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2005年度前期 国語学概論概説受講生のランダム俳句

 国語学概説概論の「本日のお題」という宿題で、近現代俳句を使ったランダム俳句を使って俳句実作してもらったものです。
という指示をしました。
 「梅雨の季語で俳句を作れ」とやると、「俳句?」という句が大部分になりますが、今回の「ランダム俳句を使って俳句を作る」では、「俳句!」という句が大部分になりました。

52437

水晶の冬の菫のつがれけり
天上も枯野よく透く湧く如し
大試験越え前方にいま刻む

42401

滝の水敵の如く土たたく
林檎食うていつもまんまる春らしく
なつかしや寄り別れては流れかな

54212

春の夜やくりかへしゐる音すなり
冬海の花となりたる人妻よ
牡丹百敵地へ落ちてならびけり

40804

遠雷や大きな耳の飛ぶ蛍
雪はげし落花つもりてお辞儀かな
くちなはのなかしきりに勇気感ぜられ

52103

この頃の髪脱け落つるみてあそぶ
たわいなき罪あるごとく滝涸るる
日脚伸ぶ関東平野にきりぎりす

52445

雲は行き雀の斑ありこころの帆
ひかりの野へ夢一筋の春霰
水べりに月のうつれる静かさよ

52449

焼酎を子猫を食べた夏の風
積み上げし人の声せぬきりもなし
川沿いのトスしたコイン秋の色

52107

初蝶来心と別に老いんとする
冷されてわびしきものに浅き闇
いんぎんに脳天が見え菊日和

52110

探梅のああ満月の深呼吸
夕闇に寒星一つ寝間ひとつ
ゆめにみる山の如くに生れたし

52455

春の夜のなにも来はせぬ寝べきころ
たとえなきこの夕焼けに胸ひたす
大空に小さくなりてとまりけり

52481

鯛あまた鵙叫喚す発狂す
運ばるるもの食ふ音のありしあと
湯気のたつ見渡すかぎりアフリカなり

41210

わが胸にいま声出さば夏に入る
わが胸に響く声あり夏に入る
わが夏の扉を開けた君の声

52406

雨の午後ひそかに傘をねだる猫
退職の手続き済みて想いあり
哀愁が追いかけてくる並木道

52473

美しき風が吹くなり片紅葉
万緑や山川をゆく下駄はいて
炎天の眼もて弥勒を明らかに

52477

鴎舞う須磨の夕べのほの赤き
午後一の陽にあてている雛仕舞う
クーラー代惜しむ心の夏の午後

54205

鈴の音町はいぶせき冬ごもり
水仙の凛とした姿目に残る
プールで一人水のゆらめきに我が身うつす

52465

秋風やとても祭りで遠きかな
月下の猫われは明日たつ客ひとり
花の道何色と問ふなかりけり

52420

天上に緋色のこゑを曼珠沙華
しづかなる明けゆく水の狂ひもせず
良夜かな坂八方に美しき

49272

春しぐれ赤い造花もかがやかす
妻亡くて無人のぶらんこに忘れもの
木曽谷の首のあたりに菊咲けり

52417

或るときは雪をのせたり避暑地かな
じゆぶじゆぶと日陰と知らで花柘榴
一満月一痕として夕がすみ

52407

火の山の驟雨きらきら猫の恋
一つづつ未来ある身の秋の暮
冬薔薇やそのつもりなくはや眠れり

52446

降る雪に息を吹きかけ胸躍る
秋風で木の葉もカサッと音をたて
我が生の光に魅かれ晩酌す

52467

落ち蝉の変速の重さ新学期
台風に帰りし吾子の騒がしさ
新緑に映えて戯る揚羽蝶

52404

人影の窓白くする夏近し
葉の上に雫残れる今朝の庭
春風や私の心つれてゆく

52461

ハムスターのエスカレーター疑いて
春風や猫は並んでみな眠る
秋風や木の葉を落とす水の上

52472

子供らが涙を残し飛んでいる
台風に木の葉が全てさらわれり
町の木の物寂しげな秋の夕方

52429

「も」の多きほっとしたまま芝の上
夕暮れの急ぐ帰りに秋の雨
ざわめくは祭囃子に胸躍る

52104

青空へ跳躍猫が花水木
静かさや自転車をこぐ受験生
子猫らが追いかけてくる残暑かな

54207

晴天やそろそろと行く巫女の舞
座敷からまことに青き海が引く
月光に燃えてをるなり月夜かな

52443

太陽と小鳥遊びし春の音
空の上初めて一緒に遠花火
悲しさは途中たましひ潤す雨

52430

さみしさの鼻の先だけほとの神
我を見て鳴きやすむなり客ひとり
さわやかに子がかげろふに沈みけり

52448

美服して抜けばくるもの時雨かな
月の出や火かけて見むや桜かな
初日さすここに小川の夏めけり

52106

あれこれとアイデア浮かぶ雨の街
時代小説じっくりじっくり秋の月
秋風がジャングルジムを通り抜け

52109

乳母車母のようなる夢の船
凧(いかのぼり)浮かぶ小さな渡り鳥
ふりむけば見渡すかぎり星祭

52463

矢のごとく風が吹くなり船の中
春を病み日日のいのちぞなすままに
あたたかな一つの花に冬日かな

52102

ハムスタ〜上目遣いで見上げてる
土日だけページめくるもきりはなし
野良猫の盆踊り歌夏の夢

54204

また一つ開いて閉じて春の朝
風光る陽にあてている燕かな
咲き揃う雲指さして花の色

52105

秋の暮蟷螂芒の穂をつかみ
てのひらの己に気付く生命線
春暁の授業中の眠たさに

52438

運命は二人にされて見ゆるもの
はるかまで空真青なる荒野かな
満月に水の湧きゐる泉かな

51510

田の上のパセリのあをきあふれをり
夕潮のころろと鳴ける鈴虫や
ていねいにとまらんとする蝶々や

52475

夏浅し行き航跡は丸くなる
冬の夜どうするつもり並びいて
冬の日の虚実皮膜の鵜を見てる

52414

桜咲き別れと出会い繰り返す
風温み赤子の頬にも笑み浮かぶ
中夜祭共に踊った我が仲間

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