概要

食物学は、ざっくり言うと、寄せ鍋みたいにいろいろな分野があります。
食文化や食環境から食品化学、食品物性学、官能評価まで!

研究室への配属は3回生からです。
食に関わる資料や書籍などはたくさんありますから、積極的に何でも調べたり覚えたりして自分なりの「食物」を作り上げてください。Googleでざっと調べるだけなら誰でもできますが、アカデミックにやれるかどうか、そして、そのアカデミックにやる、とはどういうことか、を理解してください。

以下に研究室で取り組んでいるテーマを紹介します。

■ 野菜(特に加熱野菜)のおいしさに関わる研究

「おいしさ」は五感を働かせて得ることができる精神的かつ主観的・複合的な満足感です。
生理的な「味の良さ」だけでなく、食環境や空腹感、ストレスなどのほか、運動量や食べ慣れているかどうかも影響します。
日本ではあまり聞かないかもしれないけれど、宗教的なタブー(例えばムスリム対応)もあります。
最近は食物アレルギーで食べられない場合も。
「おいしければ何でもいい」「あんまり興味がない。食べられればOK」という人もいるかもしれませんが、
食べる物がおいしくないと食べる気にならないものです。だからと言って好きなものばかり食べると栄養が偏るんですけどね。
日常的に感じるおいしさの基本として代表的なものに「食べ物に含まれる化学的成分含有量(色・味など)」と「食べ物の物理的性質(テクスチャー)」があります。
おいしさ評価のような主観的感覚は「官能評価」で評価するので、官能評価により得られる評価が実験による分析結果で説明できるかどうか、について研究しています。
栄養学的に若い世代の野菜摂取量不足は慢性化しているのですが、この原因として、(1)生野菜の摂取が多くて重量的にみると目標量に届かないのではないか、
また、(2)加熱野菜を摂取する機会が学校給食程度で、おいしさを理解しにくいのではないか、と考えています。
野菜を加熱すればかさが減るものはたくさんあります。
それに、加熱野菜は柔らかく、甘く、おいしくなるものが多いのです。そのおいしさを理解してもらいたいと思います。
これまで、キャベツやかぶなどを使って、加熱した野菜のおいしさの可視化を試みてきました。
味覚教育や調理教育の支援ができればいいなと思います。

■ 植物色素の機能性に関する研究

色素とは色を出す化合物です。天然染料・着色料としても使われますが、ヒトの健康に対しても重要な役割を担っています。
例えば生体内の脂質に関する酸化抑制、正常細胞がガン細胞に変異しないようにする、血圧や血糖値の微妙な調節などです。
多くは野菜や果物などに含まれている色素ですが、野菜の摂取量は目標摂取量より少ないのが現状のようです。
健康維持のために野菜を食べる・・・ことの意義について実験を通して考えてみましょう。
サプリメントよりも基本的な食品を摂取することのメリットはたくさんあるはずです。
今では、健康・栄養に関する表示も多いですから、それらの表示を適切に理解するのにも役立つと思います。
「健康に良い」ではなくて、「おいしいな」と感じながら積極的に野菜を食べたいものですね。

■ その他

いろいろな食感のゼリーを増粘多糖類で調製し、その食感をテクスチャー用語で体系化できるかどうか、とか、その他にもいろいろなテーマに取り組んでいます。
気になる人は是非おしゃべりしに来てください。また、いろいろなことを勉強してください。
食物学は身近な学問ですが、応用科学なので基礎科学の知識もあるとメカニズムなどがよく分かります。
それに、実験は教えてもらわないと絶対できないもの…じゃないかな、とも思います。
本や資料から知識を得て、どう考えていくか、というタイプの学問とはちょっと違うかも…。

また、こんな卒論をやってみたいという案があれば、積極的に相談してください。食物学は幅広い領域を包括していますが、
教員の専門性や設備、指導上の問題から、何でもできるとは限りません。やりたいと思うことに学術的価値があるかどうか、もポイントです。
まずは講義のなかで基礎知識を学び、いろいろな本を読んだりインターネットで調べたり、場合によっては、過去の卒論なども読んでみる、学生実験の教科
書を見直すなどして知識を増やしながら、自分のやりたいこと、こんなのどうかなと思うことを探してみてください。
きっと何かみつかるはず。勉強の仕方がイマイチ・・・という場合も遠慮なく相談しましょう。