アートとともだち

教材のつかいかた

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教材のつかいかた

INTRODUCTION

アートの鑑賞を通じて大切にしたいこと!

本教材は、美術館を訪問し鑑賞する活動を支援するものとして企画しました。鑑賞活動は、子どもたちの想像力を高め、感性を豊かに育むと同時に、コミュニケーション能力(作品鑑賞を通した思考力や感受性、人に伝える行為を通した言語能力など)の向上も期待できるものです。
本教材は、美術館へ行く前に教師が行うこと、美術館での楽しみ方、美術館訪問後の活動、発展的活動の4部で構成されています。活動ごとにポイントをまとめています。続くワークシートなどを子どもたちの 興味・関心にあわせてご活用いただきますようお願いします。

子どもたちの「早く美術館で作品を観たい(自分の目で確かめたい)」などの意欲を喚起させる学習、子どもたちの「自分の目で見て、自分の見方で作品と向き合う」、「友だちと一緒に話しながら見る」、「一人でじっくり静かに集中して見る」などの姿、子どもたちの「見て感じたことを他者へ伝えようとする」、「感じたことや見たことから発想をひろげ、新たに創造し、想いを深める」などの活動を大切にしてほしいと思います。

教材のつかいかたメニュー

Part.

01

BEFORE

美術館へ行く前に

「早く美術館で作品を見たい(自分の目で確かめたい)」子どものわくわく感を育む学習

事前学習は、子どもの主体的な鑑賞を引き出す重要なプロセスです。なぜなら、事前指導で得た知識(アートの見方やアートについて考えたことなど)や興味をもとに、子どもは美術館で自分なりに作品に出会うことができるようになるからです。学習することの中にはマナーの学習も含まれます。
以下指導のポイントを押さえておきましょう。 1~4のワークシートは、子どもの興味・関心にあわせて活用してください。

美術館訪問前のポイント

子どもたちとの活動を実施してみたい美術館を選びましょう。

訪問を希望する美術館に連絡し、打ち合わせをします。

図工の時間に、子どもたちと事前学習をしましょう。
1. 子どもたちは、“しりまなシート”の「知ってるよ!」「知りたい!」をうめます。
2. 他のアクティビティ・シートなどの作成をします。

ポスターやの美術館紹介ボードなどを、教室や廊下に掲示します。

「美術館でのマナーについて」をよく読んで、鑑賞モラルについて子どもたちと考えてみましょう。

1

「しりまなシート」

アートについて「知っていること」、「知りたいこと」、鑑賞を終え「学んだこと」を記入する『しりまなシート』。 事前指導では、このシートの「知ってるよ!」欄と「知りたい!」欄を子どもに記入させましょう。美術館にはアートがあるらしいということを子どもたちが了解する上で、アートについて知っていることを友達同士で共有します。情報共有後、「本当にアートはみんなが思っているようなものだろうか?」、「みんなが考えているようなものが美術館にあるのだろうか?」といった問いかけをするなど、子どもの中から湧き出る疑問や知りたいと思うことをシートに書くようにしましょう。「学んだよ!」の欄は美術館訪問後の事後指導で活用します。

2

「アートって何だろう?」

アイデアが出難い場合は、『アートって何だろう?』シートの活用をお勧めします。アートについて「正解」を求めるのではなく、子どもの「問い」を引き出すようにして下さい。アートが子どもに耳慣れない言葉であれば、これまで人が作ったものにどんなものがあるか、そのようなものの中で大切なもの、人に「素晴らしい」と思わせるものなどを切り口にアイデアを出してもらうのもよいかもしれません。それらのものを何故大切だと思うのか、どこが素晴らしいのか理由も聞いてみましょう。

3

「美術館の人になってみよう?」

美術館について想像を膨らませるために、自分が考えるアートを空間にどんなふうに配置するかを考えるワークシートです。美術館の人がどのように展示空間を演出しているのか、作品の見せ方に着目することを提案しています。下の枠にキャプションに入る情報(作品タイトル、素材、大きさなど)を記入させてもよいです。

4

「美術館はどこ?」

シートの正方形の枠の中に、訪問する美術館周辺の地図を貼り付けて使用します。美術館へ行くまでの道のりを確認したり、社会科の授業などと関連させながら、周辺にあるものを読み取ったりすることもできます。

5

「美術館でのマナーについて」

よく読んで、鑑賞モラルについて子どもたちと考えてみましょう。子どもたちにもわかりやすいように「美術館でのお約束・カンダくんからのお願い」も参考にしてください。

Part.

02

DURING

美術館へ行ったとき

「自分の目で見て、感じ、考える」「友達と一緒に/一人でじっくり」
そんな子どもの姿を見守ります。

美術館では、子どもが本物に触れる経験を大事にし、作品鑑賞を最大限楽しめるようにしましょう。ここでは、「作品に問いかける、語りかける」補助ツールの提案も行っています。以下、美術館で子どもたちと楽しむコツを読んで、6~10のワークシート、鑑賞ルーペ等を子どもの興味・関心にあわせて活用してください。

子どもたちと美術館を楽しむコツ

“しりまなシート”に書いた内容についてふりかえりをしましょう。

美術館では、作品や美術館の学芸員さんが子どもたちを美術の世界に導いてくれます。(この日のために先生が特別に授業を準備する必要はありません。来館中は子どもたちと一緒に過ごしましょう。)

全ての子どもたちはワークシートや鑑賞ルーぺを受け取ります。

子どもたちが美術作品を見たり、見たことを話し合ったり、考えたことをワークシートに書いたり、スケッチをする様子を見て楽しく過ごしましょう。

ワークシートのつかいかた

ワークシートには「セルフ-初歩(黄)」、「セルフ-基本(黄)」、「セルフ-応用(緑)」、「みんなで対話しよう(赤)」の4種類があります。 どのワークシートを使用しても構いません、

6

「セルフ-初歩」(表)

初めて美術館を訪れた人には、この『セルフ-初歩』シートを最初に使うことをおすすめします。お気に入りの作品や目に留まった作品の前で使ってみましょう。一つのシートの中に複数の作品について記述をしても構いません。全ての項目を埋める必要はありません。答えやすい設問に取り組んでみましょう。

7

「セルフ-初歩」(裏)

『セルフ - 初歩』 (表)と同様に使用してください。ここは主に「色」に関する設問になっています。シートの余白に、見た作品の情報(作者やタイトルなど)を控えておいてもよいです。

8

「セルフ-基本」

ここでは気づいたことを絵でメモする鑑賞の方法を提案しています。お気に入りの作品や気になった作品の前で使いましょう。限られた時間の中で描くので、気になった部分から描くことをおすすめします。目に見えていても絵に描けない子どももいます。そっくりに描かなくてもよい、気になる部分だけを大きく描いてもよい、文字を書き加えてもよい、などを伝えてもよいでしょう。

9

「セルフ-応用」

美術に関心がある人や美術作品の鑑賞経験を少し積んできた人向けの設問となっています。『セルフ - 基本』シートと同様にお気に入りの作品や気になった作品の前で使いましょう。

10

「みんなで対話しよう」

後で友だちと話し合ったり、クラスで発表したりするときに活用してください。他のシートと同様にお気に入りの作品や気になった作品の前で使いましょう。どの作品を選んだか、作品のタイトルを記入させておきましょう。事後の話し合いや発表時に作品写真や図版があると確認しやすくなります。美術館訪問の際に子どもの選んだ作品の画像データ等を可能な範囲で入手しておきましょう。

「鑑賞ルーペ」を使って見る

美術作品を見る際、何も使わずにそのままの大きさで作品全体を見渡して、作風やイメージを楽しむ鑑賞スタイルが一般的ですが、この教材では鑑賞を手助けする道具として「鑑賞ルーペ」を考案しました。
「鑑賞ルーペ」は、レンズも何も入っていない虫眼鏡のような形をした道具です。これを用いて丸い穴から作品の一部に焦点を当て細部をじっくり覗き見ることで、色と色の重なり具合や混ざり具合に気がついたり、マチエール(ツルツル、ザラザラ、ボコボコ、ガサガサ、などの絵肌の調子)を発見したり、光っている部分や影を発見したり、これまでには気がつかなかったことに気づくことができます。

「鑑賞ルーペ」は、市販されていませんが、事前学習の際に、厚紙、木、段ボール、スチレンボード、針金などで、基本形の図案を参考にしながら、子どもたちと一緒につくってみましょう。ワクワク感が膨らみ、「これを使って早く美術作品を見てみたい!」という期待が高まることでしょう。
※ 美術館で鑑賞ルーペを使用する場合は、事前の打ち合わせ時にその旨を美術館に問い合わせ、了解をとってから使用しましょう。

作品の部分に着目することで、新たな気づき、発見をすることができる。

ルーペがあると、なぜだかいろいろ覗いてみたくなる。

ルーペを使うと見ている場所がわかる。

他の人が発見した部分を確認したくなる。

もっと他にないか、探したくなる。

いつもより長く集中して鑑賞できる。

Part.

03

AFTER

美術館へ行った後に

経験の振りかえりを通して、子どもの表現力を育みます

事後学習では、美術館で子どもが感じ取ってきたこと=経験を表現活動につなげていきます。
以下訪問後のポイントを参考に、1, 10~15ワークシート等を子どもの興味・関心にあわせて活用してください。

美術館訪問後のポイント

“しりまなシート”の「学んだよ!」をうめ、シートを完成させよう。

美術館で作成したワークシートを発表し合おう。

次のようなワークシートを使い、活動してみよう。
1. 記憶の森:美術館で何を見ましたか?
2. 記憶の森:美術館で何をしましたか?
3. 友だちや家族に手紙を書こう!
4. 美術館紹介ボードをつくろう!
5. アーティストって?
6. どんな材料や道具をつかう?

「しりまなシート」を完成させる

『しりまなシート』の「学んだよ!」欄に美術館での作品鑑賞を通して学んだこと、感じたことを書きましょう。
「知りたい!」ことの答えが見つかったか、さらに知りたいことが出てきたのか、美術館での経験をまとめましょう。

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「記憶の森」

『記憶の森』シートには、美術館で見たことを振り返る『記憶の森/何をみましたか』と美術館での行為を振り返る『記憶の森/何をしましたか』の2つのシートがあります。美術館での活動内容に応じて、シートを選択し使用して下さい。シート中心の枠に美術館の名前を書き、周りの木に記憶を書き出していきましょう。

12

「友だちや家族に手紙を書こう!」

本シートを厚紙に印刷し、はがきの枠線に沿って切り取ることで、ポストカードとして使用できます。友だちや家族など伝えたい相手を決め、美術館での経験を書きましょう。完成したはがきは、実際に切手を貼付して郵便で送らなくても、伝えたい相手に手渡ししてもよいでしょう。

13

「美術館紹介ボードをつくろう!」

他の学年の友だちに美術館を紹介するボードを作成することで、美術館で得た印象を造形表現へとつなげる活動です。本ワークシートでは、伝えたい内容として、感じたこと発見したことなどの印象を言葉と図などで整理しましょう。使ってみたい用具材料を考え、ボード作成につなげていきます。

14

「アーティストって?」

作品があるということは、それを作った人がいるということです。アートを生み出したアーティストの存在を考えるためのワークシートです。作品を通してアーティストと出会ったり、自分自身が作品を作る時の想いを確かめたりすることで、アートに対する理解を深めます。

15

「どんな道具や材料をつかう?」

アートは、様々な道具や材料で作られます。本ワークシートには、一部の素材を扱ったアートの分野を取り上げていますが、美術館で見た作品の材料・道具も盛り込みながら設問を変えてみるとよいでしょう。

Part.

04

GROWTH

発展的活動

「感じたことや見たことから発想を広げ、新たに創造し、想いを深める」子どもの活動を広げます

美術館が近くにないなど美術館へ行くことができない場合は、美術館の作品画像データを活用した鑑賞活動が可能です。
その際、世界のいろいろな作品画像を使用することもできます。ここでは、活動を広げる16~18のワークシートを紹介します。
ワークシートでの活動以外にも普段の図工の作品制作に鑑賞を通して得られた経験が生かされることがあります。
鑑賞活動を造形表現の活動につなげていく視点も大切にしてください。

発展的活動のポイント

画像データを使用し作品鑑賞を楽しもう。

次のようなワークシートを使い、活動してみよう。
1. キャラクターウェブ 特徴を書きだそう!
2. 詩をつくろう!
3. ストーリーマップで物語をつくろう!

鑑賞したことを表現へつなげていきましょう。

16

「キャラクターウェブ 特徴を書きだそう!」

作品に登場する人やものなどの特徴を書き出すことで、絵をよく見るきっかけをつくります。最も気になる登場人物(もの)を中央の雲に書き出し、特徴を取り上げていきます。作品を見ていく中でさらに気になるものを発見した場合、雲を増やしていきましょう。

17

「詩をつくろう!」

作品の中にみえたものと作品の印象を書き出すことで、絵をよく見るきっかけをつくります。感じたことや思ったことなど(印象)と見えたこと(造形要素)から詩を構成することで、感覚と印象との関係を探りつつ人それぞれ感じたことを表現するワークシートになっています。

18

「ストーリーマップで物語をつくろう。」

ストーリーを考えることにより、作品の世界に思いをよせるきっかけとなるワークシートです。『キャラクターウェブ 特徴を書きだそう!』シートで、登場人物の特徴をつかむと、物語の構想をより広げやすくなります。マップの4つの枠のどこから埋めてもかまいません。友だちとストーリーの展開を紹介しあってもよいでしょう。