技術と教育について知りたい人のQ & A

技術ってなんだろう
Q: そもそも技術って何ですか?

A: 辞書を引いてみると「科学を実地に応用して改変・加工し、人間生活に役立てるわざ。」(広辞苑)とあります。科学には自然科学(数学、物理、化学、生物学など)、応用科学(工学、農学、薬学、医学など)、社会科学(経済学、法学など)、人間科学(心理学、言語学、文学など)があり、それぞれに対応する技術があります。

Q: 科学があって技術があるのですか?

A: 科学と技術はどちらが先というものではありません。科学と技術は互いに刺激しあって発展してきました。携帯電話は今では手のひらにすっぽり収まるほど小さくなっていますが、25年前には3kgもあって肩からかけて運んでいました。価格も高く一般的なものではありませんでした。携帯電話が小さくなるには、半導体技術の発展が貢献しています。半導体の発展の歴史は、より小さく、より速くの歴史といってよいと思いますが、技術がある方法での理論的な限界に近づく(科学へ課題を与える)と、新しいアイデアが科学(工学)的に提案・実現されて限界を超えてきました。つまり、科学と技術の2人3脚によって発展したのです。

技術が発展することで、新たな科学的課題が発生したり、相互に刺激を与えるのは、他の分野でも変わりません。ですから科学と技術をまとめて科学・技術(science and technology)という呼び方をすることもよくあります。

技術を教える技術教育というのは?
Q: 技術を学ぶというのは、どういうことでしょう?

A: ある技術を学ぶときには、その技術の基礎となる科学的な知識、その知識を利用する技能の2つの面を学ぶことになります。たとえば、材料の加工であれば、木材や金属(材料)の性質と利用に関する知識、それらを基に工具や機械を使って加工する技能です。その学びを助けるのが技術教育です。

Q: 技術教育の方法を教えてください

A: 学校での教育の場合、座学で知識を、実習で技能を学ぶスタイルが広く取り入れられています。また、知識と技能を応用する体験(作品や製品の設計・製作)によって、それぞれの理解・習得がより深まるといわれており、作品製作やコンテストなどを授業の一環に含める試みもされています。

Q: 技術教育というのは専門的なものなのですか?

A: 専門的な教育(専門教育)と普遍的な教育(普通教育)の両方があります。専門教育は、理容師・美容師・看護師・調理師・自動車整備士といった職業に就くために必要な技術を学ぶ専門学校で実施されています。中学校などでの技術教育は普通教育を目的としています。

Q: 普通教育としての技術教育というのがよくわからないのですが

A: 国語や英語の時間を思い出してください。ある小説や古典文学、英文学をとりあげて授業がされていますね。たとえば、夏目漱石の坊っちゃんを取り上げたとしましょう。そこで学んで欲しいのは文章から情景や心情を読み取り、また文章で書き伝える、技術・感性であり、同級生の考え方・感じ方の多様性です。夏目漱石の研究者になるための勉強ではありません。同じように普通教育としての技術教育では、新しい技術(知識と技能)を学び生かす力を育んで欲しいのです。

中学校の技術科というのは?
Q: 中学校での技術教育(技術科の授業)にはどういう意味があるのですか?

A: 中学校での技術教育は特定の職業へ就くための職業訓練的な技術教育ではなく、「技術と社会や環境との関わりについて理解を深め、技術を適切に評価し活用する能力と態度を育てる」(平成20年9月改訂の中学校学習指導要領)教育を目標としています。つまり、将来にわたって発展していく科学・技術を、理解、評価、活用する礎を築くことに意義があります。中学校時代は、科学・技術を理解するのに必要な基礎学力が身につきつつあり、また様々な分野に興味が広がっていく多感な時期にあたります。その時期に「技術科」の授業を実施することで、技術科の内容はもちろん、数学や理科で学んだ内容を含め、「知識」を実際に応用する「ものづくり」を通して学ぶことで、他教科の理解・習得もより深まることが期待されています。

一方で、「ものづくり」を生活の中で体験することが少なくなっている現代社会で、目的を持った「ものづくり」を体験する科目であることから、工学・農学などの分野へ興味を持つきっかけに「技術科」がなることも期待されています。