“もののけ姫”の場合
すでに“もののけ”?
劇中、アシタカは呪いの力を借りて、10人掛りで開ける扉を開けたり、弓で人の手や首をふっ飛ばしたり、丸太を投げたりしている。 こんなことが、呪いの力を借りているとはいえ、人間にできるのだろうか。 
ここでは弓矢で手や首をふっ飛ばすことができるのか、ヤング率の観点から検証してみることにする。

うんちく。
固体には元に戻ろうとする力が働く。 これを応力と言うが、弓矢はこの応力を利用して矢を飛ばすのである。
つまり、力を加えることによって弓がたわみ、弓が元に戻ろうとする力で矢を飛ばすのだ。
ちなみにヤング率とは物体の変化しにくさを表すもので、物体によって決まっている。
では実際に計算してみる。 円形断面の場合、ヤング率は右下のような式で求められる。

数値を推定してみると・・・。 →推定法
弓のたわみを約28cmとし、断面半径は1.5cmとした。
また、弓の長さは150cmとし、これを支点間距離とした。
アシタカの引いた力は、120kg重とした。

結果は・・・?
さて、以上の数値を当てはめてみると・・・
ヤング率は7.4となった。

硬い、硬すぎるっ!

樫の木でも1.3なのに、この値は・・・。
アルミニウムよりも硬く、やっと金よりも柔らかい程度ではないか!
アシタカは本当にこんな弓矢を60cmも引っ張ったのか? 
確かにこれだけの弓矢を使えば人の手や首も吹っ飛ぶだろう・・・。 いや、別に弓矢を使わなくたっていい。 この弓が使えるくらいの力持ちなら、石を投げたって当たれば致命傷だ。 ・・・呪いの力、恐るべし。

落ち着いて考えよう。 そう言えばアシタカは呪いを受ける前から同じ弓を同じように使っているではないか。 呪いを受ける前のアシタカが手や首を吹っ飛ばせるとは思えないので、これはもう呪いの力のせいにするしかない。
つまり、手が吹っ飛んだのは物理的な力によってではなく、呪いの力によってなのだ。
だいたい、初めて呪いの力を使ったときにも地侍の手を吹っ飛ばしているが、このときアシタカの放った弓は、実は刀に当たっているのだ。 弓を刀に当てて、刀を持っている手ごと吹っ飛ばすのにはかなりの無理があるだろう。

 
現在位置
ヤング率
→結構、身近なヤング率
もののけ姫の場合