト勉強の描写がリアルで、あ〜、高校生ってなんかいいなぁ、と思ってしまいます。

72430 しとしと雨が降っている。「あ〜ダルい、眠い」
ある高校3年の日。昨夜はめずらしく遅くまで勉強した。
ボーっとしながら自転車を走らせる。
僕は片手で傘、片手でハンドルを操りながら高校へと続く下り坂を行っていた。
「帰り面倒くさいやんけ〜、早く止めよ〜」
などと思いながらカーブを曲がる。
すると反対側から自分と同じように曲がってきた一台の自転車。
「ちょ、タイム!」 普段なら避けれたかもしれない。
しかし今日は雨。傘のせいでブレーキがかけ辛かった。おまけに滑る。ちょっとした衝撃。
すかさず誤る僕。「すいません大丈夫ですか?」
彼女も同じく「こっちこそ御免なさい。」
「いやいや本当申し訳ないです。」何回か謝り合った。
数日後。放課後の補修に出た時、彼女がいた。
僕には気付いていない。先生の質問にハキハキ答えている。
この前の彼女とは何か違う一面を見た気がした。
補修が終わった後、分からない問題があるフリをして
彼女のところに向かう自分がいた。
「先生に聞いてよ」と突っ込まれませんように、と願いながら。
総得点= 119
エピソード得点= 62
場面化叙述得点= 57
72431 高校に入って初めての夏休みが終わった。
そのほとんどがクラブで潰れて、提出しなきゃならない課題も終わってないが、充実した夏だったと思うことにしている。
夏休み明けのクラスには、懐かしい顔が並んでいる。
自分で言うのもなんだが、俺はクラスでは慕われている存在だ。
(そう思うことにしているだけかもしれないが、ここではそれはおいておこう。)
このクラスにはなかなかのメンバーが揃ったと思っている。
ただ、俺はあいつが嫌いだった。
顔はクラスの中でも1、2を争う美人、勉強も出来てスポーツもできる。
対抗意識というか、無意識にそいつを避けてきた。
なにより、あいつも俺のことを嫌っているはずだ。
目が合う時、あいつはいつも俺を睨んでいた。
だから、まだ蒸し暑い9月のあの日、文化祭の準備を始めたあの日、あいつが俺に話し掛けてきた時、きっと俺はとんでもなく間抜けな顔をしていただろう。
「何か私に手伝えることない?」
というたった一言に。
総得点= 117
エピソード得点= 60
場面化叙述得点= 57
72432
『ごめーん、ありがと♪』
バレーボールが転がってきたから渡してあげた。
高校2年の梅雨の時期…
3日間も降ったり止んだりという雨が続いていた。
その翌日。
久々に晴れた日だった。
少しだけ雲が浮かんでいた。
そんなある日の昼休み…
高校1年のときから存在は知ってた。
あいさつ程度なら交わしたことがあった。
最初会ったときは何も思わなかった。
「元気そうな人だなぁ」ぐらいにしか。
そして2年生の今は同じクラス。
『どういたしまして♪』
そう言ってボールを渡した。
平静を装いながらも胸は高鳴ってた。
あれ?
いつからこんな感じになったんだろう…。
これは……いや、わからない。
でも気になる。
見かけるたびに、すれ違うたびに、話すたびに心が晴れてく。
初めて会ったのは1年前。
だけど今思えば、本当の出会いはあの晴れた日だったのかもしれない。
総得点= 114
エピソード得点= 57
場面化叙述得点= 57
72433 高校二年の春……
高校に入学し、二回目の春……
あの人と同じクラスになった。
「しゃべることはないやろなー」
まずそう思った。
あの人の存在は一年の時から知っていた。
でも、おれには手の届かん人だと思っていた。
バスケ部で、背が高く、目が大きいあの人……
ただのクラスメートから、大切な存在に変わっていったのは、体育会の日。
「リレーおつかれ!足速いな!」って話かけられた。
初めてしゃべったことに驚き、ドキドキした。
あの人もドキドキしていた。
同じクラスで出会ったけど、本当に出会ったのは体育会の日。
総得点= 100
エピソード得点= 51
場面化叙述得点= 49
72434 高校三年生の春。
私はこれから一年間受験生だ。
受験勉強がつらいと先輩から聞いていたから
毎日おびえていた。
仲良くしている先輩が今年の春教育学部に入学した。
私が目指す大学とは違うが、受験するつもりでいた。
そんななか、先輩が
「息抜きに遊びにおいで。」と言ってくれたので
行くことにした。
大学につくと、やはり高校とは違う雰囲気で、
自分が浮いているように思い、妙にソワソワしてしまう。
先輩と食堂に行って昼食をとることにした。
食券を買うために並んでいると、先輩の友達が来た。
自分の知らない人と楽しそうに話す先輩は
自分の知らない人のように見えた。
食券も買い終わって、おばちゃんに渡して待っていると
さっきの友達のうちの一人が声をかけてくれた。
「同いどし?」
「部活の後輩なんです。」
「え?何で来たん?」
「今年受験生で、ここも受けるつもりなんで見学にきました。」
「ふ〜ん・・・」
それくらい話したところでおばちゃんが頼んだものを
持ってきてくれたので、
私は挨拶をして先輩の座るテーブルに向かった。
席に着くと、私は
「あんな感じの人がタイプなんですよ〜。
 なんとなく分かります?スポーツしてそうな感じの・・」
「うん。なんとなく分かるわ〜。」
何気ない会話を先輩としながら食事を終えた。
「ちょっとお手洗いに・・・」私は先輩を残して席を立った。
帰ってくると、先輩は友達のテーブルで楽しそうに話していた。
私が帰ってきたのを見つけて、戻ってきた。
「後輩がかっこいいって言ってたで。って言ったら、
 めっちゃよろこんでたわ〜。」
そりゃあ褒められて誰も悪い気はせんよな。
私はその時それくらいにしか思わず、特に気に留めるでもなく
一日見学して帰った。
家に帰ると先輩からメールが届いた。
「今日言ってた子がメアド教えてって言ってるねんけど
 どうする?受験生やし断ろうか?」
「受験生だけど、なんかもったいないな〜
 深入りせんかったら別にイィよな・・・」
そう思った私はメアドを教えてもらった。
それが彼と私との出会いだった。
総得点= 141
エピソード得点= 78
場面化叙述得点= 63
72437 クラス替えをした新学期。それまで見たこともなく知らなかった彼の名をはじめて聞いた。「へぇ〜、まだまだ知らん人がいっぱいいてるなぁ」っという具合に。
特別彼のことを意識するでもなく1週間が過ぎ、2週間が過ぎ……
彼と楽しく会話したり、何かやさしくされたりすることも一切なかったはずなのに・・・
彼が友達同士でいるときの生き生きとした顔。笑った顔。サッカーしているときのかっこよさ。
気がつけば私は彼ばかりみていた。
出逢いってこんなもんじゃないかなぁ??
総得点= 95
エピソード得点= 49
場面化叙述得点= 46
72439 あれからどれくらいの時間がたったんだろう。ただわかるのは、この電車を見送れば次の電車が来るのは明日、いや今日の朝になるってことくらい。別に何かを期待してたわけじゃない。
だけど動けなくて、動いてしまえばさっきまでのこと全てが本当になってしまいそうで動きたくなくて。
言ってしまえば「現実逃避」。
もう少し自分は強いものだと思っていたのに、そのときになってみないとわからないものだ。いつもの自分がちっぽけに見える。
暗闇の中に消えていく光を眺めた後、短い溜息をつき視線を前に戻した。どれだけここで我慢しても過ぎた時間は巻き戻せはしないし、流れていく時を止めることもできない。それなら、まずはここから離れようと足に力をいれた。その瞬間、目の前を勢いよく何かが通り過ぎた。
「マジかよ。」
次の瞬間、そう呟いてネクタイを緩め膝に手をつく男の人が視界にはいった。
あまりにも突然で、普段なら見過ごす状況なのに、どうしてだか声を掛けてしまった。
「もう、電車、着ませんよ。」
総得点= 132
エピソード得点= 60
場面化叙述得点= 62
イチオシ得点= 10

72460
短い文章なのに、すごくその状況が目に浮かんだ。思わず声をかけてしまった主人公の気持ちがわかるような気がした。以後の展開がすごく気になった!

72440 彼とであったのは、ある日突然朝の体育館前だった。
その日私はいつものように、眠い目をこすり朝練のために体育館の更衣室に向かっていた。
そして角を曲がろうとしたとき、向かいから誰かが来て、「おはよう」と言われた。
私はとっさに「おはよう」と返した。
でもよく考えてみると彼は顔と名前は知っているけど、話したこともない人だった。
私は不思議に思ったが、「まあいっか」と深く考えなかった。
次の日もまた次の日も同じ場所で彼と出会い、挨拶をかわした。
総得点= 105
エピソード得点= 54
場面化叙述得点= 51
72442 あれは暑い夏の日だった。町の中の人々は皆忙しく、町の中に心が休まる時はない‥。その上、その町で生きる自分には将来の目標みたいなものもない‥。そんな退屈で騒がしい日常に嫌気がさして、ぶらりと訪れた知らない町。全くと言っていいほど人に出会わない。そんな殺風景な町並みでさえ、都会の雑踏から開放されたいと思っていた彼女には絶好の場所だった。この町の人は、時間に追われることもなく、幸せそうな笑顔を絶やすことなく浮かべている‥
「自分もこの町にいれば、何か変われるかも‥。いや、変わりたい!!」
そんな気持ちが自分の中に生まれた時、彼女はうきうきした。なぜか心の中が少しだけ晴れやかになった気がした。
そんな時だった。少し遠くに人影が見えた。新しい環境に来て、気持ちが高ぶってる彼女は、その人に声をかけようとした。
「ちょっと‥もしかしてあの人も私と同じなんじゃないかな‥。」
明らかに現地の人ではなさそうな外見。何もかもに嫌気がさしたようなうつろな表情。しかし、その中にも、この町へ来て、何かを感じ、新たな目標を見つけようと希望を持ち始めたような瞳。彼も彼女に気づいた。彼も彼女に対して同じような印象を抱いたに違いない。
二人はお互いに歩みより、言葉を少し交わした。 
これが二人の出会い。新たな町で未来の目標を見つけるべく、新たな生活を始めた男と女の新たな出会いだった。
総得点= 122
エピソード得点= 60
場面化叙述得点= 62
72444 私には彼がいた。
高校1年生のときに彼から急に告白してきて付き合い始めた。
彼は色黒で顔の堀が深く、笑顔を見せたときに見える八重歯が印象的だった。
また彼はサッカー部に入っていてサッカー関係者も注目するほどの腕前だった。
彼のサッカーに対する思いは私以上で毎日練習練習でなかなか会うことができなかった。
それでも私はサッカーをしている彼の姿が好きだった。
ところが3年生の秋、私は好きだったはず彼の思いを受け止めきれなくなってしまった。
ある放課後、急に呼び出されてこう言われた。
「東京に行って本気でプロを目指したい」
彼の意思はすでに固まっていた。
私はこのことに言葉を失ってしまった。
彼のサッカーをしている姿が好きだったのにそれが見れなくなってしまう。
たとえテレビのスクリーンで見れたとしてもそれは今の彼ではなくなるような気がした。
そして私は耐え切れず、彼のいちばん好きだったことによって別れ遠く離れることになってしまった。
それから5年ほど経つ。
私も東京の企業に就職し、OLとして忙しい日々を送っている。
彼の存在は未だ心の片隅に残っていたりする。
風の噂によると、怪我が原因でプロの夢が断たれてしまったらしい。
そんなことを思い返していると偶然彼が道路の向こうを歩いているのをみた。
私は信号を無視して彼に会いに走り出した。
ところが彼の横に女性とその間に小さな子供がいた。
彼はあの八重歯を見せ笑っていた。
私は立ち止まり、少し安心した。
気づいたのだ。
本当に彼の好きだったところはサッカーをしている姿ではなく、幸せそうな笑顔だったことに。
総得点= 170
エピソード得点= 78
場面化叙述得点= 72
イチオシ得点= 20

72427
舞台設定がわかりやすくて読み入ってしまいました!

72483
自分の思いと重なって、感動した。

72445 その日も私は窓の外を見ていた。
退屈な授業。先生の淡々とした講義の声だけが響く。
もうすぐ授業も終わり、と思った瞬間、突如窓の外に人影が!
えっ!!ここ3階やのに!!
と思ったその時、その人影も私に気付いた。
「お騒がせしてまーす」
声は聞こえないが、口の動きは大体こんな感じだったと思う。
それだけ言って、彼は私の視界から消えた。
授業終了後、さっきの不思議な出来事について考えながら歩いていると、さっきの彼が校舎の外で
「あーさっきの!!さっきは驚かせてごめんなぁ。」
・・・よく見たら少しカッコいい。
「いえ、あの・・・さっき何やってたんですか??」
おそるおそる質問してみる。
「あぁ、あれー?校舎使ってロッククライミングの練習しててん。
本間は勝手にやったらあかんねんけどな。」
そういいながら大きな声で笑う。
「・・・ロッククライミング?」
「あ知らん?まー簡単に言ったら自分の手で岩登ってくみたいな感じかな。そーや!よかったらロッククライミング部に入ってみぃひん?
女の人でもやってる人おるし、あんな感じで頑張ったらビルも登れるようになるよ!」
毎日を無気力に過ごしていた私が、初めて何かをやってみようと思った。
総得点= 124
エピソード得点= 68
場面化叙述得点= 56
72447 私には生まれたときからずっと一緒に育ってきた幼馴染の男の子がいた。私のアルバムにはいつも2人で写っている写真ばかりだった。ある日私たちは今までにない大喧嘩をしてしまった。
中学1年の夏彼はお父さんの転勤でそのまま引っ越してしまった。
私はみんなに絶対無理だと言われていた高校に無事合格!!高校1年の入学式。緊張で私はずっと下を見ていた。すると、新入生代表の聞きなれた声が聞こえる。前を見ると彼だった。
私はすぐに話せると思っていた。しかし、そうではなかった。
高校2年、彼と同じクラスだった。ぶつかったらごめん、プリントを配られたらありがとうそんなぐらいしか話せなかった。
彼とどう話せばいいのかわからなかった。
微妙な関係のまま卒業式を迎えた。もう彼に会うこともないだろう。寂しかったが私には何もできなかった。
新たな気持ちで挑んだ大学の入学式。私の隣の席に誰かがすでに座っている。顔を見合わせ共に笑みがこぼれた。彼だった。
新しい何かが始まる気がした。
総得点= 122
エピソード得点= 65
場面化叙述得点= 57
72450 体育祭。最後の種目のリレー。
私の目は一人の先輩に釘付けになった。
最初は自分のクラスを応援していた。
でも気付いたら彼のことばかり応援している自分に気付いた。
彼から目が離せなかった。
それが私と先輩との出会いだった。
総得点= 85
エピソード得点= 42
場面化叙述得点= 43
72451 「すいません…。」
なんとなく呼ばれた気がしてハッと振り返る。
「大阪にはこの電車に乗ればいいんですか?方向音痴なんで。」
僕はうなずき電車に乗り込んだ。
電車の中は平日の昼間だったからか、空席もあった。
僕が端の席に座ると、さっき路線を訪ねてきた人が隣に座ってきた。
髪は肩まであり、ややふくらんだ頬、少しくせ毛で僕の好みに合っていた。
年はおそらく僕と同じだろうが大人っぽくてつい惹きつけられてしまう。
ふとその人は僕に会話を仕掛けてきた。
人見知りな僕は急に心臓の鼓動が高鳴った。
今思うと緊張のあまり何を話したのだろう。
覚えているのはあの甘いシャンプーの香りだけ。
電車から出て出口の方向を教えた。
別れ際に、
「ありがとう、またね」
さりげない言葉だったが、僕は『また』会えたらいいな、ふと思ったりする。
総得点= 121
エピソード得点= 59
場面化叙述得点= 62
72452  彼女の名前はダイナマイトバディー。どうやらドラゴンのすむ「最果ての一軒茶屋」にとらわれているらしい。勇者(自称)である私としてはぜひ助けにいきたいのであるが、最近ニンテンドーDSを買ってしまったせいで金欠だ。基本的装備はおろか、こん棒を買う金すらない。たとえ勇敢なアキレスでも素手でライオンには挑まないだろう。そんな訳でバイトにいそしもうと考えていた矢先、領主から私にダイナマイトバディー救出命令が下った。女が魔物にとらわれているのに勇者がバイトとは何事か!!ということのようだ。さすがにゆったりとするわけにはいかないので、おっとり刀で準備をし冒険に出た。
 最果ての一軒茶屋までは電車で3時間もかかる。近鉄やJRを乗り継ぎなんとか「最果ての一軒茶屋前駅」までたどり着いてもそこからさらに上り坂と380段の階段が待ち受ける。真の勇者でなければたどり着けないという訳だ。むろん私はそれのつもりなのでたどり着くことができた。電車賃と近鉄バス代で1500ルーン(お金の単位)もかかってしまった。
 ドラゴンとの戦いをどう乗り切るかという悩みに絶望的結論しか導けないまま最果ての一軒茶屋に突入したのだが、どうもドラゴンは今夏期休暇を取っているらしくそこにはいなかった。鬼の居ぬ間に洗濯とばかりに私は例のダイナマイトバディーを探したのだが、建物中をくまなく探しても見つからない。1500ルーン損したのではないかと不安になりながら、まだ探していない庭に出てみた。庭は広く、またパラソルがたくさんさしてあり、その下に丸机と椅子が並んでいた。その中の1つに魔法の杖を持っている女性が座っていた。その女性が私に気づきこちらに走りよってきた。見てみると、体つきはまだ未発達と言った感じだが、顔つきの方はそれを補ってあまりあるほどのものだ。ーダイナマイトバディーではないのにダイナマイトバディーか、と妙な気分にとらわれながら私はやさしく話しかけた。
「大丈夫だったかい?」
彼女は激しく答えた。
「朝ご飯だよ!起きな!」
私ははっと目覚めた。目の前にはおたまを持った母が立っていた。
 
総得点= 153
エピソード得点= 70
場面化叙述得点= 63
イチオシ得点= 20

72463
文章の入りから独特で惹きつけられました。

72489
大教が最果ての一軒茶屋という設定や、夢の中での女の子との出会い、またロールプレイングゲームになぞらえて書いてあるところが他の作品と違っていて輝いていました!

72453 今日も夏日。
太陽が温めたコンクリートの地面。
汗が流れる肌に、吹き下ろす風が気持ちいい。
その風に揺られる深緑が涼しげな音楽を奏でている。
通学はいつも山登り。月曜日の一限目ともなると、たくさんの人がこの登り道を上がっていく。学校へ続く道はこの道だけなのだから、仕方がない。
その人々が生み出す流れの最後尾につけるのにはコツがいる。あの赤い電車の一番前の車両に乗ることだ。
一番前はいい。
たいていの人は階段に近い車両に乗る。でも、極力人と会いたくない自分は、一番前がお気に入り。
自分は朝が苦手だ。
でも今日は違った。少し朝が好きになれた。
いつものように一番前の車両に乗り、いつものように最後尾につけ、いつものように前との距離を少しおいて、登り道を歩いていた。今日はいつもより人は少ないみたいだ。
エスカレーターを二つ昇った、少し階段が続くあたり、君を見つけた。自分のちょうど2、3歩前を歩いていた。
こんなに暑いのに、君は涼しげな顔で歩いている。
初めてのはずなのに、なぜだろう、どこかで会っている気がする。
君を見てると心がなごむ。
君を見てると表情がゆるむ。
少しつり目。
きれいな黒髪。
ツンとした表情。
整った爪。
背伸びした足元。
そして・・・
猫背。
伸びたひげ。
とがったキバ。
しなやかなしっぽ。
これが君との出会い。
また明日も会えるとは限らない。だって君は気まぐれだから。
総得点= 170
エピソード得点= 69
場面化叙述得点= 71
イチオシ得点= 30

72110
電車の最前列に乗って、人ごみの最後尾について歩く様に共感し、大教にゃんことの出会いに和んだ。ねこはかわいいなぁ。

72406
視点が独特で、雰囲気もよかったと思います。

72465
人と思ったら実は猫のコトだったっていう発想がおもしろかったです。

72454 初めての塾の日。嫌だって言ったのに・・・
塾なんて入りたくなかったのに・・・
妥協して、それでも個別指導にしてもらったけど、
やっぱり何か気が重い・・・
塾は2階。時間をかけて階段を上る。扉が重い。
扉を開けると「こんにちわ〜」って明るい声が聞こえた。
ちょっと以外だと思いつつ、担当の先生の所へ。
緊張しながらの初対面・・・
先生の自己紹介、笑顔が爽やか。見ていて飽きなさそう、とふと思う。イメージとは全然違う。ガリ勉っぽいのを想像してたもん。
少しずつ顔が熱くなってくるのがわかる。
やばい、こんな筈じゃなかったのに・・・
絶対叶わないのに・・・
もっと早くに塾に入ればよかったって後悔する自分がいるのは
なぜ?
総得点= 115
エピソード得点= 59
場面化叙述得点= 56
72455 ねむい。体がだるい。
昨日遅くまで課題やってたからかな?
足もとがふらつく。
文化祭も体育祭もおわり、勉強一色に染まっていく学校。
別に学校がたのしくないわけじゃない。
友達もいっぱいいて、むしろたのしい。
たのしいんやけど…
なんか毎日がしんどくて、頭がずっとおもいまま。
「はぁ・・・・・・」
なんで最近溜息しかでえへんのかな。
「「だる・・・・・」」
・・・・・・・・?
声がかぶった、その相手と目が合う。
相手はおない年くらいの男の子。
ちょっと幼いくらいかな・・・?
「ははっ。お互いがんばらなな!」
にかってわらう笑顔。かわいいな。
なんか人懐っこいひとやな。
「うん」
つられてわらってしまう。
「「・・・・・ぷっ」」
なんだかおかしくなってふたりでわらった。
これが彼との出会いだった。
たまに一緒に学校にいくようになった。
この日を境に、学校への足取りは自然とかるくなっていった。
でも、出会わなければよかったのかもしれない。
彼の隣りにはいつもかわらず、
もう一つの笑顔があったのに。
総得点= 139
エピソード得点= 67
場面化叙述得点= 62
イチオシ得点= 10

72450
目が合ってお互い笑うとこにもドキドキしたし彼には彼女がいるという切なさも何か良かったです。

72456 春、新学年、新しい顔ぶれ、男女もまた恋をしやすい季節である
はずだが…ボク末シュウジは何の出会いもないまま夕焼けの綺麗な秋をむかえていた
そんな秋の放課後…
ボクは親友のタカシとはずれくじである図書委員の仕事をこなしていた
今日で五回目の仕事だけあって真剣にすべき所、手を抜くべき所は心得ていた
また何もないつまらない仕事のはずだった…
いつも金曜日の放課後に古典文学を借りに来る女の子がいた
名札から一つ年下だろうか
その細い髪、細い指、そして貸し出しのときの細い声がどことなく好きだった
つまらない仕事の中で唯一の楽しみといっても過言ではなかった
そういうことには敏感なタカシだ
「お前いっつもあの子ばっか見てるよなぁ」
笑いをふくんで言ってくる
「そうか」
知らないようなふりをしてみた、というかあまりに的中していたので驚きと焦りでそんな言葉しか出なかったのだ
「次に借りに来るときに話しかけてみろよ」
「ばか」
そんなことできたら、もうやってるよと思っていた…
そのときだ
「あの〜すみません」
あの子の声がした
「あ、はい、貸し出しですね」
平然を装えていたかはわからない、でも必死に平然を装っていた
「では、薫さん返却日は来週の…」
「えっ…」
彼女の声で混乱し、また我にかえった
そう、彼女の名は薫という
名札を見て知っていた
一瞬頭が真っ白になっていたとき、タカシが口を開く
「いっつも難しそうな本を読むよね〜えらいな、君は。シュウジが名前を覚えるぐらい惚れこむわけだ」
「バカ」
間髪を入れてなかった
「いつも借りに来る常連さんで、その…」
うまい弁解もできずに口ごもる
「仲良いんですね」
笑いながら彼女は言った
「返却日は来週の金曜日ですよね、シュウジ先輩」
「えっ…あっはい」
またまた驚きだ
「じゃあまた来ます」
小さく一礼をして彼女は去っていった
夕焼けの光がさしこんでいた
総得点= 147
エピソード得点= 74
場面化叙述得点= 73
72459 青い青い夏。
入道雲が見守る空の下で、僕は君に出会った。
セミが夏を彩るよう・・・というよりかは、やかましく鳴き続ける道路沿い。
僕は講義に遅れそうで、自転車を必死に進めていた。
太陽は、こんなにも頑張っている僕にさえギラギラと輝き、
アスファルトの道には陽炎がゆらめいてる。
・・・遅れて行ってしまおうかな・・・。
そんな考えが頭をよぎる。
・・・どうせ損するのは自分なんだし。
・・・だって寝坊しちゃったし。
言い訳は続々と浮かぶけど、サボってしまう決意もできず、電車に飛び乗る。
・・・講習会1日目から遅刻とか・・・やっぱ印象悪いだろうなぁ・・・。
講義のパンフレットを見返す。
と。
正面に座っている女の子と目が合った、と思った。
女の子の手元を見れば、同じパンフレット。
・・・遅刻仲間かな・・・?
一度意識しだしたら、どうにも気になってしまう。
同じ道を歩くだろうに、無言で歩き続けるのも、気まずい。
2mもない距離が、ひどく遠く感じる。
彼女はそのうち、うつらうつらと眠り始めた。
僕も、ぼんやりと彼女の後ろの窓を眺める。
・・・夏だなぁ・・・。
そんなことをとりとめもなく考えていた。
・・・あと、一駅だな。
僕が大きく伸びをした時、
彼女が少しあわてて目を覚ます。
・・・って、え?あれ?そこ、一駅早いって!
僕は思わず声を出してしまった。
「まだだよ。降りるの、次」
彼女はひどく驚いていた。
・・・そりゃあ、僕だってそんな大きな声出ると思わなかったし・・・。
・・・僕自身が一番びっくりしてるし・・・、あぁ、もう。
声をかけたはいいが、その後の対応に困っている僕に向かって、
彼女はとても素直に、こう言ってくれた。
「ありがとう」
どこかでまだセミが鳴いている。
太陽がギラギラ照りつける空の下で、
僕は君に出会ったんだ。
総得点= 167
エピソード得点= 74
場面化叙述得点= 83
イチオシ得点= 10

72486

72460 黄昏時、いつもの帰り道を君と歩く。少し前を歩く、君が呟く。
「きょうは疲れたね」
うん。そうだね。本当に疲れたなあ。でも、表情は見えないけど声からすると、君はあまり疲れてないみたいだね。
「あしたは何しようか」
う〜ん、そうだね・・・何でもいいな。君とだったら何だって楽しめる気がする。笑ったり、泣いたり、怒ったり、喜んだり、…いつだって同じ表情をしない君だから、君が持つすべての表情を見てみたくなるんだ。
君が振り向く。
夕日が眩しくて、思わず目を細めてしまう。
・・・見えない。君が見えない。きみがみえない。
何か君が言っているのがわかる。
聞こえない。きみのこえがきこえない。
待って。
だんだん遠くなっていく。きみがはなれていく。
離したくなくて、離れたくなくて、必死に自分の手を伸ばした。君を掴んだと思った手は、虚空を掴んだ。
目を開けると、そこには古ぼけた天井。隅の方には蜘蛛の巣がかかっている。呆然としていると、額につめたいものがやさしく触れた。
「どうしたの」
きみだった。目頭が熱くなって・・・にじんだ視界の中に、ぼんやり見える。
やっと・・・会えたね。
総得点= 131
エピソード得点= 61
場面化叙述得点= 70
72461 大学に入学して、サークルにも入り、サークルの初飲み会。
最初はとても楽しくて、お酒も美味しく感じた。けど、お酒がどんどん入ると、酔ってきてだんだん気持ち悪くなってきた。それでもお酒を飲み、終いには記憶が飛んでいた。
気付いたらまだ顔も名前も知らない先輩にもたれかかっていた。なんでこんな状況になっているのか分からず頭の中が混乱していた。
先輩も目が覚めて「おはよう。」と言った。私も「おはようございます。」と返した。
先輩に私の記憶がないところを聞いてみると、先輩が酔って気分が悪くなった私を介抱してくれてたらしい。先輩もまだ私のことを知らなかったらしい。
この日から先輩と徐々に仲良くなり始めた。
この日が私と先輩の出会い。
総得点= 102
エピソード得点= 49
場面化叙述得点= 53
72463 高校1年の体育祭
6月という早い時期に体育祭なんて・・・
まだクラスも仲良くなってなかった。
とりあえずクラスの子が出てる競技は応援。
暑さの中ダレてきた昼前。
午前の部最終競技の棒引き。
「午前中最後らしいから応援しよやぁ」
とゆう友達の一言で応援席に。
棒引きが始まって私は一人の人に釘付けになった。
一際目立つ身長。
闘志あふれる勢い。
「あの人ダレ??」
思わず友達に聞いてしまった。
「あのクラスTシャツは3年生やで!!」
3年生かぁ、関わる事はないな。
心の中でそう思った。
体育祭が終わり、部活に励んだ夏休みも終わり、そろそろ文化祭の準備に取り掛かかろうとしていた時だった。
突然友達が「なぁ〜体育祭の時の3年生覚えてる?」といいだした。
「あぁ〜あの一際輝いてた人??」
「そう!!あの人モデルやってるねんてぇ〜」
「ありえん!!うちの学校でモデルとか」
そう、私の学校は一応進学校。
モデルなんて仕事が当然許されるわけがなかった。
「本間やってぇ〜」
友達が1冊の雑誌を取り出し私に見せてきた。
そこには棒引きで一際輝いていた先輩が微笑んでいた。
世界が違う。。。
それから少しして文化祭が始まった。
実行委員で金券委員だった私は3年生の金券担当の人と仕事をすることに。
「3年1人足りひんやないか!!」
先生が怒っていた。
私はその横で黙々と仕事をしていた。
「遅れてすみません!!」
1人の人が入ってきた。
顔を上げて見て見ると・・・
なんとあの先輩!!
近くで見れたことに喜んでいた私の横で先生が一言。
「遅いやないか!!お前はこの1年生と一緒に仕事せぇ!!やり方は1年生に聞けよ。」
この1年生・・・
そうそれは私。
まさかあの先輩と一緒に仕事出来るなんて!!
これが私と先輩の出会いだった。
総得点= 118
エピソード得点= 64
場面化叙述得点= 54
72464 『ありがとう』あの人に伝えたい。『親友』として新たに出会えたあの人に・・・
 
私は彼が好きやった。めちゃ好きやったから、別れよう言われたとき、「分かった」言ってもてん・・・重い女やって思われたくなかった。うちの気持ちのほうが明らか大きいんわかってたから・・・。「まだ好き」って伝えることができへんかった。
あれから彼とは会ってない。高校離れてそれぞれ別々の人生を歩んだ。でも私の中には彼がいた・・・
高校一緒やったら別れんですんだんかな・・・ふとそんな考えが頭をよぎる。いや、でももし彼がうちの高校来てたらサッカー続けることできへんかった。やからあの人は今の高校行ってよかったんや。うちの学校は進学校で勉強ばっかやったから・・・私はあの人からサッカーを奪いたくなかった。これでよかってん。これで・・・
1年くらいたったころ、突然、同窓会の知らせが来た。
彼も来た。肌をこんがり焼いて、真っ白な歯を輝かせていた。
『ああ、やっぱりこの人からサッカーを奪わなくてよかった』
心の底からそう思った。男友達に嬉しそうにサッカーを語る彼。そうだ、わたしは、好きなことに夢中になる彼が好きだったんだ。
私は彼のところへいき、「久しぶり」と声をかけた。正直不安やった。もしかしたら、まだ彼が好きやから声かけれないんちゃうかなあって・・・。
でも普通に彼と話せてる自分がいた。自分でも驚いた。
もう大丈夫。私はもう彼に未練があるんじゃあない、思いを伝えきれなったから引きずってただけだ。そう確信した。
このとき別れてから初めて彼と「いい友達」として出会うことができた。もう彼を「過去の人」にすることができた。
彼に『ありがとう』を伝えたい。こんなに人を好きにならせてくれたことに感謝したい。
『ありがとう』、そしてこれからはいい友達としてよろしく。
私とあの人との、『親友』としての新たな出会いである。
総得点= 155
エピソード得点= 79
場面化叙述得点= 66
イチオシ得点= 10

72418
ひとつだけ恋愛が終わった男女の出会いやったから印象的でした。

72465 俺は高校でキャッチャーをしている。
バッテリーを組んでいるのは、4番でキャプテンの男だ。
彼はもうプロのスカウトに注目されており、春のセンバツ以来全国の女子高生の黄色い声援を浴びている。
一方俺は、そんな彼にタオルを渡し、お茶を渡し、遠征のときに相手校の女の子から差し入れやファンレターを貰ったと思えば、「彼に渡しといて」と言われる始末だ。
そして俺の最後の大会、夏の甲子園。俺たちは優勝した。
表彰式でメダルを首にかけてもらった時に、メダルと一緒に女の子が俺に手紙を渡した。
またあいつにかと思いつつ、手紙を受け取った。
「あなたが彼をリードしたから、あなたが彼の裏で地道に努力したから、あなたのチームは優勝できたんだと思います。あなたのそんな姿、とってもかっこよかったです。」
自然と涙が出てきた。甲子園優勝の涙とはまた違った、幸せの涙だった。
総得点= 133
エピソード得点= 69
場面化叙述得点= 64
72466 高校2年の夏だった。毎朝自転車を猛スピードで走らせ学校まで通っていた。いつも遅刻ギリギリだった。
学校までの道の途中大きな交差点を一つ越えなければならない。僕はたいてい赤信号は無視して渡る方だが、この信号だけはさすがの僕も止まらないわけにはいかなかった。
僕がこの交差点を渡るのはいつも決まって8時15分過ぎ。そして毎朝決まって同じ時刻に僕とこの交差点ですれ違う女性がいた。ぱっと見て20歳前くらいだろうか。特別美人な顔立ちではなかったが、なぜか僕の目を引いた。
そんなある日、朝からひどい雨で、僕は傘をさしながらいつも通り必死で自転車をこいでいた。雨のせいもあって僕は遅れ気味だった。いつもの交差点にたどり着いた時には青信号はすでに点滅していた。僕は急いで交差点に突っ込んだ。
・・・その時僕の自転車はきれいにスリップした。僕は派手にこけた。傘は飛び、荷物も吹っ飛んだ。
「大丈夫ですか??」
そのか細い声に顔をあげると、いつもすれ違う彼女が色白な細い手で傘をつかみ、僕に差し出していた。
それが、僕と彼女の出会いだった・・・。
総得点= 116
エピソード得点= 56
場面化叙述得点= 60
72468 「うわぁ最悪やもぉ・・・」
めずらしくクラブの朝練のため自転車で早めに学校に向かうおれ。
「チェーン外れてもぉてるやん・・・せっかく早起きして家出たのに、これじゃあ10分も練習できへんし・・・」
落ち込みながらも為す術もなくひたすら自転車を手で押していた。
そのとき、
「どうしたん?」
下げていた顔をふいに上げて見てみると、そこにはクラスは一緒だが今まであんまりしゃべったことのなかった女子がいた。
「チェーン外れてん。」
声に出してからちょっと無愛想すぎたかなと思うおれ。
「ふーん・・・」
「お前も朝練やろ?先行ってていいよ。」
うん、これはなかなか普通に回避できたやろ、と変に納得してたんやけど、
「いいよ、一緒に行こ。」
「へ?」
思わず声に出してしまった・・・変な奴、自分まで朝練遅れてまうやん・・・
・・・けど、気遣ってくれてんのかな、案外いい奴なんかも・・・。
「・・・ありがとぉ、ほな行こか♪」
それからというものよく朝練に行くようになり、なぜか通学途中彼女を探してしまうおれがいた。
総得点= 120
エピソード得点= 64
場面化叙述得点= 56
72469 特別に仲が良いわけではないけれど、僕には気になる女の子がいた。学校でその子を見かけない日はなかった。彼女は、仲が良いわけではないこの僕を見かけるといつも優しく微笑みかけてくれた。僕が元気な時も元気がない時も彼女は僕に微笑みかけてくれた。その笑顔を見ると、僕は優しい気持ちになることができた。そんなある日、彼女も受けている授業のときに彼女は来ていなかった。いつも見ていたはずの笑顔をその日は見ることができなかった。心にぽっかりと穴が開いてしまったような気がした。彼女を見かけない日がなかったのではなくて、僕は無意識のうちに彼女を探してたことに気づいた。話すことはないけれど、彼女の何かに惹かれてて、いつの日からか僕の心に彼女がいた。彼女が僕を優しい気持ちにしてくれたように、僕も彼女にとってそんな存在になりたい。心の底からそう思った。運命的な出会いってこういうことなのかな・・・。 総得点= 113
エピソード得点= 56
場面化叙述得点= 57
72470 自分で言うのもなんだけど、僕は人より出会いが少ない気がする。
むしろ今までの人生で「出会い」と呼べるような出会いがない。まったく、不幸な人生だ。
ちなみにここでの「出会い」とは、男女における、いわば「運命的な」ものとする。
しかしまぁ、今はそんなことを考えている場合ではないわけで。
僕は今、バス停に向かって全力疾走しているところなのである。
それが過去形になるには、もう少し時間がかかりそうだ。
バス停まであと300m・・・
曲がり角から女の子が飛び出してきた!
すんでのところで避ける。
バス停まであと200m・・・
「遅刻遅刻ー!」
パンをくわえた女の子が走っている。
くわえながら喋るという芸当に感心しながらも、ぶつからないように気をつける。
バス停まであと100m・・・
目の前の女子高生がハンカチを落とした。
素早く拾って、「ハンカチ!!」
驚いて振り向いた女の子にハンカチを押し付ける。
バス停まであと50m・・・
「めがね、めがね・・・」
「後ろに落ちてるよ!」
そんなこんなで、何とかバスには間に合った。
バスの中で息を整えながら、溜息をつく。
ああ、今日も出会いとは遠い、何の変哲もない1日になりそうだ。
なんてことをバスに揺られながら考えていると、
「あの・・・大丈夫ですか?」
声と同時に、涼しい風。
振り向けば、小柄な女の子が、そこら辺で配られているようなうちわで僕を扇いでくれていた。
「暑そうですね・・・」
言いながら、彼女は扇ぎ続けてくれる。
こういうときは何て言うんだろう。「ありがとう」?「どうもすいません」?
とりあえず両方言って、ついでに頭の中で前言撤回しておこう。
今日は、いい日になりそうだ。
総得点= 133
エピソード得点= 65
場面化叙述得点= 68
72471 ついにやってきたこの日。
そう。
今日は席替えの日。
僕には密かに憧れている女の子がいる。
同じクラスの女の子だ。
学校が始まってまだ1カ月程度。
彼女とはまだ一度も話したことがない。
僕はドキドキして話しかけることができない。
今日の席替えで席が隣同士になったら話しかけよう。
そう心に決めていた。
そして運命の席替え。
不幸なことに彼女とは程遠い距離。
彼女は僕以外の男の子と楽しそうに話している。
半ば嫉妬。
半ば諦め。
僕が彼女と話す機会もなくこの日のホームルームは終わった。
が。
この日はまだ終わっていなかった。
みんなが帰った教室。
僕は忘れ物を取りに一人で教室に戻る。
彼女がひとりだけで教室に残ってないかな。
そんな淡い期待を抱きつつ。
教室に戻ると…
やっぱり誰もいなかった。
彼女がいないのはわかっていた。
落胆しつつ忘れ物を探す。
「あれ?机に入れておいたのにな…」
自分の声が虚しく教室に木魂する。
その時。
トントン。
誰かが僕の肩を叩く。
振り向くとそこには…
満面の笑みで僕を見つめる彼女が。
「やっぱり帰ってきたか」
彼女は意地悪そうに言った。
「これでしょ?探しものは」
彼女の手には僕の探し物が。
だがそんなものはどうでもよかった…
総得点= 147
エピソード得点= 70
場面化叙述得点= 67
イチオシ得点= 10

72432
誰もが経験のありそうなことが再現されていて、共感できた。

72472 「今日もあの猫おるかなー?」
いつもの日課。公園にいる猫に餌をあげにいく。
「あっ、おった!!」
猫はいつもの場所でちょこんと座っていた。
「ほーれ、ほれほれ。おいしいぞー。」
そう言って餌を差し出す。しかし、猫は食べようとする気配はない。
普段ならすぐに駆け寄ってくるのに。
ずっとこっちを見つめている。
「にゃー」
てくてくてくと歩いていってしまった。
「どこ行くんよー!!今日は食べへんのかぁ」
猫はこちらを振り返り、もう一度鳴いた。
左右に揺れている尻尾がこっちにおいでよと誘っているように思えてきた。
猫はかまわず歩いていく。
「よしっ!!面白そう」
この後何の用事もないし、猫を追いかけてみることにする。
猫は民家の庭へ一直線に入っていった。
恐る恐る木と木の間から見てみると、窓によっかっかって本を読んでいる男の子がいた。
「あっ!あの子は・・・」
いつも教室の窓際の席で本を読んでいる子だった。
隣で男子が騒いでいるにも関わらず一緒に遊ぶ気配もない。
他のクラスメイトと喋っている所も見たことがなかった。
私を含めクラスの皆は、そんな彼の印象は、近寄りがたく謎な存在だった。
「おっ、ミー子じゃん。」
猫がすりすりしに行くと、読んでいた本を置いて猫を上に持ち上げた。
「はじめて笑ってる所見たわぁ。」
「あっ・・・」
あまりに笑顔が見れたことが衝撃的で思わず声が出でしまった。
彼は気まずそうにしながらも教室にいるときとは違った優しい雰囲気が漂っていた。
「お前も猫好きやったんや。」
思わぬ反応。そして、笑顔での会話。
普段、教室でクラスの誰にも見せなかった顔。
彼の笑顔は私だけに見せた特別なもののように感じられた。
そして、誰にも見せたくないと思ってしまっている私がいた。
総得点= 134
エピソード得点= 72
場面化叙述得点= 62
72473 俺たちの出会いはいつのころだったんだろう…?
俺たちは,隣同士の家に一日違いで産まれた幼なじみ同士だ。親たちは,この一日違いで産まれた二人に『怜央』と『麻央』と名付けた。そろいの名前をもった二人は,まるで双子のように育てられ,なにをするにも,どこへ行くにも一緒だった。はじめてハイハイができた日も,はじめて立った日も,はじめてことばをしゃべった日も,いつも二人でいた。春のお花見も,夏の海水浴も,秋の栗拾いも,冬の雪だるまも,二人の思い出だった。
五歳の秋。なんの前触れもなく,麻央は,俺の前からいなくなった。親の転勤だった。しかし,五歳の俺にそんな大人の事情がわかるはずもなく,麻央がいなくなった,いつもと違って静かな部屋をぼ〜っとながめるしかできなかった。ぼ〜っとしている俺に親は,小さな黒いピアスを一つ渡した。もうかたっぽは麻央がもっているらしい。いつも一緒だった二人を離れ離れにするのを気の毒に思った親たちからのせめてものなぐさめだった。そこで,母さんは一言言った。「これをもってたら,また麻央ちゃんに会えるよ」俺は,小さなピアスをぎゅっと握った。
高二の春。俺は,昔ずっと一緒にいた女の子の存在を忘れかけていた。鮮明だった思い出もどんどんはっきりしないものになっていた。しかし,あのピアスだけは,いつでもつけていた。ふいに,手が右耳にいってしまう。遠い記憶となっても,これだけははずしてはいけない気がしていた。はずせなかった。母さんが言ったあのことばを信じていたんだろうか…?ただ信じていたかっただけだった。俺は,自分でいうのもなんだけど,少しはモテた。しかし,俺は,そういうことがよくわからなかった。好きだとか,つきあうとか,実際興味がなかった。毎日がたんたんと流れていった。
高二の夏。いつもと同じように一限を十分ほど遅刻。遅刻なんて何の気にもならない。いつもと同じように後ろのドアから無言で入る。しかし,何かいつもと違う。まだ授業がはじまっていないようだ。前に担任ともう一人誰か立っている。ん………?顔をあげた彼女から目が離せない。動けない。時間がとまっている。はじめて女の子をかわいいと思った…。見慣れた小さなピアスが彼女の左耳に光る。それはまぎれもなく俺の右耳に光るのと同じピアス。そろいの名前をもった二人は,そろいのピアスをもって,再び出会った。
つづく…
総得点= 191
エピソード得点= 77
場面化叙述得点= 74
イチオシ得点= 40

72107
せっかく"出会い"の話やから、胸にグッとくるようなのがいいと思ってました。その点で行くと一番来たのはこの作品でした。

72466
そろいのピアスでつながってるとかステキですね。

72471
おもしろかったです。

74213
幼馴染との恋とかありそうであんまないのが良かったです♪

72477 出会いはキャバクラだった。
こいつしかいねぇと思った。
ボクは写真を見て真っ先に指名した。
そして、5分後登場した美女に、ひたすらボトルを開けた・・・
湧き上がる数々のコール。
気が付くとボクはその日250万円使っていたのだった・・・
そして翌週、貯金が尽きる。
それでもあの店に通う。通い続ける。
あの子に会いに行く。
始まった借金生活。逃亡の日々。
それでもあの子に会いたい。ただただ会いたい。
総得点= 102
エピソード得点= 53
場面化叙述得点= 49
72478 脂ぎった酔っぱらいのオヤジ達で繁華街がごったがえす頃、私はひとり隅の公園でたばこを吸っている。時刻は午前0時をまわっている。普通の高校生なら、明日の予習に躍起になっている時間だろうか。でも私はまだ帰らない。帰る場所なんてないから。
私はこの春高校生になったばかり。めでたく誰もが知っている有名私立の進学校に合格した。私自身も周りの人間も満足していた。新しい友達、初めての電車通学、バラ色の高校生活・・・・・。胸を弾ませたのは入学から1ヶ月の間だけだった。
いきなり親が離婚した。前から私が高校生になったら離婚するつもりだったらしい。そんな話は聞いてなかった。家族がバラバラになった。成績も落ちた。平均点以下が並ぶテストの結果を見て唖然、プライドをズタズタにされた気がした。友人関係も上手くいかない。周りはみんな金持ちのお嬢様ばかりで、私とはとてもじゃないけど釣り合わない。
髪を染めた。もちろん、校則違反だ。オシャレがしたかったわけじゃない。ただ母に叱って欲しかった。片親で仕事に明け暮れてても私を見ていると。でも、見向きもしなかった。化粧もしたし、ピアスも空けた。それでも、なお・・・・・。そんなだから成績も下がる一方だし、友人関係はさらに悪化した。一人だけの世界にいるように感じた。
今日も私は公園でたばこを吸っている。一見にぎやかだけど、ピークを過ぎると潮が引いたように静かになるこの場所は私に似ていた。
真夜中の4時に帰宅。玄関のドアを開けようとしたとき、
「どこ行ってたの?ずいぶん遅くまで。」
聞き慣れた声に反応した。隣に住む幼なじみのアイツだった。
「うるさいなあ。」とすぐに反発。
「おまえ最近変わったな。だいじょうぶか?」
「何言ってるの。大丈夫に決まってる。」
「そっか、おまえなんか大変だったな。」なんだかアイツが少し大人に見えた。別人と初めて会っているような錯覚さえした。
「別けわかんないよ、私元気だし。それじゃ。」とドアを閉めた。
閉めたとたん涙が頬を伝った。久々のうれし泣きだった。私を最後に見ててくれたのはアイツだった。私の居場所をやっと見つけた気がした。その日から幼なじみのアイツは、一人の男性に格上げになった。私たちは今再び出逢ったんだ。
総得点= 151
エピソード得点= 75
場面化叙述得点= 66
イチオシ得点= 10

72109
彼女の辛さ,そして喜びがひしひしと伝わってきた。率直に心に響く良い作品だった。

72479 毎朝翼はとても早い時間のバスに乗る。  
朝が弱い翼は毎朝そのバスに駆け込んでいる。
もちろん会社に遅刻しないため、というのが一番の理由だがもう一つ理由があった。
それはある人に会うことだった。
その人は女性で翼が最寄のバス停を6時57分に停車するバスに毎日乗っているようだ。
その女性は古風の美人でいつも音楽を聞きながら目をつぶっている。
同じバスに乗っている時間は翼にとってただの通勤時間ではなかった。
翼は毎日少しでも彼女の近くにいようと努力した。
しかし勇気のない翼には話しかけたり名前をきくことなど出来るわけがなかった。
そして月日は流れ、翼が話しかけようと決心した次の日から彼女はそのバスから消えた。
転勤になったのか出社時間が変わったのか、それとも死んだのか
‥‥‥
何もわからない翼はただただ祈った、再び会えることを‥‥たとえ遠くから見ているだけだとしても‥
しかしその後翼が彼女に会うことはなかった。
二度と‥‥‥そしてまた翼の何の変哲もない生活が始まる。。
総得点= 115
エピソード得点= 56
場面化叙述得点= 59
72481 小学校の同窓会
みんな6年前とは外見はすっかり変わっていて
でも中身は全く変わってなくて
すごく懐かしい感じ
温かい感じ
私の大好きな感じ
でもあいつがいない
6年間ずっとクラスが一緒で
いっつもあほな話で笑いあって
何でも話せた
大切な人
中学校に入る前
家の都合で急な引越し
『また遊びにきてよ』
『おう、いったるわ』
それが最後
あれから何も音沙汰なくて
忘れられたんかって思った
すごく…悲しかった
“失ってから初めて価値がわかる”
って歌の歌詞かなんかであったけど
こんなに実感するなんて思ってなかった
こんなに辛いって思ってなかった
こんなに好きなんて思ってなかった
“こんなんわからせんといてよ”
その時
『久しぶり』
振り向いた瞬間人差し指がほっぺたにあたる
『ひっかかった♪お前に会うのめっちゃ楽しみにしててんで』
あほ
うちの方が何十倍も楽しみにしてたわ
だって好きやもん
総得点= 169
エピソード得点= 79
場面化叙述得点= 70
イチオシ得点= 20

72473
最初,同窓会の設定はありきたりかなぁって思ったけど,『こんなに実感するなんて思ってなかったこんなに辛いって思ってなかったこんなに好きなんて思ってなかった“こんなんわからせんといてよ”』ってところで,なんかせつなくなってぐっとつかまれて, 『あほうちの方が何十倍も楽しみにしてたわだって好きやもん』 ってところで,その素直な想いにこれやぁって思った。あほっていうセリフに,同窓会での再会のちょっと照れくさい感じがリアルにでて,めっちゃよかった。

74214
すごくこっちがドキドキする書き方で,読んでて続きが気になりました。

72483 AM6:30 朝のランニング
これは,私の日課だ。毎朝同じ時間に起きて,新鮮な空気を体いっぱい吸い込んで,風と一緒に走る。
私のマンション→河川敷→近所の学校のグラウンド→商店街→30度の上り坂→丘の上。これが私のランニングコースだ。
この時期の朝は涼しくって,走りやすい。汗もそれほどかくことはない。
私は一人で走るのがすきだ。途中で誰かに会ったり,人混みをよけて走るのは嫌いだ。自分のペースで,何も気にすることなく走るのがいい。
朝の川の流れを見ながら,今日の1日をイメージしてみる。今日はどんな1日になるんだろう。
商店街を走っていたら,どこからか足音が聞こえてきた。
だあれにも会いたくないな…
どんどん足音が近づいてくる。少しピッチをあげよう。今日は体が軽い。どんどんスピードをだす。
上り坂まで来た。足音が消えた。これでゆっくり走れる,そう思っていたら,また足音が聞こえてきた。
今度は,息づかいまで聞こえてくる。
何?何??何!?
だんだん近づいてくる。こうなったら,坂ダッシュだ。私は思いっきり坂を駆け上がった。それでもまだ追いかけてくる。後ろにつかれた。さらにダッシュする。私はぐんぐん離していった。
坂を登り切ったら,さすがに疲れていつもの丘の上の石の上に座り込んだ。
すーっと,爽やかな風が吹いてきた。丘にはえている草木がゆれて音を出す。
さっきの人はいったい誰だろう。あの人も毎朝はしっているのかな。どうして追いかけてきたんだろう…
「おはよう」
びくっとした。うしろを振り向くと,ランニングシューズをはいた青年が,額に汗をかいて私のほうを見ている。
「おはようございます」
とりあえず,言ってみた。
「気持ち良さそうに走るね。僕も,走るの好きなんだ」
「…」
なんて言ったらいいのかわからなかった。そのまま,時間がすぎた。そろそろ帰ろう,そう思った。
「じゃあ,私はこのへんで」
走り出そうとしたとき,
「また会えるかな?」
 
えっ!?…よくわからないまま,走りだした。
帰り道。誰にも会わなかった。それなのに,ペースがくるう。
AM 6:30
いつものコースにしようか,少し迷った。やっぱり,いつものコースを走る。
商店街にさしかかった。
足音が聞こえてきた。
今日もレースが始まる。明日も,明後日も,ずっと…
恋というスタートラインを今,スタートしている。
総得点= 171
エピソード得点= 72
場面化叙述得点= 79
イチオシ得点= 20

72419
青年と出会う時の感情、状況がよく表現されていると思いました。ランニング中の出会いが新鮮でした。

72479
さわやかな朝の雰囲気がいい!!青春を感じるし少しドキドキしました。彼についての文章がもう少しあってもよかったかなとは思いますが‥‥

72484 よし、ピッタリ7時15分。
1,2,3,4
今日、彼は1時間目が体育で、そのときはこの電車に乗るハズで、この電車に乗る日は・・・そう、ピッタリ7じ15分にここを通るはずなのだ。
1,2,3,4
コツ、コツ、コツ、コツ・・・
近づいてくる彼の足音。
コツ、コツ、コツ、コツ・・・
私は一生懸命タイミングをはかりながら、駅の階段をのぼる。
1,2,3,4
のぼりきった階段の上で私は彼を見つけて、彼に気づかれないうちに小さく深呼吸する。
『おはよう!!』
『あ。おはよ。』
彼にとっては週に1度の偶然の出会い。
でも、私だけは知っている。
これが仕組まれた出会いだということを。
さぁ、今日もいい1日になりそうだ。
総得点= 153
エピソード得点= 69
場面化叙述得点= 64
イチオシ得点= 20

72404
ストレートな表現に端的なストーリーで、話が伝わり易い。話の落ちの軽やかさとポジティブな主人公が印象的だ。

72453
短い中にも、情景が思い浮かびました。気持もよくわかります。

72485 早朝五時。
急いで準備して、学校に行かないと。
先週始まったばかりのクラブの朝練に遅れるわけにはいかないから。
朝はすごく苦手。
だけどまだ日も昇らない暗い道をマフラーを巻いてかけぬける。
学校につくころにはきれいな朝日が町を照らす。
まだ七時。
だけど体育館からはもうボールの弾む音が聞こえてくる。
あ、もうきてる…
ネットを張りながら、横目で姿を追う。
その瞬間、あのひとと思いっきり目が合った。
「おはよう、早いなあ」
「おはよう。私へたやし」
「毎朝したら絶対うまなるわ!お前ならレギュとれるで。がんばりや!じゃな」
…いっちゃった。
朝は苦手。
だけど絶対毎朝来るよ。
あなたの笑顔に出会いたいから。
総得点= 119
エピソード得点= 58
場面化叙述得点= 61
72486 「これ、落としましたよ!!」
彼はさわやかな笑顔で私に言った。
今日は、大学の合格発表・・・。
『1年間頑張ってきた結果が今日発表される』
そう考えていた私は、緊張のあまり合格発表の掲示板までの道で受験票とお守りを落としてしまった。
「ありがとうございます!!」
私は彼から落し物をもらい、お礼を言った。
『受験票とお守り落とすとか、めっちゃ縁起悪い…』
そう思いながら、やっとの思いで合格発表の掲示板の前についた。
『534…534……あっ、あった!!!』
私は、憧れていた大学に合格した喜びで、先ほどの彼のことなど全く思い出さなかった。
入学式の日。
親しい友達は同じ大学には進学していないため、不安でいっぱいだった。
指定された席に着いて、式が始まるのを待っていると、式の開始5分前くらいに、隣の席の子がやってきた。
「あっ、受かってたんや!!これからよろしくな」
そう言われて視線を上げると、なんか見たことのある男の子…
『あ、発表の時の…』
隣の席の子はまぎれもなく合格発表のとき私の受験票とお守りを拾ってくれた彼だった。
「あっ、あの時は本当にありがとう。よろしくお願いします!!」
これが、私と彼の出会いだった。
総得点= 131
エピソード得点= 69
場面化叙述得点= 62
72487 ザーザー…ザーザー…
高校からの帰り道、ちょうど雨が降っていた。
俺は雨が嫌いだ。
なんでって、まず傘に片手を奪われるのが嫌だから。
二本しかない便利な腕のうちの一本をなぜ雨のために使うのか。
あとは、行動するのが億劫になってしまうから。
今日だって行きたい店があったのに。
他には…荷物や体が濡れるから。
傘があっても濡れるのに今日は傘がないときたもんだ。
高校から駅までは近いから何とか少量の雨に打たれるだけで済んだけど、地元の駅から家までは遠い。どうしよう。
あぁ、俺は雨が嫌いだ。
そう思いながら駅で雨宿りをしていると、一人の女学生が通りかかった。何やら楽しげに傘をさしながら歩いている。
何が楽しいのか…と呆れがちに見ていると、彼女もこっちに気づいた。
「傘、ないんですか?」
透き通った声が雨音の中にかすかに聞こえた。
「あ、はい…。」
「じゃあ、お貸しします。私、折りたたみ傘もありますんで。」
「いや、いいです。返す時なさそうですし。」
「じゃあ、明日の朝八時くらいにここに来て下さい。私、いますから。
 その時に。」
にっこりと笑って彼女は傘を渡してくれた。俺は頭を少し下げ、それを受けとった。
「私、雨が好きなんですよ。」
なんなんだ、この人…。そう思ったが、そう話す彼女の笑顔は何とも言えない位、素敵だった。
彼女は去っていった。
雨のためにあんなに笑える人がいるんだ。
借りた傘をさして、歩き始めた。なんだか雨が違って見えた。
あんな笑顔が見られるなら、明日も雨でいいかもしれない。
少しだけ雨が好きになれた気がした。
総得点= 153
エピソード得点= 70
場面化叙述得点= 73
イチオシ得点= 10

72403
雨がいい!!

72488 「俺ら、もう別れよ…」
時間が…
空気が…
心臓が…
凍った。
涙があふれ
何も言えなかった。
いつまでも涙がとまらなかった。
5年の付き合いだった。
いつも一緒に居た。
お互いのことはすべて分かり合っていた。
結婚してもよかった。
いや、
結婚したかった。
あの日からもうすぐ1年経つ…
「俺メグより好きな人ができてん。
 だからもうメグのこと好きちゃうねん。」
嘘をついて別れたあの日から、もう1年も経った……
もう失敗はできなかった。
親にこれ以上迷惑はかけたくなかった。
どうしても大学に行きたかった。
去年大学に落ちて浪人が決まった時、真っ先に考えたのは
このことと、
そしてメグとのことだった。
メグは大学に受かっていた。
浪人になった俺は、いつもメグのそばにはいてあげれないだろう。
いつも勉強のことで頭がいっぱいで、メグのことを考えられなくなる日もくるだろう。
それでもメグは優しいから、会いたい気持ちを我慢して、きっと俺を応援してくれるだろう。
それはきっと
メグを苦しめることになる。
俺はメグを幸せにできない。
大学にはたくさんの出会いがあるから、
メグだったら俺なんかよりもっともっといい人に出会えて
幸せになれる。
『別れ』が
俺の出した答えだった。
2人が幸せになれる最善の方法が
『別れ』だと自分に言い聞かした。
それから1年、俺はただひたすらに勉強した。
毎日勉強した。
来る日も来る日も
そして
大学に合格した。
ただ
メグのことは忘れていなかった。
だから大学では誰とも付き合う気にはなれなかった。
メグよりも愛せる人なんていないと思っていた。
でも、
もう2人は元には戻れないことなんてわかっていた。
そんな僕に
あの人は新たな光を与えてくれた。
でもそれは
してはいけない恋だったのかもしれない。
総得点= 185
エピソード得点= 79
場面化叙述得点= 76
イチオシ得点= 30

72424
続きが気になる。

72429
色々思い悩んでいたあげくこういう決断をしたのは決して間違っていないんじゃないかと思います。

72445
読んでいてすごく切なくなりました。

72489 「こっちやって!!早く行かな間に合わへんよ!!」
東京のど真ん中、急に聞こえた方言に、思わず振り返った。
故郷大阪から上京してきて3年目のこと。
「どこに行くんですか?道を教えましょうか?」
前を歩いていた人が、急に振り返ってこう言った。
友達と一緒に、大阪から上京してきて2日目のこと。
「すいません…!!東京出てきたばっかりで道が分からなくて…。
 できれば教えていただけますか?」
彼女はスッと背を伸ばし、僕の目を見ながら答えた。
その目が印象的で、知らぬ間に見つめ返していた。
「いいですよ〜。僕も大阪出身の人間で、
 最初は迷ってばっかりだったから気持ちはよく分かります。」
彼はにこやかに答えた。
同じ大阪出身なんや…。感じのいい人やなぁ。
そう思いながらなんとなく見ていると、
向こうもじっと目を見つめてきた。
総得点= 123
エピソード得点= 57
場面化叙述得点= 56
イチオシ得点= 10

62457
このシチュエーション、僕の友達もあったらしく興奮してうれしくなるといっていた。特に東京だと人も多いしそういう気持ちになるのかなと思った。

72490 高校の二年。
クラス替え直後の僕の席は、名前の順番的にいつも一番後ろ。クラスで提出物を集めるとき、前の人たちの分を集めて前まで持っていかなければならない面倒臭い席だ。特に春休み後の提出物だらけの時期は、前後を行ったり来たりでもうハンパない。
「後ろの席ってめんどくさいよね。」
声をかけてきたのは、左隣の女の子。去年は違うクラスだったから名前は知らなかった。おとなしそうな感じが少しいいな、と思った。でも僕は自慢じゃないがなかなかのシャイなので、
「あ、そうやな」
くらいの返事しかできない。もうちょっと話を続けたい、とも思ったけど話題がない。その日の会話はもうそこで終わり。
その会話からどれくらい日が経っただろうか、またその女の子と会話するチャンスがやってきた。
「修正液持ってへん?」
「あ、修正テープならあるで」
そう言って筆箱からテープを差し出した。しかしずっと乱暴にしまいっ放しだったせいか、かなり汚れていた。鉛筆の粉がこびり付いていて、白いはずテープが黒に変色。こんなのを貸すのはさすがにアレだ、恥ずかしい。
「あ、ごめんめっちゃ汚れてる。他の人に借りたら?」
「ううん、大丈夫やで。貸して貸して?」
苦笑いしながら、彼女はそう言った。
その日の帰り、僕は文具屋へ行き、新しい修正液を買った。
明日、もし彼女に「貸して?」と言われても恥ずかしい思いをしないように。
総得点= 135
エピソード得点= 68
場面化叙述得点= 67
74202 15歳の春、ドキドキしながら高校に入学。私のクラスに、他の科からも沢山友達を連れてくる男の子がいた。『入学したばっかなのに、もうこんなに友達できたのかな…』 ある日その人が大人っぽい集団をクラスに連れて来た!『もぅ先輩とも凄い仲良くなってる☆』そんな勘違いが私と彼の出逢いだった。一際目立つ背の高い先輩…『カッコイイ〜〜〜』でも年上なんて、私には無理、と憧れの存在で止めていた。5月の新入生合宿…『ダルい〜〜〜』眠たい目を擦りながら食堂に入った朝、隣のテーブルには先輩だと思っていたあの「彼が!!『同い年‥』ささやかな希望が生まれた。私の眠気は一気にふっとんだ!猛烈あたっっく★笑
総得点= 103
エピソード得点= 48
場面化叙述得点= 45
イチオシ得点= 10

41136
微笑ましいなぁと思いました。

74203 『届く!!』
心の中で強く思いながらギュっとこぶしを握った。
いま、周りから見たら先輩を応援している自分と、心の中では対戦相手を応援している自分がいる。
なぜだろう…
初めて見た人なのに、しゃべったこともないのに強くひきつけられ、ずっと目で追ってしまっている。
チームのために先輩に勝ってほしいと願う半面、あの人の掛け声や、まっすぐなまなざし、ポイントを取ったときの笑顔をもっと見たいと思った。
やがて先輩が勝った。
先輩が笑顔で戻ってきた。
みんなと喜ぶが、心のどこかでなんだかモヤモヤしていた。
でも、これでいいんだと繰り返し言い聞かせた。
どうせ、この大会でしか会うことができなかった遠くの人なのだから。
そうは思いながらも帰り際までずっとあの人を目で追っていた。
視線を感じたのか、あの人がこっちを向いた。
目が合った。
あの笑顔がわたしに向けられる。
ものすごい動揺とともに体中が熱くなっていくのを感じた。
総得点= 133
エピソード得点= 65
場面化叙述得点= 68
74213 私は今日も友達と屋上に行く。
この高いところから見る景色と、空の下で解放されている感じが好き。
「気持ちいいなぁ」
そんなことを言っていると、ドアの開く音がした。
ドアのほうを覗き込むと、いつも見るカップル。
私たちとは反対側の方に行った。
仲良さそうに話す声が後ろから聞こえる。
「いいねぇ」
私たちはその二人を見ながらほほえましく思った。
それからずっと同じような日が続いていたのに、急に二人は来なくなった。
「どうしたんだろうね?」
別に自分とは関係ないのに、なんだか会えないと寂しくて。
今日は友達がいけなくなったから、一人で屋上に来た。
一人で来る屋上も悪くないなぁ。なんて思ってたらドアの開く音がした。
入ってきたのは、彼女と一緒じゃない一人のあなた。
久しぶりにあなたに会って、すごい嬉しい自分がいた。
でもあなたはすごいうかない顔をしてて。
それがまたすごく心配だった。
私がじっと見すぎてたせいかそれに気づいてあなたもこっちを見た。
「やばっ」
そう思って目をそらそうとしたら、あなたはかすかに微笑んでくれた。
またそれにびっくりして目を離せずにいたら、今度はハハッと笑ってくれた。
ねぇ、こんなにあなたのことで嬉しかったり悲しかったりドキドキしたりするのは、あなたに恋しちゃったからかな?
これが私とあなたの出会い。
だから私はこれからも毎日屋上に来るよ。
あなたに会いたいと思うから。
総得点= 138
エピソード得点= 73
場面化叙述得点= 65
74214 大学生になって,一人暮らしを始めてもう1か月が過ぎた。
毎日が充実していて,楽しかった。
新しい環境に,新しい友達。すべてが新鮮で,私にはまぶしく見えたのに,今ではそれに馴染みつつある。時の流れって驚くほど早い。
「授業終わったら,一緒に部活行こうや」
そう,あいつからメールがきた。
「了解♪いいよ★」―送信完了。
あいつとは,友達の紹介で仲良くなった。そして,あいつの紹介で私は,同じ部活のマネージャーになった。
一緒に部活に行ってるとき,あいつがふとこんなことを言った。
「知ってる?モグラって目が見えないんやって。でも,真っ暗な土の中で,何も見えないなかでも,ちゃんと自分のパートナー見つけるんよ。それってやっぱ運命なんかな?」
私には,難しくてなんて答えたらいいのかわからなくて,
「ん〜どうなんやろ?分からんわ!」って言うと,「お前に話した俺があほやったわ。」なんて言われた。 
それからまた,時が流れて夏―
私とあいつは今も友達の平行線をたどっていた。でも,私の気持ちは確実に変わり始めていた。
そんなとき,あの質問を思い出した。
「なぁ,モグラってな,目が見えへんねんて。でも,真っ暗な中でも,自分のパートナーは見つけるねん。これってやっぱ運命なんかな?」私は,あの時の質問をそっくりそのままあいつにしてみた。
すると,笑って「運命やん。そんなんそれ以外ありえへん。やから,俺がお前に出会ったんも,お前が俺に出会ったんも運命なんや。」なんてキザなことをいった。
その瞬間,私の心は確実にグッとあいつに掴まれてしまった。
キュッて胸が痛くなった。ヤバい。あいつのことを考えてると,顔が火照るのが自分でもわかった。
総得点= 130
エピソード得点= 68
場面化叙述得点= 62
74215 彼と出会ったのは、入道雲がでていた暑い高2の夏。
当時私は、週5で塾に通っていた。憧れの塾講師が、気分転換にと私の親友も誘って食事に連れて行ってくれた。塾講師の友達も一緒。頭も良くて、ノリも良くて、お洒落な塾講師とは、明らかに違う感じだったが・・・。その彼は、前日車を当て逃げされていた。笑うにも笑えない気の毒な話。食事中もずっと一人携帯電話で保険会社の人と話をしていた。そんな状況なら今日来なくてよかったのに。せっかく憧れの人と楽しく食事ができると思ったのに!!初めての彼との出会いは最悪だった。
そんな彼から、受験勉強で忙しくなってきた私に1か月に一度応援メールが届くようになった。気がつけば1年も。そのメールにに支えられていた。
高3の夏が来た。入道雲が出ていた暑い夏。
1年ぶりに会う事にした地元の花火大会。そこに1年前の彼はいなかった。男としての彼がそこにいた。tt
総得点= 138
エピソード得点= 66
場面化叙述得点= 62
イチオシ得点= 10

74203
入道雲で始まり入道雲で終わるのがとてもきれいでした。端的なのですが心情がよく伝わっててきました。

得点順
作者 作品 得点
62437 そろそろ家を出ようと、テレビのリモコンに手を伸ばす。ちょうど星占いが終わるところで、私の星座は12位だった。ラッキーアイテムはクロスのペンダントだという。
あ、と自分の胸元に光るそれを見た。くだらない。
最下位の人間がラッキーアイテムをつけたら、いったいどうなるというのだ。いいことが起こるというのか。それともやはり、12位なのだから悪いことが起こるのか。
くだらない、と口にしてからテレビを消した。
――今になって思う。あの日、いいことがあったのだとしたら、それはあいつに出会ったことだろう。そして、悪いことがあったのだとしたら、やはり、あいつに出会ったことだろう。
バスに揺られながら、もたれかかった窓ガラスに映った自分が、自分でおかしくて笑ってみた。ここにいる私は誰なのだろう‥‥。
ある事に踏ん切りをつけたくて、私は私でなくなった。身に付ける全てのものを変え、化粧を濃くして、世に言うイメチェンというやつを図ったのだ。
似合う似合わないは別にして、イメージを変えたという点では、大成功だと自分でも思う。流行りの形のワンピース、右耳に付けたピアス、一目でブランド物だとわかる鞄、驚くほどヒールの高いパンプス‥‥。学校に着くときっとみんな目を丸くするだろう。そしてきゃぁきゃぁと騒ぐのだ。前よりいいよ、今の方があなたらしいよ、などとわかったようなことを言って。
ただ私は、そんな言葉のどれ一つも望んでいるわけではなかった。似合うよ、と笑いかけてほしい相手は、そこにはいない。そして、そうしてほしいと望むたった一人の人には、私の望みはもう届かないのだ。どんなに願っても。
それならどうしてこんなことをしているのか。
全く、自分が自分でわからない。見返したいという衝動にしては、あまりに自虐的だった。
学校について、トイレでマスカラを塗り直す。
「悲しくない。虚しくない。」全て上手くいくはずだ、と作り笑顔を張り付けて、教室のドアを開けようとしたその時だった。
「きれいな――」
ふいに後ろから声をかけられて、聞き慣れないその響きの元へ振り返る。真っ黒な瞳がこちらを見ていた。
「きれいな髪ですね」
「きれいな髪だね」
どれくらい前だろう。いつか彼もそう言った。
彼と過ごしたいくつもの日々と、交わした何万、何十万の言葉を、全て忘れるために一つずつ消していったとき、最後の最後に残ったのが、なぜかそんなどうともない一言だった。
思い付く全てを変えた私が、唯一捨てられなかったのが髪だった。切れなかったそれに彼への想い――愛も、憎しみも、失望も、期待も、未練の全てを詰め込んだのだった。
忘れないように。そして、もう溢れることのないように。
誰だか知らないが、痛いところをつく男だ。どうしていきなり、どうしてよりによって‥‥とそんなことがぼんやり頭に浮かぶ。
どれくらいの沈黙があったろう。
どうして、とその男は優しく笑った。言いながら私の頬に手を伸ばした。
一瞬、私の心の声が聞こえたのだろうか、と思った。名前も知らないその男に触れられるまで、さっき塗ったばかりのマスカラが黒い滴になって伝っているということに、私は気付きもしなかったのだ。
総得点= 208
エピソード得点= 85
場面化叙述得点= 93
イチオシ得点= 30

72454
共感出来る話だったので、すごく心に響きました。

72484
場面全体がすごく切なくて、うまいなぁとただ単純に思いました。

72487
見返すためにイメチェンをしてはみたが、他の誰に何かを言われたい訳ではなく…。そんな心情もよくわかるし、感情移入が非常にしやすい作品でした。私が主人公の立場であってもそうしただろうなぁと思えるほど、共感できる話でとてもよかったです。

72103 聞きたくなかった...。そんな言葉聞きたくなかったのに...。
そう思ってあたしは唇を噛み締める。何度も何度も噛み締められて、赤く腫れ上がってしまった唇。あたしの今の心もきっとこんなんだとふと思った。
「俺と別れて欲しい...」辛そうにそう呟いたアイツの横顔。思い出したくなくても、鮮明に浮かんでくる。いろんな思い出が走馬燈のように駆け巡って来る。泣きたいのに涙が出ない絶望感で何となく家に帰る気になれず、あたしは独り、どこへいくともなく彷徨っていた。
 気が付くとあたしは公園の前にいた。アイツと初めてキスしたあの公園。思い出の波が押し寄せる。「こんな所にいたら辛くなるだけじゃない...。」そう思って足早に立ち去ろうとしたその時だった。少し離れた所からギターの音色。それは公園の中から聞こえてくる。「綺麗な音...」どんな人が弾いているのか気になって、思わず公園のなかへと足を踏み入れた。
 公園の一番奥の白いベンチ。ギターの主はそこを陣取って無心にギターを弾いていた。長い手足に白いシャツとジーンズがよく似合う男の子だ。誰かに見られているとも知らずにただただギターに熱中している。驚く程美しいその音色。まるで心が洗われるようだ。あまりの素晴らしさに思わず聞き惚れてしまった。しかしいくら何でも全然知らない人に勝手に聴かれていることに気づいたらいい気はしないだろう。そう思って振り返り、歩き出そうとしたその時、思いもかけない出来事があたしの歩みを止めた。 彼が自分のギターに合わせて唄を口ずさみだしたのだ。そして彼が歌い出したその曲が一層あたしの足をその場に縛り付けた。
Mr.Childrenの「Over」...あたしの大好きな曲。何度も何度も聴いた曲...。その曲の歌詞があまりにも今のあたしと重なって、気づけば涙が頬を伝っていた。涙と一緒にいろんな感情が後から後から止め処なく溢れ出た。そして彼が歌い終わった時、あたしは思わずこう叫んでいた。「もう一度唄ってもらえませんかっ!?」
驚いたように顔を上げた彼は、あたしを見るとすぐに照れくさそうに笑ってもう一度唄い始めた。
ボロボロのあたしと彼は、そんな風に出逢った。
総得点= 197
エピソード得点= 82
場面化叙述得点= 85
イチオシ得点= 30

72401
切ない心情がまるで自分のことのように想像できて、ほんとに切なくなったから。

72468
一番心にジーンとくる作品でした。自分の状況にぴったり合う歌詞ってたまにありますね。

74215
別れてしまっても、新たな出会いに希望が持てる内容だったのでよかったです。

72473 俺たちの出会いはいつのころだったんだろう…?
俺たちは,隣同士の家に一日違いで産まれた幼なじみ同士だ。親たちは,この一日違いで産まれた二人に『怜央』と『麻央』と名付けた。そろいの名前をもった二人は,まるで双子のように育てられ,なにをするにも,どこへ行くにも一緒だった。はじめてハイハイができた日も,はじめて立った日も,はじめてことばをしゃべった日も,いつも二人でいた。春のお花見も,夏の海水浴も,秋の栗拾いも,冬の雪だるまも,二人の思い出だった。
五歳の秋。なんの前触れもなく,麻央は,俺の前からいなくなった。親の転勤だった。しかし,五歳の俺にそんな大人の事情がわかるはずもなく,麻央がいなくなった,いつもと違って静かな部屋をぼ〜っとながめるしかできなかった。ぼ〜っとしている俺に親は,小さな黒いピアスを一つ渡した。もうかたっぽは麻央がもっているらしい。いつも一緒だった二人を離れ離れにするのを気の毒に思った親たちからのせめてものなぐさめだった。そこで,母さんは一言言った。「これをもってたら,また麻央ちゃんに会えるよ」俺は,小さなピアスをぎゅっと握った。
高二の春。俺は,昔ずっと一緒にいた女の子の存在を忘れかけていた。鮮明だった思い出もどんどんはっきりしないものになっていた。しかし,あのピアスだけは,いつでもつけていた。ふいに,手が右耳にいってしまう。遠い記憶となっても,これだけははずしてはいけない気がしていた。はずせなかった。母さんが言ったあのことばを信じていたんだろうか…?ただ信じていたかっただけだった。俺は,自分でいうのもなんだけど,少しはモテた。しかし,俺は,そういうことがよくわからなかった。好きだとか,つきあうとか,実際興味がなかった。毎日がたんたんと流れていった。
高二の夏。いつもと同じように一限を十分ほど遅刻。遅刻なんて何の気にもならない。いつもと同じように後ろのドアから無言で入る。しかし,何かいつもと違う。まだ授業がはじまっていないようだ。前に担任ともう一人誰か立っている。ん………?顔をあげた彼女から目が離せない。動けない。時間がとまっている。はじめて女の子をかわいいと思った…。見慣れた小さなピアスが彼女の左耳に光る。それはまぎれもなく俺の右耳に光るのと同じピアス。そろいの名前をもった二人は,そろいのピアスをもって,再び出会った。
つづく…
総得点= 191
エピソード得点= 77
場面化叙述得点= 74
イチオシ得点= 40

72107
せっかく"出会い"の話やから、胸にグッとくるようなのがいいと思ってました。その点で行くと一番来たのはこの作品でした。

72466
そろいのピアスでつながってるとかステキですね。

72471
おもしろかったです。

74213
幼馴染との恋とかありそうであんまないのが良かったです♪

72488 「俺ら、もう別れよ…」
時間が…
空気が…
心臓が…
凍った。
涙があふれ
何も言えなかった。
いつまでも涙がとまらなかった。
5年の付き合いだった。
いつも一緒に居た。
お互いのことはすべて分かり合っていた。
結婚してもよかった。
いや、
結婚したかった。
あの日からもうすぐ1年経つ…
「俺メグより好きな人ができてん。
 だからもうメグのこと好きちゃうねん。」
嘘をついて別れたあの日から、もう1年も経った……
もう失敗はできなかった。
親にこれ以上迷惑はかけたくなかった。
どうしても大学に行きたかった。
去年大学に落ちて浪人が決まった時、真っ先に考えたのは
このことと、
そしてメグとのことだった。
メグは大学に受かっていた。
浪人になった俺は、いつもメグのそばにはいてあげれないだろう。
いつも勉強のことで頭がいっぱいで、メグのことを考えられなくなる日もくるだろう。
それでもメグは優しいから、会いたい気持ちを我慢して、きっと俺を応援してくれるだろう。
それはきっと
メグを苦しめることになる。
俺はメグを幸せにできない。
大学にはたくさんの出会いがあるから、
メグだったら俺なんかよりもっともっといい人に出会えて
幸せになれる。
『別れ』が
俺の出した答えだった。
2人が幸せになれる最善の方法が
『別れ』だと自分に言い聞かした。
それから1年、俺はただひたすらに勉強した。
毎日勉強した。
来る日も来る日も
そして
大学に合格した。
ただ
メグのことは忘れていなかった。
だから大学では誰とも付き合う気にはなれなかった。
メグよりも愛せる人なんていないと思っていた。
でも、
もう2人は元には戻れないことなんてわかっていた。
そんな僕に
あの人は新たな光を与えてくれた。
でもそれは
してはいけない恋だったのかもしれない。
総得点= 185
エピソード得点= 79
場面化叙述得点= 76
イチオシ得点= 30

72424
続きが気になる。

72429
色々思い悩んでいたあげくこういう決断をしたのは決して間違っていないんじゃないかと思います。

72445
読んでいてすごく切なくなりました。

72102 プールにつけていた濡れた足は、夏の風があたって少し涼しかったけれど、私の顔は、体は、心は、ほてっていた。
靴をぬいで 素足になって 冷たい水 足をつけて 空を見上げ 光る太陽
なんて即興のうたを、5限が始まるチャイムを伴奏にして口ずさみながら誰もいない屋上のプールに足を踏み入れる。
太陽は南に昇り、肌は焼けつくように熱い。
午前中に体育の授業があったのか、プールサイドは水びたしになっていた。
私は靴をぬぎ、学校指定の白いハイソックスをぬぎ、つま先で歩きながらプールへと近づいた。
スカートが濡れるのも気にしないでプールサイドに腰をかけ、ゆらめく水の中へと足を入れる。
少しぬるいけれど気持ちがいい。
足を上下させ水しぶきをつくる。
それが太陽の光にあたるのを見ていると、
ああ 私は甘えて現実から逃げているんだなぁと感じた。
アメンボが足もとをすーっとよこぎっていく。
そのアメンボを見つめうつむくと、次の瞬間、水が弾ける大きな音と共に水しぶきがとんできた。
心臓がはねあがり顔を上げると、水の中へ飛び込んだ人が水面へとあがってきた。
きれいな波紋が広がる。
髪は太陽に照らされて金色だ。
つり目がちな瞳と目があった。
足をつかまれ水の中に引きずり込まれたわけじゃないのに息がつまる。
呼吸をするのを一瞬忘れた。
総得点= 180
エピソード得点= 71
場面化叙述得点= 89
イチオシ得点= 20

72108
ゆったりと流れている時間が描かれていて、好きです。穏やかで、淡い気持ちを思い出させてくれる作品だと思います。続きが読みたくなります。

72464
場面表現がとても上手でした。

72108 4月って苦手。
新しい学年、新しい教室、新しい担任、新しい友だち。
新しいことが一気に押し寄せてきて、頭がいっぱいいいっぱいになってしまう。
クラス替えしたのは10日前なのに、まだみんなの顔と名前が一致しない。席が近い子はわかるんだけど…。
席に着いて周りを見ると、もう仲良さそうに話している子があちこちにいて、自分だけが新しい環境に馴染めてないような気持ちになる。
やっぱり私、4月は苦手。
『そろそろ学校にも慣れてきただろうし、みんなの性格とか進路の希望も知りたいから今日から5人ずつ個人面談します。』
ホームルームで担任が言う。私の出席番号が呼ばれた。
放課後、担任の先生がいる教室に行かないといけないらしい。環境準備室…っていう所。場所を黒板に書いて説明している。
…ややこしい…でも覚えた。…多分。
やっと今日1日の授業が終わって、放課後。自分が指定された時間に環境準備室に向かう。
渡り廊下を渡って、階段を登って、迷いながらもなんとか『環境準備室』と書いたプレートを見つけた。近づいていくと、そのドアの向かいの壁にテニスのラケットが立てかけられている。私の前の時間に面談してる子の、かな。その人が終わるまで廊下で待っていることにした。
廊下と私とラケット。…変な組み合わせ。
何分ぐらい経ったのだろう。『失礼しましたー』という声と共に一人の男の子が出てきた。テニスウエアを着てる。やっぱりこの子のだ。
ラケットの隣にいた私と目が合った。―まつげ長い…きれいな顔。こんな子同じクラスにいたんだ。
そんなこと考えてたら、長い間目が合っていたらしい。急に恥ずかしくなって照れ笑いする。男の子も笑顔になる。優しそうな目元。
新しい出会い。
4月がほんの少し、好きになる。
総得点= 180
エピソード得点= 75
場面化叙述得点= 75
イチオシ得点= 30

72102
廊下と私とラケット という響きが好き。その場面が頭に浮かんだ。

72423
他の作品に比べて出会いに不自然さがなく、誰もが一度は体験する経験を基に構成されているので読みやすく違和感を感じませんでした。

72425
その場面がリアルに頭の中に浮かんできました。爽やかですてきな出会いだと思います。

72483 AM6:30 朝のランニング
これは,私の日課だ。毎朝同じ時間に起きて,新鮮な空気を体いっぱい吸い込んで,風と一緒に走る。
私のマンション→河川敷→近所の学校のグラウンド→商店街→30度の上り坂→丘の上。これが私のランニングコースだ。
この時期の朝は涼しくって,走りやすい。汗もそれほどかくことはない。
私は一人で走るのがすきだ。途中で誰かに会ったり,人混みをよけて走るのは嫌いだ。自分のペースで,何も気にすることなく走るのがいい。
朝の川の流れを見ながら,今日の1日をイメージしてみる。今日はどんな1日になるんだろう。
商店街を走っていたら,どこからか足音が聞こえてきた。
だあれにも会いたくないな…
どんどん足音が近づいてくる。少しピッチをあげよう。今日は体が軽い。どんどんスピードをだす。
上り坂まで来た。足音が消えた。これでゆっくり走れる,そう思っていたら,また足音が聞こえてきた。
今度は,息づかいまで聞こえてくる。
何?何??何!?
だんだん近づいてくる。こうなったら,坂ダッシュだ。私は思いっきり坂を駆け上がった。それでもまだ追いかけてくる。後ろにつかれた。さらにダッシュする。私はぐんぐん離していった。
坂を登り切ったら,さすがに疲れていつもの丘の上の石の上に座り込んだ。
すーっと,爽やかな風が吹いてきた。丘にはえている草木がゆれて音を出す。
さっきの人はいったい誰だろう。あの人も毎朝はしっているのかな。どうして追いかけてきたんだろう…
「おはよう」
びくっとした。うしろを振り向くと,ランニングシューズをはいた青年が,額に汗をかいて私のほうを見ている。
「おはようございます」
とりあえず,言ってみた。
「気持ち良さそうに走るね。僕も,走るの好きなんだ」
「…」
なんて言ったらいいのかわからなかった。そのまま,時間がすぎた。そろそろ帰ろう,そう思った。
「じゃあ,私はこのへんで」
走り出そうとしたとき,
「また会えるかな?」
 
えっ!?…よくわからないまま,走りだした。
帰り道。誰にも会わなかった。それなのに,ペースがくるう。
AM 6:30
いつものコースにしようか,少し迷った。やっぱり,いつものコースを走る。
商店街にさしかかった。
足音が聞こえてきた。
今日もレースが始まる。明日も,明後日も,ずっと…
恋というスタートラインを今,スタートしている。
総得点= 171
エピソード得点= 72
場面化叙述得点= 79
イチオシ得点= 20

72419
青年と出会う時の感情、状況がよく表現されていると思いました。ランニング中の出会いが新鮮でした。

72479
さわやかな朝の雰囲気がいい!!青春を感じるし少しドキドキしました。彼についての文章がもう少しあってもよかったかなとは思いますが‥‥

72444 私には彼がいた。
高校1年生のときに彼から急に告白してきて付き合い始めた。
彼は色黒で顔の堀が深く、笑顔を見せたときに見える八重歯が印象的だった。
また彼はサッカー部に入っていてサッカー関係者も注目するほどの腕前だった。
彼のサッカーに対する思いは私以上で毎日練習練習でなかなか会うことができなかった。
それでも私はサッカーをしている彼の姿が好きだった。
ところが3年生の秋、私は好きだったはず彼の思いを受け止めきれなくなってしまった。
ある放課後、急に呼び出されてこう言われた。
「東京に行って本気でプロを目指したい」
彼の意思はすでに固まっていた。
私はこのことに言葉を失ってしまった。
彼のサッカーをしている姿が好きだったのにそれが見れなくなってしまう。
たとえテレビのスクリーンで見れたとしてもそれは今の彼ではなくなるような気がした。
そして私は耐え切れず、彼のいちばん好きだったことによって別れ遠く離れることになってしまった。
それから5年ほど経つ。
私も東京の企業に就職し、OLとして忙しい日々を送っている。
彼の存在は未だ心の片隅に残っていたりする。
風の噂によると、怪我が原因でプロの夢が断たれてしまったらしい。
そんなことを思い返していると偶然彼が道路の向こうを歩いているのをみた。
私は信号を無視して彼に会いに走り出した。
ところが彼の横に女性とその間に小さな子供がいた。
彼はあの八重歯を見せ笑っていた。
私は立ち止まり、少し安心した。
気づいたのだ。
本当に彼の好きだったところはサッカーをしている姿ではなく、幸せそうな笑顔だったことに。
総得点= 170
エピソード得点= 78
場面化叙述得点= 72
イチオシ得点= 20

72427
舞台設定がわかりやすくて読み入ってしまいました!

72483
自分の思いと重なって、感動した。

72453 今日も夏日。
太陽が温めたコンクリートの地面。
汗が流れる肌に、吹き下ろす風が気持ちいい。
その風に揺られる深緑が涼しげな音楽を奏でている。
通学はいつも山登り。月曜日の一限目ともなると、たくさんの人がこの登り道を上がっていく。学校へ続く道はこの道だけなのだから、仕方がない。
その人々が生み出す流れの最後尾につけるのにはコツがいる。あの赤い電車の一番前の車両に乗ることだ。
一番前はいい。
たいていの人は階段に近い車両に乗る。でも、極力人と会いたくない自分は、一番前がお気に入り。
自分は朝が苦手だ。
でも今日は違った。少し朝が好きになれた。
いつものように一番前の車両に乗り、いつものように最後尾につけ、いつものように前との距離を少しおいて、登り道を歩いていた。今日はいつもより人は少ないみたいだ。
エスカレーターを二つ昇った、少し階段が続くあたり、君を見つけた。自分のちょうど2、3歩前を歩いていた。
こんなに暑いのに、君は涼しげな顔で歩いている。
初めてのはずなのに、なぜだろう、どこかで会っている気がする。
君を見てると心がなごむ。
君を見てると表情がゆるむ。
少しつり目。
きれいな黒髪。
ツンとした表情。
整った爪。
背伸びした足元。
そして・・・
猫背。
伸びたひげ。
とがったキバ。
しなやかなしっぽ。
これが君との出会い。
また明日も会えるとは限らない。だって君は気まぐれだから。
総得点= 170
エピソード得点= 69
場面化叙述得点= 71
イチオシ得点= 30

72110
電車の最前列に乗って、人ごみの最後尾について歩く様に共感し、大教にゃんことの出会いに和んだ。ねこはかわいいなぁ。

72406
視点が独特で、雰囲気もよかったと思います。

72465
人と思ったら実は猫のコトだったっていう発想がおもしろかったです。

72481 小学校の同窓会
みんな6年前とは外見はすっかり変わっていて
でも中身は全く変わってなくて
すごく懐かしい感じ
温かい感じ
私の大好きな感じ
でもあいつがいない
6年間ずっとクラスが一緒で
いっつもあほな話で笑いあって
何でも話せた
大切な人
中学校に入る前
家の都合で急な引越し
『また遊びにきてよ』
『おう、いったるわ』
それが最後
あれから何も音沙汰なくて
忘れられたんかって思った
すごく…悲しかった
“失ってから初めて価値がわかる”
って歌の歌詞かなんかであったけど
こんなに実感するなんて思ってなかった
こんなに辛いって思ってなかった
こんなに好きなんて思ってなかった
“こんなんわからせんといてよ”
その時
『久しぶり』
振り向いた瞬間人差し指がほっぺたにあたる
『ひっかかった♪お前に会うのめっちゃ楽しみにしててんで』
あほ
うちの方が何十倍も楽しみにしてたわ
だって好きやもん
総得点= 169
エピソード得点= 79
場面化叙述得点= 70
イチオシ得点= 20

72473
最初,同窓会の設定はありきたりかなぁって思ったけど,『こんなに実感するなんて思ってなかったこんなに辛いって思ってなかったこんなに好きなんて思ってなかった“こんなんわからせんといてよ”』ってところで,なんかせつなくなってぐっとつかまれて, 『あほうちの方が何十倍も楽しみにしてたわだって好きやもん』 ってところで,その素直な想いにこれやぁって思った。あほっていうセリフに,同窓会での再会のちょっと照れくさい感じがリアルにでて,めっちゃよかった。

74214
すごくこっちがドキドキする書き方で,読んでて続きが気になりました。

72109  「大学入ってもいいことないよな〜。もう五月っていうのにいい出会いもないし。彼女がいる友達が羨ましい・・。まあ俺は部活をやるために大学入ったもんだし,部活に大学生活を捧げるか。」こんな言い訳じみた考えで頭がいっぱいだった。
 恋がしたい。燃えるような恋がしたい。心のどっかでずっと思ってた。けど人を好きになるのがコワい。前の彼女にフラれたことをまだ引きずってるのだろうか?一年以上も前の話なのに。男って過去を引きずるタチなのかな。ただ可愛いって思う子はいる。同じ学科の元気で明るいあの子。その子が授業中にときどき見せる悲しげな顔が俺は好きだ。だが同じ学科であるにもかかわらずほとんどしゃべったことがない。一歩前に踏み出せない。これ以上好きになったら一年前と同じように悲しむことになるかもしれない・・。
 こんな感じで足踏みしていたある日,たまたまあの子の隣に座ることができた。嬉しくてたまらなかったのだが,話しかける勇気も出ず,たまにあの子の横顔を眺めながらぼんやり授業を聞いていた。授業なんかそっちのけで彼女のことばかり考えていた。その時不意に彼女が「その絵かわいいね。」と笑ってくれた。俺は最初何のことかわからなかったが,ぼんやりとノートに書いた落書きが気に入ったらしい。俺は微笑むことしかできなかったけど内心はたまらなくうれしかった。
 授業が終わっても立ち上がれない。「あの子が笑ってくれた。あの子が笑ってくれた。」と心の中で繰り返す。好きな人が笑ってくれた。それだけで恋をする理由になるだろう?もう傷つきたくはないけど,そのリスクを負ってでも俺はもっとあの子のことを好きになりたい。前の彼女のことは忘れられないかもしれないけど,未練はなくなった・・。やっと立ち上がって外に出ると,もう日は傾いていた。夕日が俺の胸を焦がした。
総得点= 167
エピソード得点= 70
場面化叙述得点= 77
イチオシ得点= 20

72437
まっすぐな熱い気持ちがうまく表されていて共感できた

72439
主人公の未練があるけれど、それ以上に好きになったという素直な気持ちがはっきり表れていて、読んでいて胸に響いたから。

72459 青い青い夏。
入道雲が見守る空の下で、僕は君に出会った。
セミが夏を彩るよう・・・というよりかは、やかましく鳴き続ける道路沿い。
僕は講義に遅れそうで、自転車を必死に進めていた。
太陽は、こんなにも頑張っている僕にさえギラギラと輝き、
アスファルトの道には陽炎がゆらめいてる。
・・・遅れて行ってしまおうかな・・・。
そんな考えが頭をよぎる。
・・・どうせ損するのは自分なんだし。
・・・だって寝坊しちゃったし。
言い訳は続々と浮かぶけど、サボってしまう決意もできず、電車に飛び乗る。
・・・講習会1日目から遅刻とか・・・やっぱ印象悪いだろうなぁ・・・。
講義のパンフレットを見返す。
と。
正面に座っている女の子と目が合った、と思った。
女の子の手元を見れば、同じパンフレット。
・・・遅刻仲間かな・・・?
一度意識しだしたら、どうにも気になってしまう。
同じ道を歩くだろうに、無言で歩き続けるのも、気まずい。
2mもない距離が、ひどく遠く感じる。
彼女はそのうち、うつらうつらと眠り始めた。
僕も、ぼんやりと彼女の後ろの窓を眺める。
・・・夏だなぁ・・・。
そんなことをとりとめもなく考えていた。
・・・あと、一駅だな。
僕が大きく伸びをした時、
彼女が少しあわてて目を覚ます。
・・・って、え?あれ?そこ、一駅早いって!
僕は思わず声を出してしまった。
「まだだよ。降りるの、次」
彼女はひどく驚いていた。
・・・そりゃあ、僕だってそんな大きな声出ると思わなかったし・・・。
・・・僕自身が一番びっくりしてるし・・・、あぁ、もう。
声をかけたはいいが、その後の対応に困っている僕に向かって、
彼女はとても素直に、こう言ってくれた。
「ありがとう」
どこかでまだセミが鳴いている。
太陽がギラギラ照りつける空の下で、
僕は君に出会ったんだ。
総得点= 167
エピソード得点= 74
場面化叙述得点= 83
イチオシ得点= 10

72486

72420 悪い友人に騙された俺は、借金を背負うこととなった。額は三千万。今日は書類の確認をするために、奴と待ち合わせをしている。日が沈み、夜の帳が俺を包んでゆく。俺は怒りで激昂する気持ちを抑えながら、夜道を急いだ。
奴は小さな工場を持っている。だが、この不景気で経営がうまく行かない。そこで、俺をカモにした訳である。今頃、奴は工場で俺を待ちながら、ほくそ笑んでいることだろう。
工場に着いた。奴は書類の入った茶封筒を大事そうに抱えながらこちらに近づいてきた。
突然、床がぐらつき、足の裏に衝撃を受けた。俺は、バランスを崩し四つん這いになった。「地震や!」奴が叫んだ。轟音と共に周囲が波打っている。俺は転がるように外へ出た。破裂音や地響きが聞こえる。さっきまで存在していた世界が跡形もなく崩れていく・・・。
どれぐらい揺れが続いたであろうか、辺りが静けさに包まれた。眼前の工場は形をとどめることなく倒壊していた。奴は生きているのだろうか・・・。
背後に「火事や!」という声を聞いた。見ると、工場の真向かいの家が燃えていた。その炎はこちらに燃え移るかの如く勢いがすさまじかった。
俺は工場の周りを歩いた。奴が梁の下敷きになって倒れていた。
俺はおそるおそる奴に被さっている瓦礫を除けた。茶封筒が見えた。それを瓦礫の下から抜き取った。
「これで、借金はチャラや」
そう思って奴を見た。驚いたことに奴は目を見開き、俺に何かを訴えるように口を動かしていたのだ。俺は咄嗟に側にあった瓦を拾い上げ、奴の頭部めがけて振り下ろした。今度こそ奴は目を閉じ、ぐったりとなった。額からは血が流れていた。
俺は茶封筒を手に取り、その場を立ち去ろうとした。何かつかえていたものが取れたような清々しい気分になっていた。
その時、視線を感じた。振り返り目が合った。俺は悪寒を感じた。そこには、俺のしたことの一部始終を見ていたと思われる、若い女が立っていた。
総得点= 165
エピソード得点= 74
場面化叙述得点= 71
イチオシ得点= 20

72430
何というか・・・深い、普通じゃない。他の作品とは一味二味違った雰囲気を出しているように感じた。

72481
火曜サスペンスのようなドラマ性に惹かれました。『男女の出会い』をあえて恋愛に絡めないところがおもしろかったです。

72413 虫なんて大嫌い。
見ただけで心臓が早くなるし痛くなる。
蚊だって殺したことはない。
なのに・・・
山の上にある私の大学はまさかの虫のオンパレード。
この前なんて教室にいたのにバッタが足首に・・・恐怖でただただ逃げるだけ。
登下校は特に要注意。
中でも一人の時は、恥ずかしいから叫べないし、
助けを求める人もいないから、必死に下を向いて用心し続ける。
今日はたまたま1人きり。
梅雨時・・・虫の季節・・・
ドキドキしながら慎重に、でも少し早めに歩いてく。
のぼりのエスカレーターには私と知らないスーツの人が2,3段後ろにいるだけ。
だけどわたしには虫のことしか頭にない。
足元に集中集中。
エスカレーターとエスカレーターの間にある階段のところにいる虫たちを不自然な動きで避け続け、やっと校舎に入ろうとしたそのとき
「動かないでください!!
 落ち着いてくださいね。背中に虫がいますから。」
・・・??!!
「ムリ-----------!!!!」と思っても動くなって言われたし・・・
『お願い・・・早くっ』という私の心の声が聞こえたのか
「すいません。ぼくも虫が苦手で・・・あ、あ!とれた!!もう大丈夫ですよ。」
涙が出そうになった。
虫の恐怖からの解放のせいもあるけれど、
苦手であるにも関わらず、他人の私を助けてくれたことにとても感動した。
たくさんのお礼を言って、話を聞いてみると、
私の行動が、虫嫌いな自分の普段の姿にとても似ていたようで、
虫嫌いだと気づいたらしい。
だから虫の存在に気付いた時『とってあげなくては』と思ってくれたそうだ。
「それじゃあ」という彼の声が聞こえた瞬間
「あの!・・・お名前は??」
と思わず聞いてしまっている自分がいた。
総得点= 162
エピソード得点= 72
場面化叙述得点= 70
イチオシ得点= 20

72101

72451
なんか読んでいて突飛すぎず、自然に読めたところが良くて、場面設定もわかりやすい。

72406 雨の日は憂鬱だ。
ズボンの裾は濡れるし、鞄に入れた本もぐちゃぐちゃ。
特に通り雨はタチが悪い。
計画性のない俺には、折り畳み傘なんて代物を持ち歩く習慣などない。
しかたなく、しばらく空が機嫌を直すまで付き合ってやる。
不機嫌な空よりも、俺のほうが不機嫌な顔をしているだろうな、今は。
この間入学したてで、知り合いもほとんどいない。
傘に入れてもらおうにも、入れてくれ、と頼める相手がいなかった。
仕方なく、やむことを知らない雨空をシャッターの降りた商店の屋根の下からゆっく
りと見上げる。
「はぁ…」
ついても意味のないため息ばかりが積もっていく。
幸せが逃げていくと知りながらも、こぼれ落ちる。
降り続ける雨は、暫くやみそうにない。
スッ…。
不意に目の前に傘が近づいた。
突然のことにたじろぐ。
「…入る?」
少しだけ聞き覚えのある声。
紺色っぽい、女の子にはあまり似合わない、男物のような傘。
差し出してくれた彼女の微笑みは、今も脳裏に焼きついたまま。
「…かわいくねぇ傘だなぁ」
照れ隠しに悪態をついた。少し怒って、少し頬が紅く染まる。
傘はかわいくなかったけど、この顔はなんかかわいい。
「傘なんて雨を防ぐためのものなんだからいいの。それより、ひどくならないうちに
帰ろうよ」
腕を引っ張られて、促された。
一緒の傘に入るって恥ずかしい。
でもまぁ、好意は受け取ることにする。
「…サンキュ」
なんとなく小声になってしまう。
「え、なんて?」
あらためて顔を見て尋ねられると、言葉に詰まる。
「な、なんでもない。あ、傘ぐらい俺が持つ」
半ば強引に傘を持って、少し早足で歩く。
彼女も、少し早足で隣についてくる。
ただのクラスメートだったのに、段々距離が縮む気がした。
俺は彼女と本当に"出逢った"。
物語ははじまりを告げた。
そして、雨の日がちょっぴり好きになった、春の日。
総得点= 158
エピソード得点= 76
場面化叙述得点= 82
72427 午前6時50分、それが僕らの待ち合わせ時刻。
たいてい彼女が2分くらい前に到着して、僕は2分くらい遅刻する。
B型の僕は遅刻してきたのにも関わらず彼女にこう言い放つ。
「はよいかな間に合わんで!」
彼女は文句も言わず小走りでついてくる。
後ろからそ〜っと僕の手をつかむ。
なんともかわいい。
こんな、どこか抜けていて、でも実は芯のとても強い彼女との出会いは実は僕自身覚えていない。
聞いた話と僕の不確かな記憶を合わせるとこうなる。
それは小学校2年生のとき。
彼女は転校生としてクラスにやってきた。
今でもほとんどの小学校の友達の名前をフルネームで言える僕が覚えていないんだから相当影の薄い子だったんだろう。
でも、始末の悪いことに彼女は小学2年生のころの僕をはっきりと覚えているらしい。
なんでも僕は、体育のドッチボールで思いっきり彼女を当てて泣かしたらしい。
覚えていないものは覚えていない。
僕の記憶に彼女が登場するのは小学5年生のとき。
ちょっと女の子にも興味がでてきたころだ。
んじゃそのときなんか思ったかというとそんなことはない。
呼び捨てにするか、さん付けで呼ぶか迷ってたくらいだしとにかく彼女は影が薄かった。
では、こんな彼女とどこでどう結びついたのか。
小学校を卒業して、僕は私立へ、彼女は地元の公立へすすんだ。
仲が良かった友達ですら会わないのに彼女と会うわけもなく月日は流れた。
そして、今思えば運命の再会の場である中学3年のときの地元の夏祭り。
そこに彼女はいた。
特に変わっていない、ぽっちゃりとしたかわいらしい顔、おっとりとした性格。
まあ一目惚れかと言われるとそうではないが、不思議と彼女を好きになった。
彼女も僕を好きになってくれた。
中3の夏祭り、これが僕らの本当の出会い。
総得点= 158
エピソード得点= 69
場面化叙述得点= 69
イチオシ得点= 20

72422
現実的で、文章を読んでいるだけで場面が頭の中に浮かんできました

72472

43492 今日はなんていい空なんだろうか。
なにかいいことでもおきそうなそんな気持ちのいい青。
川原に寝そべりゆったりと雲が流れて行くのを見ると、時の流れを忘れてしまう。
心地よい風が吹いている。その風によいしれ、うとうとしていると、ふと何か花香りのようないいにおいが香ってきた。
その方向に顔をむけると、真っ白なワンピースに麦わら帽子を目深にかぶった女の人が立っていた。
少し口元を微笑ますと、その人は僕とは反対方向に離れて行く。
とっさに追いかけようと立ち上がった瞬間、草に足をとられ、転んでしまった。
急いで立ち上がったがもうそこに彼女の姿はなく、心地よい風だけがふいていた。
総得点= 155
エピソード得点= 63
場面化叙述得点= 82
イチオシ得点= 10

72470
短いのにエピソードがしっかりしていて、本当の小説を読んでるみたいでした。

72464 『ありがとう』あの人に伝えたい。『親友』として新たに出会えたあの人に・・・
 
私は彼が好きやった。めちゃ好きやったから、別れよう言われたとき、「分かった」言ってもてん・・・重い女やって思われたくなかった。うちの気持ちのほうが明らか大きいんわかってたから・・・。「まだ好き」って伝えることができへんかった。
あれから彼とは会ってない。高校離れてそれぞれ別々の人生を歩んだ。でも私の中には彼がいた・・・
高校一緒やったら別れんですんだんかな・・・ふとそんな考えが頭をよぎる。いや、でももし彼がうちの高校来てたらサッカー続けることできへんかった。やからあの人は今の高校行ってよかったんや。うちの学校は進学校で勉強ばっかやったから・・・私はあの人からサッカーを奪いたくなかった。これでよかってん。これで・・・
1年くらいたったころ、突然、同窓会の知らせが来た。
彼も来た。肌をこんがり焼いて、真っ白な歯を輝かせていた。
『ああ、やっぱりこの人からサッカーを奪わなくてよかった』
心の底からそう思った。男友達に嬉しそうにサッカーを語る彼。そうだ、わたしは、好きなことに夢中になる彼が好きだったんだ。
私は彼のところへいき、「久しぶり」と声をかけた。正直不安やった。もしかしたら、まだ彼が好きやから声かけれないんちゃうかなあって・・・。
でも普通に彼と話せてる自分がいた。自分でも驚いた。
もう大丈夫。私はもう彼に未練があるんじゃあない、思いを伝えきれなったから引きずってただけだ。そう確信した。
このとき別れてから初めて彼と「いい友達」として出会うことができた。もう彼を「過去の人」にすることができた。
彼に『ありがとう』を伝えたい。こんなに人を好きにならせてくれたことに感謝したい。
『ありがとう』、そしてこれからはいい友達としてよろしく。
私とあの人との、『親友』としての新たな出会いである。
総得点= 155
エピソード得点= 79
場面化叙述得点= 66
イチオシ得点= 10

72418
ひとつだけ恋愛が終わった男女の出会いやったから印象的でした。

72418 文化祭の日。人ごみが嫌で、ひとりになりたくて、私の足は自然と美術部の展示場へ向かっていた。展示場が近づくにつれて人気がなくなっていく。ただそれだけのことに喜びを感じた。
人の中にいるのが嫌だった。
仲の冷え切った両親。
ひとりきりの食事。
あの子さえ生まれてなければ、結婚なんてしなかったのに。
―私さえ生まれてなければ―
自分の存在を他人の中に見いだせない。私は、何のために生まれてきたんだろう。
展示場のドアを開けた瞬間、私は正面にある絵に釘付けになった。
絵のタイトルは『帰り道』。
全体が淡いオレンジで塗られていて、キャンパスの真ん中にぽつんとブルーの丸が描かれている。動いたら、壊してしまうかもしれない。そう思わせるような繊細な絵だった。帰り道。仲良しの友だち。仲良しの親子。仲良しの老夫婦。そんな中に、ひとりでいる私。そんないつもの情景がふ、と浮かんできた。
私みたい。
心がゆれた。この絵を描いた人はどんな人なんだろう。絵を描いたのは、一つ上の学年の男の人だった。この人に会いたい、会って話がしたい。次の日、私は美術部に入部した。
入部してから2週間が過ぎても、先輩は現れなかった。あんな絵を描く人なんだから、毎日きて絵を描いているに違いない。そう思っていたのに。
「部長、あの人本当に美術部なんですか?」
「あいつは気分が乗らないと来ないからね。」
ははは、と毎日のように繰り返される質問に、笑って答えてくれる部長は本当にいい人だと思う。先輩と部長は中学校からの友だちなんだそうだ。
「でも。」
「なんですか?」
「もうすぐコンクールがあるからさ、そろそろ来ると思うよ。」
言い終わるかどうかのタイミングでドアが開いて、先輩が入ってきた。
「ほらねー。」
お約束のタイミングだね、と部長は笑い転げている。先輩は、見た目は全く美術部っぽくなかった。どちらかというと運動部といったほうがしっくりくるような、がっしりとした体つきだった。
「なに笑ってんの。ていうかそいつ誰?」
「お前のファンだって。」
「はぁ?」
「文化祭でお前の絵見て、ファンになったんだって。」
オロオロして何も喋れない私と、明らかに訝しがっている先輩の反応を見て、部長は明らかに楽しんでいる。前言撤回。やっぱり部長は意地悪な人だ。
「…あっそう。」
さも興味なさそうに言うと、先輩は黙々と作業を始めた。
「どうだった?会ってみて。」
「なんか…思ったより。」
「うん。」
「背が高いなと思いました。」
「そこなんだ。」
また笑いだした部長は放っておいて、私は先輩を見た。
ひょろっとしていて、いかにも美術部なイメージだったんだけど。とか、ファンとか言われたのに何にも思わなかったのかな。とか考えた。なんか、不思議な雰囲気を持ってる人だなというのが、先輩の第一印象だった。
総得点= 153
エピソード得点= 77
場面化叙述得点= 76
72452  彼女の名前はダイナマイトバディー。どうやらドラゴンのすむ「最果ての一軒茶屋」にとらわれているらしい。勇者(自称)である私としてはぜひ助けにいきたいのであるが、最近ニンテンドーDSを買ってしまったせいで金欠だ。基本的装備はおろか、こん棒を買う金すらない。たとえ勇敢なアキレスでも素手でライオンには挑まないだろう。そんな訳でバイトにいそしもうと考えていた矢先、領主から私にダイナマイトバディー救出命令が下った。女が魔物にとらわれているのに勇者がバイトとは何事か!!ということのようだ。さすがにゆったりとするわけにはいかないので、おっとり刀で準備をし冒険に出た。
 最果ての一軒茶屋までは電車で3時間もかかる。近鉄やJRを乗り継ぎなんとか「最果ての一軒茶屋前駅」までたどり着いてもそこからさらに上り坂と380段の階段が待ち受ける。真の勇者でなければたどり着けないという訳だ。むろん私はそれのつもりなのでたどり着くことができた。電車賃と近鉄バス代で1500ルーン(お金の単位)もかかってしまった。
 ドラゴンとの戦いをどう乗り切るかという悩みに絶望的結論しか導けないまま最果ての一軒茶屋に突入したのだが、どうもドラゴンは今夏期休暇を取っているらしくそこにはいなかった。鬼の居ぬ間に洗濯とばかりに私は例のダイナマイトバディーを探したのだが、建物中をくまなく探しても見つからない。1500ルーン損したのではないかと不安になりながら、まだ探していない庭に出てみた。庭は広く、またパラソルがたくさんさしてあり、その下に丸机と椅子が並んでいた。その中の1つに魔法の杖を持っている女性が座っていた。その女性が私に気づきこちらに走りよってきた。見てみると、体つきはまだ未発達と言った感じだが、顔つきの方はそれを補ってあまりあるほどのものだ。ーダイナマイトバディーではないのにダイナマイトバディーか、と妙な気分にとらわれながら私はやさしく話しかけた。
「大丈夫だったかい?」
彼女は激しく答えた。
「朝ご飯だよ!起きな!」
私ははっと目覚めた。目の前にはおたまを持った母が立っていた。
 
総得点= 153
エピソード得点= 70
場面化叙述得点= 63
イチオシ得点= 20

72463
文章の入りから独特で惹きつけられました。

72489
大教が最果ての一軒茶屋という設定や、夢の中での女の子との出会い、またロールプレイングゲームになぞらえて書いてあるところが他の作品と違っていて輝いていました!

72484 よし、ピッタリ7時15分。
1,2,3,4
今日、彼は1時間目が体育で、そのときはこの電車に乗るハズで、この電車に乗る日は・・・そう、ピッタリ7じ15分にここを通るはずなのだ。
1,2,3,4
コツ、コツ、コツ、コツ・・・
近づいてくる彼の足音。
コツ、コツ、コツ、コツ・・・
私は一生懸命タイミングをはかりながら、駅の階段をのぼる。
1,2,3,4
のぼりきった階段の上で私は彼を見つけて、彼に気づかれないうちに小さく深呼吸する。
『おはよう!!』
『あ。おはよ。』
彼にとっては週に1度の偶然の出会い。
でも、私だけは知っている。
これが仕組まれた出会いだということを。
さぁ、今日もいい1日になりそうだ。
総得点= 153
エピソード得点= 69
場面化叙述得点= 64
イチオシ得点= 20

72404
ストレートな表現に端的なストーリーで、話が伝わり易い。話の落ちの軽やかさとポジティブな主人公が印象的だ。

72453
短い中にも、情景が思い浮かびました。気持もよくわかります。

72487 ザーザー…ザーザー…
高校からの帰り道、ちょうど雨が降っていた。
俺は雨が嫌いだ。
なんでって、まず傘に片手を奪われるのが嫌だから。
二本しかない便利な腕のうちの一本をなぜ雨のために使うのか。
あとは、行動するのが億劫になってしまうから。
今日だって行きたい店があったのに。
他には…荷物や体が濡れるから。
傘があっても濡れるのに今日は傘がないときたもんだ。
高校から駅までは近いから何とか少量の雨に打たれるだけで済んだけど、地元の駅から家までは遠い。どうしよう。
あぁ、俺は雨が嫌いだ。
そう思いながら駅で雨宿りをしていると、一人の女学生が通りかかった。何やら楽しげに傘をさしながら歩いている。
何が楽しいのか…と呆れがちに見ていると、彼女もこっちに気づいた。
「傘、ないんですか?」
透き通った声が雨音の中にかすかに聞こえた。
「あ、はい…。」
「じゃあ、お貸しします。私、折りたたみ傘もありますんで。」
「いや、いいです。返す時なさそうですし。」
「じゃあ、明日の朝八時くらいにここに来て下さい。私、いますから。
 その時に。」
にっこりと笑って彼女は傘を渡してくれた。俺は頭を少し下げ、それを受けとった。
「私、雨が好きなんですよ。」
なんなんだ、この人…。そう思ったが、そう話す彼女の笑顔は何とも言えない位、素敵だった。
彼女は去っていった。
雨のためにあんなに笑える人がいるんだ。
借りた傘をさして、歩き始めた。なんだか雨が違って見えた。
あんな笑顔が見られるなら、明日も雨でいいかもしれない。
少しだけ雨が好きになれた気がした。
総得点= 153
エピソード得点= 70
場面化叙述得点= 73
イチオシ得点= 10

72403
雨がいい!!

72478 脂ぎった酔っぱらいのオヤジ達で繁華街がごったがえす頃、私はひとり隅の公園でたばこを吸っている。時刻は午前0時をまわっている。普通の高校生なら、明日の予習に躍起になっている時間だろうか。でも私はまだ帰らない。帰る場所なんてないから。
私はこの春高校生になったばかり。めでたく誰もが知っている有名私立の進学校に合格した。私自身も周りの人間も満足していた。新しい友達、初めての電車通学、バラ色の高校生活・・・・・。胸を弾ませたのは入学から1ヶ月の間だけだった。
いきなり親が離婚した。前から私が高校生になったら離婚するつもりだったらしい。そんな話は聞いてなかった。家族がバラバラになった。成績も落ちた。平均点以下が並ぶテストの結果を見て唖然、プライドをズタズタにされた気がした。友人関係も上手くいかない。周りはみんな金持ちのお嬢様ばかりで、私とはとてもじゃないけど釣り合わない。
髪を染めた。もちろん、校則違反だ。オシャレがしたかったわけじゃない。ただ母に叱って欲しかった。片親で仕事に明け暮れてても私を見ていると。でも、見向きもしなかった。化粧もしたし、ピアスも空けた。それでも、なお・・・・・。そんなだから成績も下がる一方だし、友人関係はさらに悪化した。一人だけの世界にいるように感じた。
今日も私は公園でたばこを吸っている。一見にぎやかだけど、ピークを過ぎると潮が引いたように静かになるこの場所は私に似ていた。
真夜中の4時に帰宅。玄関のドアを開けようとしたとき、
「どこ行ってたの?ずいぶん遅くまで。」
聞き慣れた声に反応した。隣に住む幼なじみのアイツだった。
「うるさいなあ。」とすぐに反発。
「おまえ最近変わったな。だいじょうぶか?」
「何言ってるの。大丈夫に決まってる。」
「そっか、おまえなんか大変だったな。」なんだかアイツが少し大人に見えた。別人と初めて会っているような錯覚さえした。
「別けわかんないよ、私元気だし。それじゃ。」とドアを閉めた。
閉めたとたん涙が頬を伝った。久々のうれし泣きだった。私を最後に見ててくれたのはアイツだった。私の居場所をやっと見つけた気がした。その日から幼なじみのアイツは、一人の男性に格上げになった。私たちは今再び出逢ったんだ。
総得点= 151
エピソード得点= 75
場面化叙述得点= 66
イチオシ得点= 10

72109
彼女の辛さ,そして喜びがひしひしと伝わってきた。率直に心に響く良い作品だった。

72401 あれは、夏の暑い日の出来事だった
・・ピロロロローーー・・
ヤバい!閉まってしまう!
・・ピーっ・・ガッシャン・・
間一髪で電車に乗り込むぼく
結構本気で家から走ってきたから
息があがってしまい
顔をあげることができなかった
・・よかった間に合って
  これに乗れなきゃ遅刻だった・・
息がだいぶ落ち着いてきた
ぼくはそっと顔をあげてみる
ばちっっと目が合った
そう、ばちっっと・・
落ち着いた感じのかわいい女の子
その子はぼくにそっとほほ笑む
暑さと恥ずかしさで
汗が滝のように流れ出る
ぼくは苦笑いして
鞄の中のタオルを探す
・・見つからない
またはずかしくなって
下を向き、苦笑い
・・・これよかったら・・
目の前には青いハンカチがあった
顔をあげ、僕はその子を見る
・・いいの?
・・うん
そこから先の電車内は
ずっとその子と喋っていた
久し振りに胸がときめいた
降りるとき
洗って返したいからと言い
また会う約束をした
今、ちょうど
その子を待っている・・
総得点= 149
エピソード得点= 66
場面化叙述得点= 73
イチオシ得点= 10

72474
情景を思い浮かべると、青春のほほえましい光景だなと思い、いい作品だと思いました。きれいな出会いだなぁ。

72456 春、新学年、新しい顔ぶれ、男女もまた恋をしやすい季節である
はずだが…ボク末シュウジは何の出会いもないまま夕焼けの綺麗な秋をむかえていた
そんな秋の放課後…
ボクは親友のタカシとはずれくじである図書委員の仕事をこなしていた
今日で五回目の仕事だけあって真剣にすべき所、手を抜くべき所は心得ていた
また何もないつまらない仕事のはずだった…
いつも金曜日の放課後に古典文学を借りに来る女の子がいた
名札から一つ年下だろうか
その細い髪、細い指、そして貸し出しのときの細い声がどことなく好きだった
つまらない仕事の中で唯一の楽しみといっても過言ではなかった
そういうことには敏感なタカシだ
「お前いっつもあの子ばっか見てるよなぁ」
笑いをふくんで言ってくる
「そうか」
知らないようなふりをしてみた、というかあまりに的中していたので驚きと焦りでそんな言葉しか出なかったのだ
「次に借りに来るときに話しかけてみろよ」
「ばか」
そんなことできたら、もうやってるよと思っていた…
そのときだ
「あの〜すみません」
あの子の声がした
「あ、はい、貸し出しですね」
平然を装えていたかはわからない、でも必死に平然を装っていた
「では、薫さん返却日は来週の…」
「えっ…」
彼女の声で混乱し、また我にかえった
そう、彼女の名は薫という
名札を見て知っていた
一瞬頭が真っ白になっていたとき、タカシが口を開く
「いっつも難しそうな本を読むよね〜えらいな、君は。シュウジが名前を覚えるぐらい惚れこむわけだ」
「バカ」
間髪を入れてなかった
「いつも借りに来る常連さんで、その…」
うまい弁解もできずに口ごもる
「仲良いんですね」
笑いながら彼女は言った
「返却日は来週の金曜日ですよね、シュウジ先輩」
「えっ…あっはい」
またまた驚きだ
「じゃあまた来ます」
小さく一礼をして彼女は去っていった
夕焼けの光がさしこんでいた
総得点= 147
エピソード得点= 74
場面化叙述得点= 73
72471 ついにやってきたこの日。
そう。
今日は席替えの日。
僕には密かに憧れている女の子がいる。
同じクラスの女の子だ。
学校が始まってまだ1カ月程度。
彼女とはまだ一度も話したことがない。
僕はドキドキして話しかけることができない。
今日の席替えで席が隣同士になったら話しかけよう。
そう心に決めていた。
そして運命の席替え。
不幸なことに彼女とは程遠い距離。
彼女は僕以外の男の子と楽しそうに話している。
半ば嫉妬。
半ば諦め。
僕が彼女と話す機会もなくこの日のホームルームは終わった。
が。
この日はまだ終わっていなかった。
みんなが帰った教室。
僕は忘れ物を取りに一人で教室に戻る。
彼女がひとりだけで教室に残ってないかな。
そんな淡い期待を抱きつつ。
教室に戻ると…
やっぱり誰もいなかった。
彼女がいないのはわかっていた。
落胆しつつ忘れ物を探す。
「あれ?机に入れておいたのにな…」
自分の声が虚しく教室に木魂する。
その時。
トントン。
誰かが僕の肩を叩く。
振り向くとそこには…
満面の笑みで僕を見つめる彼女が。
「やっぱり帰ってきたか」
彼女は意地悪そうに言った。
「これでしょ?探しものは」
彼女の手には僕の探し物が。
だがそんなものはどうでもよかった…
総得点= 147
エピソード得点= 70
場面化叙述得点= 67
イチオシ得点= 10

72432
誰もが経験のありそうなことが再現されていて、共感できた。

72429 数学 教科書P38〜43
   問題集P48〜62
英語 LESSON3〜7
 
これが、高2の一学期中間テストの範囲だ。
そう、明日は僕の苦手な英語のテストなのだ。
というわけで今僕は学校の図書館で勉強している。
前の席では、テスト前になるとひょっこりと姿をあらわす悪友が、今日もしきりにノートを写している。
一方、後ろの席では女バスの連中がこれまた勉強している。
僕らとは違い至極マジメだ。
「おい、今日もあいつらマジメに勉強なんかしやがってるぞ」
「いや、あれが普通やろ」
こちとらマジメに勉強がしたいのだ。
悪友もそれを感じ取ったのかおとなしくノートを写しはじめた。
僕も苦手な英語にとりかかった。
すると、いつもではありえないことがおこった。
僕の背中になにかが飛んできた。
しかも方向は、あの女バス軍団の方だ。
普段は、あまりしゃべったこともなかった僕にとっては、本当に驚きだった。
平静を装いながらおそるおそる背中に当たったものを見てみると、紙ヒコーキだった。
テスト用紙で作られた紙ヒコーキには女の子の文字で、こう書いてあった。
「よかったら今度、花火にいかへん?」
総得点= 145
エピソード得点= 68
場面化叙述得点= 67
イチオシ得点= 10

72104
テスト勉強の描写がリアルで、あ〜、高校生ってなんかいいなぁ、と思ってしまいます。

72422 僕がそのメールを受け取ったのは、今から5ヶ月ほど前のことだ。
高校2年の11月でそれはちょうど17歳の誕生日だった。知らないアドレスでメールが届いた。
件名は「海はありすか?」だった。
海を見たいのですが、わたしの住んでいるところには海がありません。
あなたの町に、海はありますか?
いきなりのメールでごめんなさい。
だが、僕は律儀に返事をしてしまった。
誰へのメールですか?相手を間違えてませんか?
そこまで打ったところで、ふと、イタズラ心が芽生えた。
最後に、こう付け足した。
僕の町には海があるよ。
このやりとりをきっかけに僕達はメル友になった。
相手が唯という自分と同い年の女の子であること、そして来月には僕の高校に転向してくることなどを知った。
そして、唯が転校してくる日になった。約束は、昼休みの屋上だった。
昼食後、ダッシュで屋上に向かった。
彼女よりも先に着いていたかったからだ。
大きく息を吐きつつ鉄製のドアを開ける。
風がビュウと吹きつけてきてきた。
人の姿はない。
時間だけが過ぎ、彼女は現れなかった。休み時間がまもなく終わる頃、ドアが開いた。
唯だった。
柔らかな頬のライン、きれいな二重まぶた、そのまぶたの奥の黒く澄んだ瞳。
とびきりの美人ではないかもしれない。でも、可愛い顔だった。
総得点= 144
エピソード得点= 76
場面化叙述得点= 68
72405 確かにその時、時間が止まったのだ。
いつもの昼下がり。
ホームの向こう側。
変わらない町並み。
階段の側をふと見たそのとき、
僕の時間は 確かに止まったのだ。
間違うはずはない。
少し髪が伸びていても、服装が大人びていても、
寒くない時にも両手をポケットに入れる癖は変わらない君。
僕に気付いた君が控えめに手を振る。
やっとわかった。
僕はきっと 何度でも君を好きになる。
総得点= 143
エピソード得点= 62
場面化叙述得点= 71
イチオシ得点= 10

72420
歯切れのよい文体で、散文詩のような印象を受けた。短い文章なのに再会する男女の姿がありありと目に浮かんだ。

72404  
 高校に入学して彼女もできないまま私は卒業を迎えた。中学2年のころから好きだった宮原のことをよく考える。彼女は年上。仲は良かったが、告白する勇気はなかった。高校は別で、どこの高校に行ったかも分からない。ただあの、私の名前を呼ぶときの澄んだ声と、笑顔だけを覚えてる。
 大学生活が始まり、校内で宮原に似た人を見掛ける度、自分の鼓動が鼓膜に伝わった。その人は宮原よりも背が低い。顔は良く似ていた。似ている人と付き合いたいと思うのは、本音でもあり、未練がましいというか、やっぱりためらいがあった。
 
 朝からすっきり晴れた夏の日、大学の駐輪所に自転車をとめる。心地よい風が私の横を吹き抜けた。宮原似の彼女が私の横に自転車をとめた。偶然かと思った、彼女が私に話しかけるまでは。
 私の身長は中学のときよりずっと伸びていた。宮原が小さく見えたのはそのせいだった。きみにまた逢えてよかったよ。
 
 
総得点= 141
エピソード得点= 72
場面化叙述得点= 59
イチオシ得点= 10

72444
読み返してみて意味がわかった。少し深い感じがした。

72434 高校三年生の春。
私はこれから一年間受験生だ。
受験勉強がつらいと先輩から聞いていたから
毎日おびえていた。
仲良くしている先輩が今年の春教育学部に入学した。
私が目指す大学とは違うが、受験するつもりでいた。
そんななか、先輩が
「息抜きに遊びにおいで。」と言ってくれたので
行くことにした。
大学につくと、やはり高校とは違う雰囲気で、
自分が浮いているように思い、妙にソワソワしてしまう。
先輩と食堂に行って昼食をとることにした。
食券を買うために並んでいると、先輩の友達が来た。
自分の知らない人と楽しそうに話す先輩は
自分の知らない人のように見えた。
食券も買い終わって、おばちゃんに渡して待っていると
さっきの友達のうちの一人が声をかけてくれた。
「同いどし?」
「部活の後輩なんです。」
「え?何で来たん?」
「今年受験生で、ここも受けるつもりなんで見学にきました。」
「ふ〜ん・・・」
それくらい話したところでおばちゃんが頼んだものを
持ってきてくれたので、
私は挨拶をして先輩の座るテーブルに向かった。
席に着くと、私は
「あんな感じの人がタイプなんですよ〜。
 なんとなく分かります?スポーツしてそうな感じの・・」
「うん。なんとなく分かるわ〜。」
何気ない会話を先輩としながら食事を終えた。
「ちょっとお手洗いに・・・」私は先輩を残して席を立った。
帰ってくると、先輩は友達のテーブルで楽しそうに話していた。
私が帰ってきたのを見つけて、戻ってきた。
「後輩がかっこいいって言ってたで。って言ったら、
 めっちゃよろこんでたわ〜。」
そりゃあ褒められて誰も悪い気はせんよな。
私はその時それくらいにしか思わず、特に気に留めるでもなく
一日見学して帰った。
家に帰ると先輩からメールが届いた。
「今日言ってた子がメアド教えてって言ってるねんけど
 どうする?受験生やし断ろうか?」
「受験生だけど、なんかもったいないな〜
 深入りせんかったら別にイィよな・・・」
そう思った私はメアドを教えてもらった。
それが彼と私との出会いだった。
総得点= 141
エピソード得点= 78
場面化叙述得点= 63
72403 ある放課後の話である。
ちょうどぼくは文化祭の店長でやることがあったので、
一番最後まで教室に一人でこもっていた。
でももう日は暮れそろそろ帰ろうとして
ぼくは外をふと見た。
・・そしたら外は雨が降っていた。
「そういえば昨日の夜テレビで午後雨やったな・・」
とここで後悔が襲ってくる。
「何で傘忘れたんやろ・・」
と思いながらも時すでに遅し。
さすがにもう周りに人の気配はない。
どうしようか迷ったがさすがにどうしようもなかったので
鞄を頭にやって今まさに走り出そうとしたとき
鞄のさらに上に傘の端と思われる部分が目に入った・・。
「・・・んっ!??」
ぼくは何が起きてるか分からず一歩ふみだしたまま動けなかった。
もう誰も校舎には残ってないはず・・。
そう考えているとあることに気づく。
ぼくがなんともいえなく好きな香水の香りが
ほのかに風に交じって辺りを包みこむ。
ぼくはドキッとした。
明らかにこの香りは忘れることのできない
つまり、ぼくがいつも気になっている子がふっている
香水に間違いがなかった。
間違えるはずなどなかった・・。
あの子である!
しかし彼女はぼくより2時間ほど前に帰ったはずである。
まさかここにいるはずなどないと思った。
しかし、この香りは・・・・・
ぼくは固まった体をどう動かしたらいいか分からず
このたった5秒という短い時間で必死で考えていた。
ぼくはそんなことあるわけない
そうだ!
あの子がぼくのためにわざわざ戻ってきてくれることなど・・
あるわけないと思いながらも
少し期待をして
ゆっくり後ろを振り返った・・。
・・・ぼくは目を疑った・・・
(彼女は満面の笑みでこちらを見ていた・・)
総得点= 140
エピソード得点= 66
場面化叙述得点= 64
イチオシ得点= 10

72442
状況説明の文と会話文がうまく両方使われていて読みやすかったです。また文の書き方が興味をそそる書き方で良かったと思います。

72455 ねむい。体がだるい。
昨日遅くまで課題やってたからかな?
足もとがふらつく。
文化祭も体育祭もおわり、勉強一色に染まっていく学校。
別に学校がたのしくないわけじゃない。
友達もいっぱいいて、むしろたのしい。
たのしいんやけど…
なんか毎日がしんどくて、頭がずっとおもいまま。
「はぁ・・・・・・」
なんで最近溜息しかでえへんのかな。
「「だる・・・・・」」
・・・・・・・・?
声がかぶった、その相手と目が合う。
相手はおない年くらいの男の子。
ちょっと幼いくらいかな・・・?
「ははっ。お互いがんばらなな!」
にかってわらう笑顔。かわいいな。
なんか人懐っこいひとやな。
「うん」
つられてわらってしまう。
「「・・・・・ぷっ」」
なんだかおかしくなってふたりでわらった。
これが彼との出会いだった。
たまに一緒に学校にいくようになった。
この日を境に、学校への足取りは自然とかるくなっていった。
でも、出会わなければよかったのかもしれない。
彼の隣りにはいつもかわらず、
もう一つの笑顔があったのに。
総得点= 139
エピソード得点= 67
場面化叙述得点= 62
イチオシ得点= 10

72450
目が合ってお互い笑うとこにもドキドキしたし彼には彼女がいるという切なさも何か良かったです。

74213 私は今日も友達と屋上に行く。
この高いところから見る景色と、空の下で解放されている感じが好き。
「気持ちいいなぁ」
そんなことを言っていると、ドアの開く音がした。
ドアのほうを覗き込むと、いつも見るカップル。
私たちとは反対側の方に行った。
仲良さそうに話す声が後ろから聞こえる。
「いいねぇ」
私たちはその二人を見ながらほほえましく思った。
それからずっと同じような日が続いていたのに、急に二人は来なくなった。
「どうしたんだろうね?」
別に自分とは関係ないのに、なんだか会えないと寂しくて。
今日は友達がいけなくなったから、一人で屋上に来た。
一人で来る屋上も悪くないなぁ。なんて思ってたらドアの開く音がした。
入ってきたのは、彼女と一緒じゃない一人のあなた。
久しぶりにあなたに会って、すごい嬉しい自分がいた。
でもあなたはすごいうかない顔をしてて。
それがまたすごく心配だった。
私がじっと見すぎてたせいかそれに気づいてあなたもこっちを見た。
「やばっ」
そう思って目をそらそうとしたら、あなたはかすかに微笑んでくれた。
またそれにびっくりして目を離せずにいたら、今度はハハッと笑ってくれた。
ねぇ、こんなにあなたのことで嬉しかったり悲しかったりドキドキしたりするのは、あなたに恋しちゃったからかな?
これが私とあなたの出会い。
だから私はこれからも毎日屋上に来るよ。
あなたに会いたいと思うから。
総得点= 138
エピソード得点= 73
場面化叙述得点= 65
74215 彼と出会ったのは、入道雲がでていた暑い高2の夏。
当時私は、週5で塾に通っていた。憧れの塾講師が、気分転換にと私の親友も誘って食事に連れて行ってくれた。塾講師の友達も一緒。頭も良くて、ノリも良くて、お洒落な塾講師とは、明らかに違う感じだったが・・・。その彼は、前日車を当て逃げされていた。笑うにも笑えない気の毒な話。食事中もずっと一人携帯電話で保険会社の人と話をしていた。そんな状況なら今日来なくてよかったのに。せっかく憧れの人と楽しく食事ができると思ったのに!!初めての彼との出会いは最悪だった。
そんな彼から、受験勉強で忙しくなってきた私に1か月に一度応援メールが届くようになった。気がつけば1年も。そのメールにに支えられていた。
高3の夏が来た。入道雲が出ていた暑い夏。
1年ぶりに会う事にした地元の花火大会。そこに1年前の彼はいなかった。男としての彼がそこにいた。tt
総得点= 138
エピソード得点= 66
場面化叙述得点= 62
イチオシ得点= 10

74203
入道雲で始まり入道雲で終わるのがとてもきれいでした。端的なのですが心情がよく伝わっててきました。

41136 「今日もあの人おるかなぁ」
一週間ほど前、通学電車の中で初めてあの人を見た。
いつもは人ごみを避けて一番前の車両に乗る俺は、その日遅刻しそうになって、駅の階段に一番近い、一番人が込み合うドアに走りこんだ。
乗れたことに安心して、息を整えてふと顔を上げると、目の前にその人がいた。
俺が通う高校の、すぐ隣の高校のブレザーを着て、気だるそうに携帯をいじっていた。
もう一度しっかりと息を整えた。
ちょっとハジけてる感じの髪型と化粧。
年上っぽい大人びた雰囲気。
「こんな綺麗な人がこの電車乗ってたんや…」
見とれていた自分に気が付いて、慌てて俺も携帯を取り出した。特に用はないけど。
「明日からはこの車両やな」
即決だった。
その日から一週間、朝の通学電車の20分間が楽しみだった。
あの人はいつものドア付近で携帯をいじってる。その向かいで俺は携帯をいじるフリしてチラ見する。
話し掛けようかと、もやもや考えているうちに、20分が過ぎる。あの人は改札を出て、逆の方へと歩いていく。
そんな朝の時間が一週間続いた。
「今日もあの人おるかなぁ」
今日こそ話しかけようと決めた。
「やっぱおった」
安心と緊張が同時に押し寄せた。いや、ほとんど緊張。
今日は携帯をいじらずに、ひたすらタイミングを探す。
目の前の人は相変わらず携帯ばっかいじってる。そんなに携帯に用なんてあるんやろか。
「おっ携帯なおした!今や!いけ俺ー!」
といっても、ビビッてなかなか話しかけられへん。
下向いたまんまの俺の中で、ビビりの俺と、行ったれ的な俺が戦ってる。
とその時、俺の肩を誰かが「トントン」
「ん?うわっ!あの人や!何でや!」
「ねぇ、君いつもこの車両乗ってへん?」
「あっはい」
「よかったらアドレス教えてくれへん?」
「ありえへーん!!」
総得点= 135
エピソード得点= 62
場面化叙述得点= 63
イチオシ得点= 10

74202

72490 高校の二年。
クラス替え直後の僕の席は、名前の順番的にいつも一番後ろ。クラスで提出物を集めるとき、前の人たちの分を集めて前まで持っていかなければならない面倒臭い席だ。特に春休み後の提出物だらけの時期は、前後を行ったり来たりでもうハンパない。
「後ろの席ってめんどくさいよね。」
声をかけてきたのは、左隣の女の子。去年は違うクラスだったから名前は知らなかった。おとなしそうな感じが少しいいな、と思った。でも僕は自慢じゃないがなかなかのシャイなので、
「あ、そうやな」
くらいの返事しかできない。もうちょっと話を続けたい、とも思ったけど話題がない。その日の会話はもうそこで終わり。
その会話からどれくらい日が経っただろうか、またその女の子と会話するチャンスがやってきた。
「修正液持ってへん?」
「あ、修正テープならあるで」
そう言って筆箱からテープを差し出した。しかしずっと乱暴にしまいっ放しだったせいか、かなり汚れていた。鉛筆の粉がこびり付いていて、白いはずテープが黒に変色。こんなのを貸すのはさすがにアレだ、恥ずかしい。
「あ、ごめんめっちゃ汚れてる。他の人に借りたら?」
「ううん、大丈夫やで。貸して貸して?」
苦笑いしながら、彼女はそう言った。
その日の帰り、僕は文具屋へ行き、新しい修正液を買った。
明日、もし彼女に「貸して?」と言われても恥ずかしい思いをしないように。
総得点= 135
エピソード得点= 68
場面化叙述得点= 67
72472 「今日もあの猫おるかなー?」
いつもの日課。公園にいる猫に餌をあげにいく。
「あっ、おった!!」
猫はいつもの場所でちょこんと座っていた。
「ほーれ、ほれほれ。おいしいぞー。」
そう言って餌を差し出す。しかし、猫は食べようとする気配はない。
普段ならすぐに駆け寄ってくるのに。
ずっとこっちを見つめている。
「にゃー」
てくてくてくと歩いていってしまった。
「どこ行くんよー!!今日は食べへんのかぁ」
猫はこちらを振り返り、もう一度鳴いた。
左右に揺れている尻尾がこっちにおいでよと誘っているように思えてきた。
猫はかまわず歩いていく。
「よしっ!!面白そう」
この後何の用事もないし、猫を追いかけてみることにする。
猫は民家の庭へ一直線に入っていった。
恐る恐る木と木の間から見てみると、窓によっかっかって本を読んでいる男の子がいた。
「あっ!あの子は・・・」
いつも教室の窓際の席で本を読んでいる子だった。
隣で男子が騒いでいるにも関わらず一緒に遊ぶ気配もない。
他のクラスメイトと喋っている所も見たことがなかった。
私を含めクラスの皆は、そんな彼の印象は、近寄りがたく謎な存在だった。
「おっ、ミー子じゃん。」
猫がすりすりしに行くと、読んでいた本を置いて猫を上に持ち上げた。
「はじめて笑ってる所見たわぁ。」
「あっ・・・」
あまりに笑顔が見れたことが衝撃的で思わず声が出でしまった。
彼は気まずそうにしながらも教室にいるときとは違った優しい雰囲気が漂っていた。
「お前も猫好きやったんや。」
思わぬ反応。そして、笑顔での会話。
普段、教室でクラスの誰にも見せなかった顔。
彼の笑顔は私だけに見せた特別なもののように感じられた。
そして、誰にも見せたくないと思ってしまっている私がいた。
総得点= 134
エピソード得点= 72
場面化叙述得点= 62
72465 俺は高校でキャッチャーをしている。
バッテリーを組んでいるのは、4番でキャプテンの男だ。
彼はもうプロのスカウトに注目されており、春のセンバツ以来全国の女子高生の黄色い声援を浴びている。
一方俺は、そんな彼にタオルを渡し、お茶を渡し、遠征のときに相手校の女の子から差し入れやファンレターを貰ったと思えば、「彼に渡しといて」と言われる始末だ。
そして俺の最後の大会、夏の甲子園。俺たちは優勝した。
表彰式でメダルを首にかけてもらった時に、メダルと一緒に女の子が俺に手紙を渡した。
またあいつにかと思いつつ、手紙を受け取った。
「あなたが彼をリードしたから、あなたが彼の裏で地道に努力したから、あなたのチームは優勝できたんだと思います。あなたのそんな姿、とってもかっこよかったです。」
自然と涙が出てきた。甲子園優勝の涙とはまた違った、幸せの涙だった。
総得点= 133
エピソード得点= 69
場面化叙述得点= 64
72470 自分で言うのもなんだけど、僕は人より出会いが少ない気がする。
むしろ今までの人生で「出会い」と呼べるような出会いがない。まったく、不幸な人生だ。
ちなみにここでの「出会い」とは、男女における、いわば「運命的な」ものとする。
しかしまぁ、今はそんなことを考えている場合ではないわけで。
僕は今、バス停に向かって全力疾走しているところなのである。
それが過去形になるには、もう少し時間がかかりそうだ。
バス停まであと300m・・・
曲がり角から女の子が飛び出してきた!
すんでのところで避ける。
バス停まであと200m・・・
「遅刻遅刻ー!」
パンをくわえた女の子が走っている。
くわえながら喋るという芸当に感心しながらも、ぶつからないように気をつける。
バス停まであと100m・・・
目の前の女子高生がハンカチを落とした。
素早く拾って、「ハンカチ!!」
驚いて振り向いた女の子にハンカチを押し付ける。
バス停まであと50m・・・
「めがね、めがね・・・」
「後ろに落ちてるよ!」
そんなこんなで、何とかバスには間に合った。
バスの中で息を整えながら、溜息をつく。
ああ、今日も出会いとは遠い、何の変哲もない1日になりそうだ。
なんてことをバスに揺られながら考えていると、
「あの・・・大丈夫ですか?」
声と同時に、涼しい風。
振り向けば、小柄な女の子が、そこら辺で配られているようなうちわで僕を扇いでくれていた。
「暑そうですね・・・」
言いながら、彼女は扇ぎ続けてくれる。
こういうときは何て言うんだろう。「ありがとう」?「どうもすいません」?
とりあえず両方言って、ついでに頭の中で前言撤回しておこう。
今日は、いい日になりそうだ。
総得点= 133
エピソード得点= 65
場面化叙述得点= 68
74203 『届く!!』
心の中で強く思いながらギュっとこぶしを握った。
いま、周りから見たら先輩を応援している自分と、心の中では対戦相手を応援している自分がいる。
なぜだろう…
初めて見た人なのに、しゃべったこともないのに強くひきつけられ、ずっと目で追ってしまっている。
チームのために先輩に勝ってほしいと願う半面、あの人の掛け声や、まっすぐなまなざし、ポイントを取ったときの笑顔をもっと見たいと思った。
やがて先輩が勝った。
先輩が笑顔で戻ってきた。
みんなと喜ぶが、心のどこかでなんだかモヤモヤしていた。
でも、これでいいんだと繰り返し言い聞かせた。
どうせ、この大会でしか会うことができなかった遠くの人なのだから。
そうは思いながらも帰り際までずっとあの人を目で追っていた。
視線を感じたのか、あの人がこっちを向いた。
目が合った。
あの笑顔がわたしに向けられる。
ものすごい動揺とともに体中が熱くなっていくのを感じた。
総得点= 133
エピソード得点= 65
場面化叙述得点= 68
72423 「くっそ,今日はホントにツイてねえな」
いましがたトラックに水をかけられてびしょぬれになったズボンを見て俺は呟いた。
そう今日の俺はホントについてない。ここまで不幸だと逆に気持ちがいいというか,なんというか……。あっ,俺がMだとかそういう話じゃないからな!念のため…
すべての始まりはテレビの星座占いだった。メッチャありきたりだけど。
一位はおとめ座でドベは蟹座。七月生まれの俺はもちろん蟹座。しかも総合運・金銭運・仕事運・恋愛運のぜーんぶがダメダメ。アナウンサーのコメントも散々だった。何が「ラッキーアイテムは茶色のマフラー」だ。そんなもんあるわけねぇじゃねえか!だって今六月だぜ?
でも,俺はあんまり占いとか気にするたちじゃないからね,深刻には思ってなかった。でもその認識が甘かったんだよ。通学途中に生活費が入った財布を落とし,今日が提出期限のレポートを家に忘れ,何もないところで躓いて階段を転げ落ちた俺は昼にはボロボロだった。(精神的な意味でも肉体的な意味でも)
なんかこのまま学校にいても悪いことばっかり起こりそうな気がしてさ。俺は午後からの講義をサボって家に帰ることにしたんだ。だって三限って体育だぜ?この流れでいったら大怪我して下半身不随とかなりかねないだろ。だから俺は友達に金を借りて食堂で飯食って,みんなの「サボり!サボり!」っていうコールをBGMにして帰路についたわけよ。そんで地元の駅まで無事に(電車とホームの間に片足落ちたことを除いて)たどり着いた俺は自転車に乗って家まで走ってた。ここで話は冒頭に戻るんだが…
「くっそ〜あのくそトラックめ。このジーンズこの前買ったばっかだぞ」
ブツブツ言いながらまたペダルを漕ぎだしてちょっと経ったその時だった。突然俺の視界が真っ暗になったんだ。
「うわっ!なんだこれ,前が見えねぇ!」
ガッシャーン!!俺は自転車ごと水路に落ちた。またビショビショだ。
「くそ,痛ってぇな……ん?,なんだこりゃ?」
そういった俺の手が握り締めていたものは茶色のマフラーだった。どうやら風で飛んできたこいつが俺の視界を遮った張本人らしい。
「このくそマフラーめ!!」
そう言ってマフラーをちぎってやろうとしたときだった。
「すいません!ベランダで干してたマフラーが飛んじゃって…大丈夫ですか?あがれます?」
それがその女の人との出会いだった。今日の俺はツイてない。総合運も金銭運も仕事運もダメダメだ。だけどざまあみろ,恋愛運はゼロじゃなかったようだぜ?
総得点= 132
エピソード得点= 66
場面化叙述得点= 66
72439 あれからどれくらいの時間がたったんだろう。ただわかるのは、この電車を見送れば次の電車が来るのは明日、いや今日の朝になるってことくらい。別に何かを期待してたわけじゃない。
だけど動けなくて、動いてしまえばさっきまでのこと全てが本当になってしまいそうで動きたくなくて。
言ってしまえば「現実逃避」。
もう少し自分は強いものだと思っていたのに、そのときになってみないとわからないものだ。いつもの自分がちっぽけに見える。
暗闇の中に消えていく光を眺めた後、短い溜息をつき視線を前に戻した。どれだけここで我慢しても過ぎた時間は巻き戻せはしないし、流れていく時を止めることもできない。それなら、まずはここから離れようと足に力をいれた。その瞬間、目の前を勢いよく何かが通り過ぎた。
「マジかよ。」
次の瞬間、そう呟いてネクタイを緩め膝に手をつく男の人が視界にはいった。
あまりにも突然で、普段なら見過ごす状況なのに、どうしてだか声を掛けてしまった。
「もう、電車、着ませんよ。」
総得点= 132
エピソード得点= 60
場面化叙述得点= 62
イチオシ得点= 10

72460
短い文章なのに、すごくその状況が目に浮かんだ。思わず声をかけてしまった主人公の気持ちがわかるような気がした。以後の展開がすごく気になった!

72460 黄昏時、いつもの帰り道を君と歩く。少し前を歩く、君が呟く。
「きょうは疲れたね」
うん。そうだね。本当に疲れたなあ。でも、表情は見えないけど声からすると、君はあまり疲れてないみたいだね。
「あしたは何しようか」
う〜ん、そうだね・・・何でもいいな。君とだったら何だって楽しめる気がする。笑ったり、泣いたり、怒ったり、喜んだり、…いつだって同じ表情をしない君だから、君が持つすべての表情を見てみたくなるんだ。
君が振り向く。
夕日が眩しくて、思わず目を細めてしまう。
・・・見えない。君が見えない。きみがみえない。
何か君が言っているのがわかる。
聞こえない。きみのこえがきこえない。
待って。
だんだん遠くなっていく。きみがはなれていく。
離したくなくて、離れたくなくて、必死に自分の手を伸ばした。君を掴んだと思った手は、虚空を掴んだ。
目を開けると、そこには古ぼけた天井。隅の方には蜘蛛の巣がかかっている。呆然としていると、額につめたいものがやさしく触れた。
「どうしたの」
きみだった。目頭が熱くなって・・・にじんだ視界の中に、ぼんやり見える。
やっと・・・会えたね。
総得点= 131
エピソード得点= 61
場面化叙述得点= 70
72486 「これ、落としましたよ!!」
彼はさわやかな笑顔で私に言った。
今日は、大学の合格発表・・・。
『1年間頑張ってきた結果が今日発表される』
そう考えていた私は、緊張のあまり合格発表の掲示板までの道で受験票とお守りを落としてしまった。
「ありがとうございます!!」
私は彼から落し物をもらい、お礼を言った。
『受験票とお守り落とすとか、めっちゃ縁起悪い…』
そう思いながら、やっとの思いで合格発表の掲示板の前についた。
『534…534……あっ、あった!!!』
私は、憧れていた大学に合格した喜びで、先ほどの彼のことなど全く思い出さなかった。
入学式の日。
親しい友達は同じ大学には進学していないため、不安でいっぱいだった。
指定された席に着いて、式が始まるのを待っていると、式の開始5分前くらいに、隣の席の子がやってきた。
「あっ、受かってたんや!!これからよろしくな」
そう言われて視線を上げると、なんか見たことのある男の子…
『あ、発表の時の…』
隣の席の子はまぎれもなく合格発表のとき私の受験票とお守りを拾ってくれた彼だった。
「あっ、あの時は本当にありがとう。よろしくお願いします!!」
これが、私と彼の出会いだった。
総得点= 131
エピソード得点= 69
場面化叙述得点= 62
74214 大学生になって,一人暮らしを始めてもう1か月が過ぎた。
毎日が充実していて,楽しかった。
新しい環境に,新しい友達。すべてが新鮮で,私にはまぶしく見えたのに,今ではそれに馴染みつつある。時の流れって驚くほど早い。
「授業終わったら,一緒に部活行こうや」
そう,あいつからメールがきた。
「了解♪いいよ★」―送信完了。
あいつとは,友達の紹介で仲良くなった。そして,あいつの紹介で私は,同じ部活のマネージャーになった。
一緒に部活に行ってるとき,あいつがふとこんなことを言った。
「知ってる?モグラって目が見えないんやって。でも,真っ暗な土の中で,何も見えないなかでも,ちゃんと自分のパートナー見つけるんよ。それってやっぱ運命なんかな?」
私には,難しくてなんて答えたらいいのかわからなくて,
「ん〜どうなんやろ?分からんわ!」って言うと,「お前に話した俺があほやったわ。」なんて言われた。 
それからまた,時が流れて夏―
私とあいつは今も友達の平行線をたどっていた。でも,私の気持ちは確実に変わり始めていた。
そんなとき,あの質問を思い出した。
「なぁ,モグラってな,目が見えへんねんて。でも,真っ暗な中でも,自分のパートナーは見つけるねん。これってやっぱ運命なんかな?」私は,あの時の質問をそっくりそのままあいつにしてみた。
すると,笑って「運命やん。そんなんそれ以外ありえへん。やから,俺がお前に出会ったんも,お前が俺に出会ったんも運命なんや。」なんてキザなことをいった。
その瞬間,私の心は確実にグッとあいつに掴まれてしまった。
キュッて胸が痛くなった。ヤバい。あいつのことを考えてると,顔が火照るのが自分でもわかった。
総得点= 130
エピソード得点= 68
場面化叙述得点= 62
72402 今日はT大学とバスケットの練習試合。
真夏の太陽がさんさんと照っている。
ウォーミングアップを終えた僕は顔を洗いに水道へ行く。するとそこには一人の女の子がいる。
近づいて行くと、どうやら相手の大学のマネさんのようだ。
顔を洗いながら彼女のほうを見るととてもかわいい。
再び顔を洗ってタオルを拾おうと手探りで探していると拾い損ねた。
拾い損ねたタオルはふわっと舞い彼女と僕の間に落ちた。
慌てて拾おうとした僕と彼女。
ふいに手が触れ合う。綺麗な手だった。
とっさに手をっひこめる2人。
そこにはなんともいえない異様な空気が流れる。
何時間たっただろうか。(実際は数分であろう)
僕には長い時間に思えた。
その異様な空気に耐えられなくなった彼女はさっとタオルを拾う。
絵にかいたような真夏の太陽が照る下で笑顔で「タオル落ちたよ、はい」と渡してくれた。
さっきの手の感触が蘇りおそるおそる手を出す。
「ありがとう」
「どういたしまして」
これ以上なにもいえず僕はすぐさま水道を後にする。
体育館に行くとさっきの彼女がいる。
これから試合。
プレーにでききるだろうか。
総得点= 128
エピソード得点= 64
場面化叙述得点= 64
72419 私は15歳の春、高校に入学した。
入学して初めてのホームルーム。。。
クラスみんなが一人一人自己紹介することになった。
一人の男の子の順番が来た。
その子の顔の感じ、話し方、雰囲気に、初対面でないように、どこか懐かしいように感じた。
中学校のクラブ活動で交流があったのか、どこか道であったことがあるのか、いろいろな事が頭をめぐった。
しかし、何も思いつかない。名前も記憶にない。
この不思議な感じを抱いたまま、1ヶ月がすぎた。
出来上がったクラス写真を見て母が言った。
その子は3歳まで私と同じ団地に住んでいた。
3歳の時にそれぞれ違うところに引越しをしていたのだ。
3歳という年齢のせいか私は何も覚えていない。
彼も何も覚えていないだろう、と思った。
自己紹介の時の不思議な感情がやっと消えた。
あの時、初めて出会ったのではなく、再会であった。
しかし、私には、別の不思議な感情がめばえていた。
総得点= 128
エピソード得点= 61
場面化叙述得点= 57
イチオシ得点= 10

72488
自分にも似たような経験がありイメージしやすかった!出会ったときではなく、その後で幼馴染だったことに気付くというエピソードが気に入りました。

72110 「・・・やっぱり今日も歌ってるし。」
週末の夕暮れ時、部活帰りの私が必ずと言っていいほど目撃する男がいる。そいつはいつも駅前の噴水の正面にある、よく手入れされた植え込みの傍で、古い感じのギターを轢きながら歌っている。
顔はそこそこいいけれど、ギターや歌は決して上手いわけじゃない。むしろ、心はここにあらず、やけに必死に歌っている姿には、見ているこっちが恥ずかしくなってしまう。黙っていれば格好いいのに。
そんな男の前では、侮蔑の眼差しを送る人や横目で見て見ぬふりをする人が静かに通って行き、もちろん立ち止まって聞く人なんかはいなかった。暇な私を除いては。
 ――あの日交したことのはを 君は今も覚えているかい
   あの日生まれた思い出を 君は殺してしまったのかい――
何度かこの歌を聞いているうちに、都会の雑踏の中でかすかに聞こえる男の心の叫びが私の心の中へとても地味に伝わってきたよう、なんとなくこの男に興味を持ってしまい、とりあえず退屈しのぎに毎週観察することにしたのだ。
16時過ぎにこの場所にやってきて、18時前には交差点の中へと消えていく。
歌のレパートリーはたったのひとつ。しかもその曲をひたすらリピートするという傍迷惑さ。この人間観察を3カ月間続けてまとめ上げたレポートを今年の夏休みの自由研究にでもしようかと、馬鹿げた案をじっくり吟味する。これがまたいい暇つぶしになるのよね。
もう1ヶ月間――数にしたら4回――も遠巻きから観察しているし、次は挨拶ぐらいしてみるかと思った矢先、そいつは急にぱったりと現れなくなってしまった。
・・・どうやらいいレポートが書けそうな気がしてきた。  (続く?)
総得点= 127
エピソード得点= 64
場面化叙述得点= 63
72425 高3になってクラスが一緒になって顔と名前を覚えた。
第一印象は背が高くてスタイルいいなぁって思った。
性格は控えめでおとなしそうな感じ。
クラスでも目立つ存在ではないの男の子だった。
席が近くになっても彼としゃべることなんてなかった。
でも私は知ってる。
仲のいい男友達と話しているときの彼の笑顔。嬉しそうに話す姿。楽しそうな笑い声。
そしてその笑顔は決して彼と仲のいい人数人の男子以外には見せられはしないものであること。
笑うとちょっと目尻がたれて犬みたいな優しい顔になることも。
あの笑顔が私に向けられたものだったらどれだけ幸せだろう。
いつからか私は彼のことを目で追うようになっていた。
ちょっとでもいいから彼と話してみたい。
もちろん彼に話しかける勇気もなく卒業。
ささやかな私の願いは叶わなかった。
4月からは私も大学生だ。
彼はどこの大学にいったんだろう。。。
そんなことをぼんやり考えながら私は大学の入学式の会場に向かっていた。
決められた席に着いたとき私は自分の目を疑った。
何と目の前の席に彼が座っていたのだ!
背が高いために頭が一個分飛び出していてすぐに彼だとわかった。
嬉しさと驚きが頭の中でぐちゃぐちゃになった私は興奮気味にためらうことなく彼の肩をたたき、話しかけていた。
「久しぶり!!!私のこと覚えてる!?」
彼は一瞬目を大きくし驚いた表情になったあと、すぐにあの優しい目尻のたれた犬みたいな笑顔になった。
「覚えてる覚えてる!一緒の大学やってんなぁ!これからよろしくな!!」
総得点= 126
エピソード得点= 66
場面化叙述得点= 60
72101 あの人の手。思えば手に惚れたのかもしれない。
今、私は大好きな手に抱かれている。
大好きなあの人の手に・・・
第一印象は手。
私は人の手を見るのが好きだ。
手にはその人の人柄が表れると思っている。
その人が、どんな人なのか興味を持ったらまず手を見る。
それが、私の癖だ。
きれいな手だな。
そう思った。
男の人なのに、白くて、長い指。
繊細そうな、筋の浮いた手の甲。
爪はきれいに切りそろえられていて、傷は一つ。
いかにもクラリネット奏者だと思った。
素早い指使い、美しい音色。
ピアノをしていたのかな。
傷はひっかき傷だろうか。
私より大きな手。素敵。
「お疲れ様です!」
「・・・おつかれさまです」
手と同じ、物静かな反応。やっぱり。
なんだか嬉しくなった。
「これからよろしくお願いします!」
総得点= 125
エピソード得点= 59
場面化叙述得点= 66
72445 その日も私は窓の外を見ていた。
退屈な授業。先生の淡々とした講義の声だけが響く。
もうすぐ授業も終わり、と思った瞬間、突如窓の外に人影が!
えっ!!ここ3階やのに!!
と思ったその時、その人影も私に気付いた。
「お騒がせしてまーす」
声は聞こえないが、口の動きは大体こんな感じだったと思う。
それだけ言って、彼は私の視界から消えた。
授業終了後、さっきの不思議な出来事について考えながら歩いていると、さっきの彼が校舎の外で
「あーさっきの!!さっきは驚かせてごめんなぁ。」
・・・よく見たら少しカッコいい。
「いえ、あの・・・さっき何やってたんですか??」
おそるおそる質問してみる。
「あぁ、あれー?校舎使ってロッククライミングの練習しててん。
本間は勝手にやったらあかんねんけどな。」
そういいながら大きな声で笑う。
「・・・ロッククライミング?」
「あ知らん?まー簡単に言ったら自分の手で岩登ってくみたいな感じかな。そーや!よかったらロッククライミング部に入ってみぃひん?
女の人でもやってる人おるし、あんな感じで頑張ったらビルも登れるようになるよ!」
毎日を無気力に過ごしていた私が、初めて何かをやってみようと思った。
総得点= 124
エピソード得点= 68
場面化叙述得点= 56
72489 「こっちやって!!早く行かな間に合わへんよ!!」
東京のど真ん中、急に聞こえた方言に、思わず振り返った。
故郷大阪から上京してきて3年目のこと。
「どこに行くんですか?道を教えましょうか?」
前を歩いていた人が、急に振り返ってこう言った。
友達と一緒に、大阪から上京してきて2日目のこと。
「すいません…!!東京出てきたばっかりで道が分からなくて…。
 できれば教えていただけますか?」
彼女はスッと背を伸ばし、僕の目を見ながら答えた。
その目が印象的で、知らぬ間に見つめ返していた。
「いいですよ〜。僕も大阪出身の人間で、
 最初は迷ってばっかりだったから気持ちはよく分かります。」
彼はにこやかに答えた。
同じ大阪出身なんや…。感じのいい人やなぁ。
そう思いながらなんとなく見ていると、
向こうもじっと目を見つめてきた。
総得点= 123
エピソード得点= 57
場面化叙述得点= 56
イチオシ得点= 10

62457
このシチュエーション、僕の友達もあったらしく興奮してうれしくなるといっていた。特に東京だと人も多いしそういう気持ちになるのかなと思った。

72105 「ピピッピピッ 7時です」
いつも通り携帯の目覚ましの音に起こされてベッドを出た。そのままリビングに向かう。テーブルにはすでに朝食が用意されていた。それを10分でかたずけて洗面台に向かう。歯を磨き,寝癖を直し,コンタクトをはめた。
いつも通りの朝の支度を済ませ,家を出た。
いつも通り自転車に乗って駅に向かった。毎日見ている景色が横を通り過ぎていく。12分で駅について,そこの駐輪場に自転車を止めた。定期を出し,改札を通る。
いつも通り7時55分発難波行準急に乗る。最後の車両の一番後ろ,そこはいつも乗っていたところだ。この駅はそんなに大きくない。だから,そんなに混まないので,周りを見渡しても週刊誌を読んでいるサラリーマンや音楽を聴きながら携帯をいじっている大学生ぐらいの人が数人乗っているだけで朝の通勤ラッシュ時とは思えないほどだ。だいたい乗っている人は決まっていた。いつもなら見たことのある顔ばかりが並んでいた。しかし,その日は少し違っていた。見たことのない女の子が乗っていた。いつも自分が乗っている場所のすぐ隣に。彼女は少しうつむきながら音楽を聴いていた。自分は窓の外を流れるいつも通りの景色を眺めていた。電車がトンネルに入ったとき窓に反射して彼女の顔が見えた。自分を見ていた。少し驚いたが,なんとなく自分も彼女のほうを見てみた。すると彼女は一瞬驚いた顔をしてすぐにうつむいてしまった。しかし,その時は特に深く考えなかった。まさかこれがあんな悲しい恋になるなんて・・・
総得点= 122
エピソード得点= 60
場面化叙述得点= 62
72410 その瞬間、地球が停止したように思えた。
凄まじい音とともに目の前で宙に舞ったのは、、、紛れもなく人間。
私は焦りながらも現状を把握しようとする。
が、どうにも上手くいかない。
ただ一つ言えることは、目の前で起こったのは交通事故であり、
目の前で吹き飛んだのは私の身内であり、
その目撃者は私と、もう一人。。。
今まさに携帯電話を取り出して救急車を呼び、
重傷を負って動けなくなっている人に応急処置を施そうとしているその人だけ。
呆けている間に時間は過ぎ、気がつけば私は病院の前にいて、
身内の命を救ってくれたその人と、たった二人きりになっていた。
それが、事の始まりだった。
総得点= 122
エピソード得点= 64
場面化叙述得点= 58
72442 あれは暑い夏の日だった。町の中の人々は皆忙しく、町の中に心が休まる時はない‥。その上、その町で生きる自分には将来の目標みたいなものもない‥。そんな退屈で騒がしい日常に嫌気がさして、ぶらりと訪れた知らない町。全くと言っていいほど人に出会わない。そんな殺風景な町並みでさえ、都会の雑踏から開放されたいと思っていた彼女には絶好の場所だった。この町の人は、時間に追われることもなく、幸せそうな笑顔を絶やすことなく浮かべている‥
「自分もこの町にいれば、何か変われるかも‥。いや、変わりたい!!」
そんな気持ちが自分の中に生まれた時、彼女はうきうきした。なぜか心の中が少しだけ晴れやかになった気がした。
そんな時だった。少し遠くに人影が見えた。新しい環境に来て、気持ちが高ぶってる彼女は、その人に声をかけようとした。
「ちょっと‥もしかしてあの人も私と同じなんじゃないかな‥。」
明らかに現地の人ではなさそうな外見。何もかもに嫌気がさしたようなうつろな表情。しかし、その中にも、この町へ来て、何かを感じ、新たな目標を見つけようと希望を持ち始めたような瞳。彼も彼女に気づいた。彼も彼女に対して同じような印象を抱いたに違いない。
二人はお互いに歩みより、言葉を少し交わした。 
これが二人の出会い。新たな町で未来の目標を見つけるべく、新たな生活を始めた男と女の新たな出会いだった。
総得点= 122
エピソード得点= 60
場面化叙述得点= 62
72447 私には生まれたときからずっと一緒に育ってきた幼馴染の男の子がいた。私のアルバムにはいつも2人で写っている写真ばかりだった。ある日私たちは今までにない大喧嘩をしてしまった。
中学1年の夏彼はお父さんの転勤でそのまま引っ越してしまった。
私はみんなに絶対無理だと言われていた高校に無事合格!!高校1年の入学式。緊張で私はずっと下を見ていた。すると、新入生代表の聞きなれた声が聞こえる。前を見ると彼だった。
私はすぐに話せると思っていた。しかし、そうではなかった。
高校2年、彼と同じクラスだった。ぶつかったらごめん、プリントを配られたらありがとうそんなぐらいしか話せなかった。
彼とどう話せばいいのかわからなかった。
微妙な関係のまま卒業式を迎えた。もう彼に会うこともないだろう。寂しかったが私には何もできなかった。
新たな気持ちで挑んだ大学の入学式。私の隣の席に誰かがすでに座っている。顔を見合わせ共に笑みがこぼれた。彼だった。
新しい何かが始まる気がした。
総得点= 122
エピソード得点= 65
場面化叙述得点= 57
72409  突然の激しい雨。
私は屋根のある場所に駆け込み、雨が通りすぎるのを待った。
しかし一向に止む気配はない。
家まで走れば3分ほど。
どうしようかと悩んでいると、向こうから紺色の傘をさした若い男の人が歩いてきた。
すると
「これ使いー」
と自分の傘を差しだした。
私は驚き、
「え!?いいです。そんな、家も近いんで走って帰ります。」
と答えた。すると
「俺も家近いねん。女の子やねんしこの雨やったら大変やで。」
と行って傘を私に手渡し、走り去った。
私は呆然と彼の後ろ姿を見つめた。
その日は彼のことで頭がいっぱいだった。
私はまた会えることを期待していた。
 次の日、私はバイトの面接を受けに駅前のお洒落な料理屋に向かった。
そこで思いもよらないことが起こったのである。
面接が終わり、帰ろうとした瞬間、ドアから昨日の彼が入って来たのだ…
 
総得点= 121
エピソード得点= 59
場面化叙述得点= 62
72451 「すいません…。」
なんとなく呼ばれた気がしてハッと振り返る。
「大阪にはこの電車に乗ればいいんですか?方向音痴なんで。」
僕はうなずき電車に乗り込んだ。
電車の中は平日の昼間だったからか、空席もあった。
僕が端の席に座ると、さっき路線を訪ねてきた人が隣に座ってきた。
髪は肩まであり、ややふくらんだ頬、少しくせ毛で僕の好みに合っていた。
年はおそらく僕と同じだろうが大人っぽくてつい惹きつけられてしまう。
ふとその人は僕に会話を仕掛けてきた。
人見知りな僕は急に心臓の鼓動が高鳴った。
今思うと緊張のあまり何を話したのだろう。
覚えているのはあの甘いシャンプーの香りだけ。
電車から出て出口の方向を教えた。
別れ際に、
「ありがとう、またね」
さりげない言葉だったが、僕は『また』会えたらいいな、ふと思ったりする。
総得点= 121
エピソード得点= 59
場面化叙述得点= 62
72408 今日は友達とプールに遊びに来た。この日のためにダイエットにはげみ5キロ落としたのだ。晩御飯を抜いたりとかなり無理なダイエットをしてしまった。だが流行の水着を着るためならどうってことない。
日差しも強くて気温も30度近くまで上がっている。本当にプール日和だ。
だがなんだか体調がよくないようだ。
頭がくらくらする。
おなかが出ないようにと朝ごはんを抜いてきたためだろうか。
しかし暑さのせいだ。と自分に言い聞かせ泳いでいた。
「○実〜!こっちこっち!」友達が呼んでいる。
急いで友達の方に行こうとするがなかなかいけない。
そのとき私は溺れた。
周りで助けを呼んでくれている声がかすかに聞こえる。
友達の叫ぶ声も聞こえる。
そこへ誰かが飛び込み私を抱えてプールサイドに上げてくれた。
決して軽くはない私を軽々と持ち上げてくれた。
ゆっくり目を開けると目の前には真っ黒に焼けたプールの監視員さんがいた。
気は確かではなかったが確かに私の心は揺れ動いた。
総得点= 120
エピソード得点= 65
場面化叙述得点= 55
72468 「うわぁ最悪やもぉ・・・」
めずらしくクラブの朝練のため自転車で早めに学校に向かうおれ。
「チェーン外れてもぉてるやん・・・せっかく早起きして家出たのに、これじゃあ10分も練習できへんし・・・」
落ち込みながらも為す術もなくひたすら自転車を手で押していた。
そのとき、
「どうしたん?」
下げていた顔をふいに上げて見てみると、そこにはクラスは一緒だが今まであんまりしゃべったことのなかった女子がいた。
「チェーン外れてん。」
声に出してからちょっと無愛想すぎたかなと思うおれ。
「ふーん・・・」
「お前も朝練やろ?先行ってていいよ。」
うん、これはなかなか普通に回避できたやろ、と変に納得してたんやけど、
「いいよ、一緒に行こ。」
「へ?」
思わず声に出してしまった・・・変な奴、自分まで朝練遅れてまうやん・・・
・・・けど、気遣ってくれてんのかな、案外いい奴なんかも・・・。
「・・・ありがとぉ、ほな行こか♪」
それからというものよく朝練に行くようになり、なぜか通学途中彼女を探してしまうおれがいた。
総得点= 120
エピソード得点= 64
場面化叙述得点= 56
72430 しとしと雨が降っている。「あ〜ダルい、眠い」
ある高校3年の日。昨夜はめずらしく遅くまで勉強した。
ボーっとしながら自転車を走らせる。
僕は片手で傘、片手でハンドルを操りながら高校へと続く下り坂を行っていた。
「帰り面倒くさいやんけ〜、早く止めよ〜」
などと思いながらカーブを曲がる。
すると反対側から自分と同じように曲がってきた一台の自転車。
「ちょ、タイム!」 普段なら避けれたかもしれない。
しかし今日は雨。傘のせいでブレーキがかけ辛かった。おまけに滑る。ちょっとした衝撃。
すかさず誤る僕。「すいません大丈夫ですか?」
彼女も同じく「こっちこそ御免なさい。」
「いやいや本当申し訳ないです。」何回か謝り合った。
数日後。放課後の補修に出た時、彼女がいた。
僕には気付いていない。先生の質問にハキハキ答えている。
この前の彼女とは何か違う一面を見た気がした。
補修が終わった後、分からない問題があるフリをして
彼女のところに向かう自分がいた。
「先生に聞いてよ」と突っ込まれませんように、と願いながら。
総得点= 119
エピソード得点= 62
場面化叙述得点= 57
72485 早朝五時。
急いで準備して、学校に行かないと。
先週始まったばかりのクラブの朝練に遅れるわけにはいかないから。
朝はすごく苦手。
だけどまだ日も昇らない暗い道をマフラーを巻いてかけぬける。
学校につくころにはきれいな朝日が町を照らす。
まだ七時。
だけど体育館からはもうボールの弾む音が聞こえてくる。
あ、もうきてる…
ネットを張りながら、横目で姿を追う。
その瞬間、あのひとと思いっきり目が合った。
「おはよう、早いなあ」
「おはよう。私へたやし」
「毎朝したら絶対うまなるわ!お前ならレギュとれるで。がんばりや!じゃな」
…いっちゃった。
朝は苦手。
だけど絶対毎朝来るよ。
あなたの笑顔に出会いたいから。
総得点= 119
エピソード得点= 58
場面化叙述得点= 61
72463 高校1年の体育祭
6月という早い時期に体育祭なんて・・・
まだクラスも仲良くなってなかった。
とりあえずクラスの子が出てる競技は応援。
暑さの中ダレてきた昼前。
午前の部最終競技の棒引き。
「午前中最後らしいから応援しよやぁ」
とゆう友達の一言で応援席に。
棒引きが始まって私は一人の人に釘付けになった。
一際目立つ身長。
闘志あふれる勢い。
「あの人ダレ??」
思わず友達に聞いてしまった。
「あのクラスTシャツは3年生やで!!」
3年生かぁ、関わる事はないな。
心の中でそう思った。
体育祭が終わり、部活に励んだ夏休みも終わり、そろそろ文化祭の準備に取り掛かかろうとしていた時だった。
突然友達が「なぁ〜体育祭の時の3年生覚えてる?」といいだした。
「あぁ〜あの一際輝いてた人??」
「そう!!あの人モデルやってるねんてぇ〜」
「ありえん!!うちの学校でモデルとか」
そう、私の学校は一応進学校。
モデルなんて仕事が当然許されるわけがなかった。
「本間やってぇ〜」
友達が1冊の雑誌を取り出し私に見せてきた。
そこには棒引きで一際輝いていた先輩が微笑んでいた。
世界が違う。。。
それから少しして文化祭が始まった。
実行委員で金券委員だった私は3年生の金券担当の人と仕事をすることに。
「3年1人足りひんやないか!!」
先生が怒っていた。
私はその横で黙々と仕事をしていた。
「遅れてすみません!!」
1人の人が入ってきた。
顔を上げて見て見ると・・・
なんとあの先輩!!
近くで見れたことに喜んでいた私の横で先生が一言。
「遅いやないか!!お前はこの1年生と一緒に仕事せぇ!!やり方は1年生に聞けよ。」
この1年生・・・
そうそれは私。
まさかあの先輩と一緒に仕事出来るなんて!!
これが私と先輩の出会いだった。
総得点= 118
エピソード得点= 64
場面化叙述得点= 54
72421 「気持ち悪い・・・」
ポケットに入れた携帯を取り出し、今の時刻を確かめる。
表示された時間は1時。予想もしなかった時間に思わず思考が停止する。しばらくして、車のクラクションの音で我にかえった。道路の脇に移動しつつ、明日のことを考える。
「明日は・・・と」
再び携帯を開く・・・
「木曜日……やばい!一限からだ!!」
焦りからか自然と足が速まる。
「こんなことになるなら断るんだった!」
そう自己嫌悪をしながら、さらに歩を速める。
酒とタバコは絶対にしない。そう誓ってたはずだったのに…
今日はサークルの新歓だった。行く前は酒を勧められても断るつもりでいた。けど、いざその時になると断れなかった。そのまま酔い潰れるまで飲まされ、気付けば終電ギリギリ…友人の肩を借りて何とか電車に乗ることができた。そして現在にいたるわけだ。
「あのサークルにはもう行くのやめよう」
酒のこともあるが、あのノリにはどうもついていけない。
その時、急に横から犬が飛び出してきて吠えかかってきた。正直この声は頭にひびく。しばらくして飼い主と思われる女の子が駆けてきた。
「すいません!!」
そう叫びながら目の前までくると彼女は持ってた綱を急いで犬にくくりつけた。僕は「大丈夫です」と言うと再び歩き出した。
「あ、あの・・・」
そう言いながら彼女はついてきた。それに気付きながらも何も反応を示さず、僕は駆け足気味にその場を去った。
それが、僕と彼女の出会い。
総得点= 117
エピソード得点= 59
場面化叙述得点= 58
72431 高校に入って初めての夏休みが終わった。
そのほとんどがクラブで潰れて、提出しなきゃならない課題も終わってないが、充実した夏だったと思うことにしている。
夏休み明けのクラスには、懐かしい顔が並んでいる。
自分で言うのもなんだが、俺はクラスでは慕われている存在だ。
(そう思うことにしているだけかもしれないが、ここではそれはおいておこう。)
このクラスにはなかなかのメンバーが揃ったと思っている。
ただ、俺はあいつが嫌いだった。
顔はクラスの中でも1、2を争う美人、勉強も出来てスポーツもできる。
対抗意識というか、無意識にそいつを避けてきた。
なにより、あいつも俺のことを嫌っているはずだ。
目が合う時、あいつはいつも俺を睨んでいた。
だから、まだ蒸し暑い9月のあの日、文化祭の準備を始めたあの日、あいつが俺に話し掛けてきた時、きっと俺はとんでもなく間抜けな顔をしていただろう。
「何か私に手伝えることない?」
というたった一言に。
総得点= 117
エピソード得点= 60
場面化叙述得点= 57
72466 高校2年の夏だった。毎朝自転車を猛スピードで走らせ学校まで通っていた。いつも遅刻ギリギリだった。
学校までの道の途中大きな交差点を一つ越えなければならない。僕はたいてい赤信号は無視して渡る方だが、この信号だけはさすがの僕も止まらないわけにはいかなかった。
僕がこの交差点を渡るのはいつも決まって8時15分過ぎ。そして毎朝決まって同じ時刻に僕とこの交差点ですれ違う女性がいた。ぱっと見て20歳前くらいだろうか。特別美人な顔立ちではなかったが、なぜか僕の目を引いた。
そんなある日、朝からひどい雨で、僕は傘をさしながらいつも通り必死で自転車をこいでいた。雨のせいもあって僕は遅れ気味だった。いつもの交差点にたどり着いた時には青信号はすでに点滅していた。僕は急いで交差点に突っ込んだ。
・・・その時僕の自転車はきれいにスリップした。僕は派手にこけた。傘は飛び、荷物も吹っ飛んだ。
「大丈夫ですか??」
そのか細い声に顔をあげると、いつもすれ違う彼女が色白な細い手で傘をつかみ、僕に差し出していた。
それが、僕と彼女の出会いだった・・・。
総得点= 116
エピソード得点= 56
場面化叙述得点= 60
72454 初めての塾の日。嫌だって言ったのに・・・
塾なんて入りたくなかったのに・・・
妥協して、それでも個別指導にしてもらったけど、
やっぱり何か気が重い・・・
塾は2階。時間をかけて階段を上る。扉が重い。
扉を開けると「こんにちわ〜」って明るい声が聞こえた。
ちょっと以外だと思いつつ、担当の先生の所へ。
緊張しながらの初対面・・・
先生の自己紹介、笑顔が爽やか。見ていて飽きなさそう、とふと思う。イメージとは全然違う。ガリ勉っぽいのを想像してたもん。
少しずつ顔が熱くなってくるのがわかる。
やばい、こんな筈じゃなかったのに・・・
絶対叶わないのに・・・
もっと早くに塾に入ればよかったって後悔する自分がいるのは
なぜ?
総得点= 115
エピソード得点= 59
場面化叙述得点= 56
72479 毎朝翼はとても早い時間のバスに乗る。  
朝が弱い翼は毎朝そのバスに駆け込んでいる。
もちろん会社に遅刻しないため、というのが一番の理由だがもう一つ理由があった。
それはある人に会うことだった。
その人は女性で翼が最寄のバス停を6時57分に停車するバスに毎日乗っているようだ。
その女性は古風の美人でいつも音楽を聞きながら目をつぶっている。
同じバスに乗っている時間は翼にとってただの通勤時間ではなかった。
翼は毎日少しでも彼女の近くにいようと努力した。
しかし勇気のない翼には話しかけたり名前をきくことなど出来るわけがなかった。
そして月日は流れ、翼が話しかけようと決心した次の日から彼女はそのバスから消えた。
転勤になったのか出社時間が変わったのか、それとも死んだのか
‥‥‥
何もわからない翼はただただ祈った、再び会えることを‥‥たとえ遠くから見ているだけだとしても‥
しかしその後翼が彼女に会うことはなかった。
二度と‥‥‥そしてまた翼の何の変哲もない生活が始まる。。
総得点= 115
エピソード得点= 56
場面化叙述得点= 59
72432
『ごめーん、ありがと♪』
バレーボールが転がってきたから渡してあげた。
高校2年の梅雨の時期…
3日間も降ったり止んだりという雨が続いていた。
その翌日。
久々に晴れた日だった。
少しだけ雲が浮かんでいた。
そんなある日の昼休み…
高校1年のときから存在は知ってた。
あいさつ程度なら交わしたことがあった。
最初会ったときは何も思わなかった。
「元気そうな人だなぁ」ぐらいにしか。
そして2年生の今は同じクラス。
『どういたしまして♪』
そう言ってボールを渡した。
平静を装いながらも胸は高鳴ってた。
あれ?
いつからこんな感じになったんだろう…。
これは……いや、わからない。
でも気になる。
見かけるたびに、すれ違うたびに、話すたびに心が晴れてく。
初めて会ったのは1年前。
だけど今思えば、本当の出会いはあの晴れた日だったのかもしれない。
総得点= 114
エピソード得点= 57
場面化叙述得点= 57
72469 特別に仲が良いわけではないけれど、僕には気になる女の子がいた。学校でその子を見かけない日はなかった。彼女は、仲が良いわけではないこの僕を見かけるといつも優しく微笑みかけてくれた。僕が元気な時も元気がない時も彼女は僕に微笑みかけてくれた。その笑顔を見ると、僕は優しい気持ちになることができた。そんなある日、彼女も受けている授業のときに彼女は来ていなかった。いつも見ていたはずの笑顔をその日は見ることができなかった。心にぽっかりと穴が開いてしまったような気がした。彼女を見かけない日がなかったのではなくて、僕は無意識のうちに彼女を探してたことに気づいた。話すことはないけれど、彼女の何かに惹かれてて、いつの日からか僕の心に彼女がいた。彼女が僕を優しい気持ちにしてくれたように、僕も彼女にとってそんな存在になりたい。心の底からそう思った。運命的な出会いってこういうことなのかな・・・。 総得点= 113
エピソード得点= 56
場面化叙述得点= 57
72424 とある青年は考えていた。
朧げな、どんよりとした不安…。
辛い?悲しい?そんな単純で安直な感情じゃあない。
目に見える世界は灰色。耳に聞こえる音はまるでギターノイズ。
誰かに…逃げ込みたい…。
何一つとして僕の心は動かされず、怠惰で静かな心持。
嗚呼…。なんてつまらない、なんてくだらない…。
こんなホストとも、ロマン主義者とも言い得る心内を誰に言えよう…。
彼は必死だった。彼は恥じていた。こんな自分を誰よりも。
そんな彼の唯一の好きなものは海だった。月並みだがその美しさと雄大さが彼にはたまらなかった。自分との比較ができない程のその大きな存在が彼を安心させた。彼はそんな海をずっと眺めていた。周りの音やモノは次第に遠のき、彼の世界は今、海しかなくなっていた。だんだん、だんだん…海と彼との境界線が分からなくなってしまっていたその時だった。彼の意識はグイイっと明るくなった。
「ごめんなさい…!」
彼はまだボーっとしていた。ただ柔らかく、温かな感触に意識が向いていた。そして漸く、一人の女性が自分の身体と触れ合っているのに気付いたのである。
総得点= 112
エピソード得点= 52
場面化叙述得点= 60
62457 それは、暗闇の中で見つけた。目と目が合った瞬間にお互いが意識した。そこに会話などは必要なく、本能のまま向き合った。お互いがお互いを欲し、そして受け入れた。日常とはかけ離れたこの空間に自分のすべてを預けた。
程よく回ったアルコールと低音の心地よさに、だんだん意識が遠のいてきた。このまま時がとまれば良いのに…
だが願う気持ちとは裏腹に、時計は五時を指していた。
人もまばらになったフロアー、はっと我に返る。また日常に戻るのか。いや…
来週も来ないかと誘い聞いた携帯番号、悪くない反応だ。真夜中の大阪で新しい恋の誕生か。
総得点= 110
エピソード得点= 50
場面化叙述得点= 60
72407 高校三年の春、僕は一人の女の子と知り合った。
当時、部活で左足を痛めていた僕は、松葉杖をついていた。
人混みを歩くのは辛かったけど、もう三年だから、という思いから、毎日塾に通っていた。
塾の近くにはファーストフード店があった。
僕は毎日塾へ行く前にそこへ足を運んでいた。
そんな生活を続けていたある日、一人の店員さんから声をかけられた。
「足、まだ治らないんですねぇ。」
不意をつかれた僕は
「あ、はい。」
としか答えられなかった。
それから数日して、左足が治り、またいつものようにファーストフード店へ行った時、またあの店員さんから
「足、治ったんですね!」
と声をかけられた。
「はい、治りました!」
今度はちゃんと答えられた。
そして店を出ようとした時、後ろから足音が聞こえる。
振り返ると、あの店員さんだ。
「あの、友達になってもらえませんか?」
僕は答えた。
「こちらこそよろしく。」
こうして僕と彼女は出会った。
総得点= 109
エピソード得点= 56
場面化叙述得点= 53
43404 今日から私は教育実習だ。
不安と期待がまじった中、小学校へと足を運んだ。
教室につくと、担当の先生が視聴覚室にいくように言われた。
実習をはじめるにあたっての説明会があるようだ。
説明会の席はクラスごとで指定されていて、私が担当するクラスには私以外に二人の実習生がいた。
二人の男と女は楽しそうに会話をしている。
知り合いらしい。
人みしりの私は「おはよう」とだけいって席に座り、担当教官の先生の話を聞いていた。
すると隣に座っていた女の子が「これから一か月よろしく」といったので、私は横を見た。
まじで!!!!!
めっちゃ好みやし。
総得点= 105
エピソード得点= 52
場面化叙述得点= 53
72440 彼とであったのは、ある日突然朝の体育館前だった。
その日私はいつものように、眠い目をこすり朝練のために体育館の更衣室に向かっていた。
そして角を曲がろうとしたとき、向かいから誰かが来て、「おはよう」と言われた。
私はとっさに「おはよう」と返した。
でもよく考えてみると彼は顔と名前は知っているけど、話したこともない人だった。
私は不思議に思ったが、「まあいっか」と深く考えなかった。
次の日もまた次の日も同じ場所で彼と出会い、挨拶をかわした。
総得点= 105
エピソード得点= 54
場面化叙述得点= 51
74202 15歳の春、ドキドキしながら高校に入学。私のクラスに、他の科からも沢山友達を連れてくる男の子がいた。『入学したばっかなのに、もうこんなに友達できたのかな…』 ある日その人が大人っぽい集団をクラスに連れて来た!『もぅ先輩とも凄い仲良くなってる☆』そんな勘違いが私と彼の出逢いだった。一際目立つ背の高い先輩…『カッコイイ〜〜〜』でも年上なんて、私には無理、と憧れの存在で止めていた。5月の新入生合宿…『ダルい〜〜〜』眠たい目を擦りながら食堂に入った朝、隣のテーブルには先輩だと思っていたあの「彼が!!『同い年‥』ささやかな希望が生まれた。私の眠気は一気にふっとんだ!猛烈あたっっく★笑
総得点= 103
エピソード得点= 48
場面化叙述得点= 45
イチオシ得点= 10

41136
微笑ましいなぁと思いました。

72461 大学に入学して、サークルにも入り、サークルの初飲み会。
最初はとても楽しくて、お酒も美味しく感じた。けど、お酒がどんどん入ると、酔ってきてだんだん気持ち悪くなってきた。それでもお酒を飲み、終いには記憶が飛んでいた。
気付いたらまだ顔も名前も知らない先輩にもたれかかっていた。なんでこんな状況になっているのか分からず頭の中が混乱していた。
先輩も目が覚めて「おはよう。」と言った。私も「おはようございます。」と返した。
先輩に私の記憶がないところを聞いてみると、先輩が酔って気分が悪くなった私を介抱してくれてたらしい。先輩もまだ私のことを知らなかったらしい。
この日から先輩と徐々に仲良くなり始めた。
この日が私と先輩の出会い。
総得点= 102
エピソード得点= 49
場面化叙述得点= 53
72477 出会いはキャバクラだった。
こいつしかいねぇと思った。
ボクは写真を見て真っ先に指名した。
そして、5分後登場した美女に、ひたすらボトルを開けた・・・
湧き上がる数々のコール。
気が付くとボクはその日250万円使っていたのだった・・・
そして翌週、貯金が尽きる。
それでもあの店に通う。通い続ける。
あの子に会いに行く。
始まった借金生活。逃亡の日々。
それでもあの子に会いたい。ただただ会いたい。
総得点= 102
エピソード得点= 53
場面化叙述得点= 49
72433 高校二年の春……
高校に入学し、二回目の春……
あの人と同じクラスになった。
「しゃべることはないやろなー」
まずそう思った。
あの人の存在は一年の時から知っていた。
でも、おれには手の届かん人だと思っていた。
バスケ部で、背が高く、目が大きいあの人……
ただのクラスメートから、大切な存在に変わっていったのは、体育会の日。
「リレーおつかれ!足速いな!」って話かけられた。
初めてしゃべったことに驚き、ドキドキした。
あの人もドキドキしていた。
同じクラスで出会ったけど、本当に出会ったのは体育会の日。
総得点= 100
エピソード得点= 51
場面化叙述得点= 49
72437 クラス替えをした新学期。それまで見たこともなく知らなかった彼の名をはじめて聞いた。「へぇ〜、まだまだ知らん人がいっぱいいてるなぁ」っという具合に。
特別彼のことを意識するでもなく1週間が過ぎ、2週間が過ぎ……
彼と楽しく会話したり、何かやさしくされたりすることも一切なかったはずなのに・・・
彼が友達同士でいるときの生き生きとした顔。笑った顔。サッカーしているときのかっこよさ。
気がつけば私は彼ばかりみていた。
出逢いってこんなもんじゃないかなぁ??
総得点= 95
エピソード得点= 49
場面化叙述得点= 46
72107 ある夏の昼下がり。
そよ風に乗っていい香りが漂ってくる。
その方向に目をやってみる。そこには、
風になびく長い髪、白い肌。理想そのものだった。
ふと見とれてしまう。そんな彼女が突然こちらを向いてこっちに向かってくる。
緊張と興奮。
そして彼女は目の前に立ち止まり、こう僕に言った。
「ねえ、君。名前は?」
…これが僕と彼女の出会いである。
総得点= 92
エピソード得点= 41
場面化叙述得点= 51
72415 大好きな歌手のライブ。チケットをとってくれたあいつに感謝。
あいつとは駅前のカフェで待ち合わせ。楓,一番好きな曲。
「もしもし,もう着いてるよ。え!!来れない!?チケット自分が持ってるのに。代役立てたって,知らん人と行っても楽しないよ。ま,待ってや!!」
あいつは一方的に電話を切った。今度なんかおごらしてやる。カフェをでて,駅のモニュメントの前にいるらしいチケットの運び手を探す。
この後,ライブに来なかったあいつに感謝することになる。
総得点= 86
エピソード得点= 46
場面化叙述得点= 40
72450 体育祭。最後の種目のリレー。
私の目は一人の先輩に釘付けになった。
最初は自分のクラスを応援していた。
でも気付いたら彼のことばかり応援している自分に気付いた。
彼から目が離せなかった。
それが私と先輩との出会いだった。
総得点= 85
エピソード得点= 42
場面化叙述得点= 43
72414 高校1年の春。高校生活の初日。緊張しつつ自分のクラスに入り、名簿順の席に座る。
中学からの同級生は少なく、当然となりになったのは知らない子。っていうか知りたくなかった。なんかうるさくて苦手な子だった。
そんな子はさておき、翌日席替えがあった。隣になったのはまた知らない子。でも、すごくきれいな子だった。やったぁ。僕の高校生活が始まった。
これが僕と彼女との出会い。
総得点= 76
エピソード得点= 37
場面化叙述得点= 39
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