食物アレルギー


  1. 食物アレルギーの原因
  2. アレルギー物質を含む食品に関する表示について
  3. 小学校教員の食物アレルギー児への対応と現状
参考WEB:アレルギー・リウマチ情報センター
      消費者庁
      食品安全委員会

食物アレルギーの原因

○食物アレルギーの原因は食物に含まれているタンパク質です。だから、例えば大豆アレルギーの人でも純粋な大豆油はアレルギー症状を引起さないことの方が多いです。(製造工程で不純物として混入した大豆粉末などがあれば、大豆油でもアレルギー症状が出る場合もあります。)アレルギーの原因になる物質をアレルゲンといいます。花粉症は下記のようなメカニズムでおこります。 食物アレルギーも同じように抗原抗体反応で起こります。

口腔アレルギー(OAS:Oral Allergy Syndrome)

口腔アレルギーは、 原因物質や症状が多様でアナフィラキシーを起こす場合もある。花粉症の原因物質(花粉アレルゲン)と食品の間で交差アレルギー反応を示す。結果的に花粉アレルゲンと交差する野菜や果物の摂取で口腔内に刺激感を覚え、咽喉頭に閉塞感がでる。スギ花粉症の人で7-16%、シラカンバ花粉症の人で約20%がOASであるといわれている。
花粉アレルゲンの例 交差抗原性食品の例
樹木:シラカンバ、ハンノキ、ハシバミ リンゴ、イチゴ、ビワ、モモ、ナシなど(バラ科果物)、ニンジン、
セロリ(セリ科植物)、ジャガイモ、トマト(ナス科植物)、クルミ、キウイ、ピーナッツ、マンゴーなど
スギ・ヒノキ トマト
イネ科植物:カモガヤ、オオガワガエリ ジャガイモ、ピーナッツ、セロリ、トマト、メロン、バナナ、オレンジ、
キク科植物:ブタクサ、ヨモギ、カモミール、 ニンジン、ズッキーニ、セロリ、パセリ、キュウリ、キウイ、クリ
 

※表にはありませんが、アボカドやイチヂク、パパイヤ、コショウでもOASが報告されているようです。
天然ゴム(ラテックス)のアレルギーの場合は、バナナやアボカドにもアレルギーを示すことがあります。
また、筋肉タンパク質のトロポミオシンのアレルギーは、ヒョウヒダニのトロポミオシン、エビやカニ、二枚貝など甲殻類のトロポミオシンと
交差アレルギー反応を起こすようです。

 

食物依存性運動誘発型アナフィラキシー

原因食物を摂取して2-3時間後に運動すると症状が出るアレルギーもあります。
場合によっては、小麦加水分解物が含まれた石鹸で皮膚を洗浄していたために、アレルギー体質であった場合には食物依存性運動誘発型アナフィラキシーになりやすくなっていた、という事例もあるようです。この石鹸は、現在では小麦分解物を使用していないので、少し前の石鹸、ということになります。
運動の程度は、軽いウォーキング程度でも症状がおきる場合もあるし、激しい運動でも症状がおきます。
原因食品は、小麦粉や卵の場合もあるし、エビやカニなどの場合もあります。
学校でも起きる確率は高いようです。
アナフィラキシー、というと、ソバやピーナッツが有名ですが、これらのアレルギーより、患者数の多い小麦や卵、乳製品の方がアナフィラキシーの発症数も多いといわれています。

=アレルギーに似た症状のもの=

先天的に特定の物質に対して、アレルギー反応と似たような反応(非免疫学的反応)を示すことがあります。主に酵素欠損による障害です。原因物質は多彩で、食品も原因物質になるので、混乱しやすいのですが、下記のようなものはアレルギーとは呼びません。

■ ヒスタミンによる食中毒

ヒスタミンは、上のイラストにも出てくる物質です。
体内で必須アミノ酸のヒスチジンから合成される他、食品中にも含まれています。イワシやサンマ、サバ、アジ、カツオなどはヒスチジン含有量が多いのですが、ヒスチジンが腐敗の過程でProteus morganiiや大腸菌、ウェルシュ菌などによりヒスタミンになるのです。結果的にそれらの食品にはヒスタミンが多い、ということになり、摂取によってアレルギー様症状を起こす可能性があります。これは「食中毒」のカテゴリーに分類されています。
大人1人あたりで、22-320mgくらい摂取すると症状がでるようです。
摂取後10-60分でじんましんや紅疹などの症状がでますが、一般に一日で回復することが多いようです。
【ヒスタミンを多く含む食品】
・赤身魚や青身魚・・・マグロ、サバ、カツオ、アジ、サンマ、イワシなど
・甲殻類・・・エビやカニなど
・ソバ ・野菜類など・・・トマト、ほうれん草、タケノコ、ナス、サトイモなど


ヒスタミンによる食中毒は腐敗の過程で起こるヒスタミンが原因なのですが、「毒」ではないので、ヒスタミン中毒になった経験があるから、というので、上記の食品を食べられないとは限りません。摂取時の体調によっても生体内の防御メカニズムの状況は変わります。体調の悪い時に、たまたま大量のヒスタミンを摂取すると発症しやすい・・・ということもあるようです。
【対策】
まずは体調をととのえましょう!「○○尽くし」のように、特定の食品を大量に摂取する場合は、特に体調に配慮した方がいいかもしれません。
次にできるだけ新鮮なものを食べるように心がけると良いと思います。

■ 乳糖不耐症

腸内に乳糖を分解する酵素を持たないため、乳糖を分解できないことが原因で、牛乳を飲むとおなかをこわすなどの症状がでることがあります。グラタンのように、牛乳を加熱した料理なら大丈夫、という人もいますが、どんな牛乳も受け付けない、という人もいます。乳糖不耐症用の牛乳も発売されています。すでに乳糖が分解されているせいか、ほんのり甘いです。


食物アレルギーの表示:

現在、 食物アレルギーは子ども特有のもの、ではなく、大人でもアレルギーを持つ人が少なくありません。
また、重篤な場合は微量でもアナフィラキシーショックが起こる場合もあり、複数の食品でアレルギーが出る場合は摂取可能な食品がかなり制限されます。食品表示がなければ、いちいち聞くか問い合わせなければならない、というのも面倒です。
そこで、「アレルギー表示に関する食品衛生法施行細則および乳及び乳製品の成分規格等に関する省令の一部を改正する省令が平成13年に公布されました。さらに、アレルギー物質を含む食品に関する表示に関する通知も出されています。
結果として、平成13年4月から、アレルギーに関する表示が行われるようになりました。
平成22年にはえびやかにが特定原材料になりました。これらのように、アレルギー表示は時代とともに変動する可能性があります。

小学校1年の場合、学校給食で多くの食品を食べることになります。多くの食品の「名前」と「外観」、「味」を結び付けて教えるのは重要なことですが、そこで初めて食物アレルギーであることが分かる場合があります。教員は、下記の食品にアレルギー症状がでやすいことに留意し、子どもの様子をみておきましょう。なお、「好き嫌い」と「アレルギー」は違います。嫌いだから食べないのか、アレルギーだから食べないのか、よく見極めてください。

=特定原材料=
省令により表示が義務化されているもの:
症例が多く重篤な症状を引き起こす場合がある
たまご(卵)、小麦、そば、らっかせい、乳 、えび、かに

  ※ えびやかには、平成22年6月3日までに製造、加工又は輸入されるものについては、これまでどおり推奨表示として取り扱うことがで きるが、
可能な限り表示すること。

=特定原材料に準じるもの=
通知により表示が推奨されているもの
あわび、いか、いくら、オレンジ、キウイフルーツ、牛肉、くるみ、さけ、さば、
大豆、鶏肉、バナナ、豚肉、まつたけ、もも、やまいも、りんご、ゼラチン

※ ゼラチンは豚や牛を原材料とする場合が多く、単独で扱うか、さらに牛肉や豚肉のような表示も必要なのかに関して現在議論が行われている。
※ ハムやソーセージなどの畜肉加工品は、豚肉などが使われるうえに小麦や卵などをつなぎに用いる場合が多い。家庭科の調理実習では生肉・生魚などを使えないために加工品を用いることもすくなくないが、何が入っているのか確認したうえで使用しなければならない。

※なお、1種類の特定原材料等を原材料中に重複している場合は、表示量が膨大になることもあるので、同一食品による複数の記載は無用である。また、紛らわしい方法も禁止されている。なお、卵を「玉子」と表記するなど、わかりやすくするための代替表記は認められている。さらに、「するめ」のように原材料が明白であるものは表示しなくてよい
※ アレルギーを誘発する総タンパク量: mg/ml程度・・・確実におこる   μg/ml程度・・・個人差あり   ng/ml・・・起こらないことの方が多い(表示の必要なし)
※ 鶏肉を用いた商品では、卵を使用していなくても卵のタンパク質が検出される場合がある。この場合、最終製品に卵を使用していなければ表示の義務はない。
※ 乳製品のうち、熟成チーズでは、ヒスタミン中毒が起こる場合がある。ヨーグルトは、カゼインを酸で凝固させたり液状に砕いたりしているため牛乳より低アレルゲン化していると考えられるが、ヨーグルトでアレルギーが起こらないとは言えないため、注意が必要である。


学校での対応

学校では、教員と養護教諭が中心となり、栄養教諭も加わって対応しています。
表1は、本研究室で2009年に調査した結果の一部です。

表1 主な食物アレルギー原因食品に対する小学校教員と養護教諭の認識の相違
食品名教員(n=479)養護教諭(n=61)
そば
93.7
98.4
鶏卵
92.9
98.4
えび
83.7
91.8
牛乳
82.5
93.4
落花生
74.5
98.4
パン(小麦粉)
55.9
90.2
豆腐(大豆)
31.1
49.2
バナナ
13.6
39.3
ジャガイモ
9.4
18.0


これをみると、 教員に関しては、加工食品の認識率が低いことがわかります。 → まずは食品に興味を持って、どんな食品が何からできているか、把握しましょう!
また、バナナやジャガイモといった OASの原因食品の認識率は低いこともわかります。  → OASについてもCHECK!

小学校によって事情は異なりますが、アレルギーは病気ではありません。保護者と養護教諭(栄養教諭)、教員の連携で子どもを守っていきましょう。

=参考文献=
わかりやすいアレルギー・免疫学講義 扇元敬司著 講談社サイエンティフィク(2007)
最新食物アレルギー 中村晋、板倉洋治編 永井書店(2002)
食品衛生学(第3版) 一色賢司編 東京化学同人(2010)
食物アレルギーハンドブック 向山徳子監修 協和企画(2006)